「手抜きをしない、ファンサービス。ちょっと元気出たわ」劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク ねこばばさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5手抜きをしない、ファンサービス。ちょっと元気出たわ

2025年1月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

幸せ

原作付きの作品ということで、原作の知識をある程度知っていることが前提なのか、それとも誰もが楽しめる作りになっているのか気になっていたところだが、結論から言うと前者だったのでそれ以外の人には正直おすすめできない。
主要5ユニットにそれぞれ所属する4人のメンバー、加えて「バーチャル・シンガー」6人(※諸説あり)の計26人もの主要登場人物について、およびこの作品独特の「セカイ」と呼ばれる概念についての説明は作中にはほとんどない。原作の知識がないと、今誰がどこで何をしているかすら追いかけるのは困難だと感じた。

で、ここからは原作ファンとしての意見だが、それはもう見てよかった。原作のストーリーもいじめ問題やビジネスと自己実現との葛藤、家庭問題、性的マイノリティ、身近な人の死… と深刻なテーマを正面から扱ってきた経験がある。今作の「歌が届かない」人々は、原作ゲームがその性質上今まで取りこぼしていたテーマであり、そういう意味でこの映画はゲームを補完する関係になると考える。
加えて、DECO*27氏を始めとする有力アーティスト陣が彩る音楽、圧巻のライブシーン、ゲームとは別のVocaloid文化に触れてきた人なら分かるセリフ回しや小ネタなど、初音ミクのファンにとって映画館が幸せな空間になるような工夫がされている。ただ、この満足感は映画というよりライブから感じる体験に近かったかな。

ファンのための、幸せ空間。そういう映画もあっていいじゃないか。

ねこばば