「歴史の非-不可逆性に目の覚める思い」火の華 秋房さんの映画レビュー(感想・評価)
歴史の非-不可逆性に目の覚める思い
「ポレポレ東中野」で『火の華』を鑑賞。たいへん見事な映画らった。
冒頭の南スーダンにおける戦闘シーンは韓国映画『高地戦』を彷彿とさせるリアルな緊張感に充ちていた。戦争トラウマにいったん沈むが、伊武雅刀演じる花火師の新潟方言(地域によって違うのだが)に新潟生まれの私は癒やされた。故郷のことばは、映画の中ではなかなか聞くことがないからな。雁木と消雪パイプの織りなす街並みに胸を締めつけられ、暮れなずむ日本海の美しさには、私は沿岸部出身ではないのだが、ちょっと涙が出た。
ところでこの作品、「南スーダンPKO日報問題」を題材としているはずだが、そちらはどうなったのか?と思いきや、私も何度も訪れたことがあり、思い出深い新発田の地に舞台が移ったそのとき、激流に飲み込まれて郷愁など感じる余裕が一切与えられない展開に。日本という国家が抱える病理を、あのような形で突きつけられるとは。
火術が日本にもたらされたのはあの種子島における鉄砲伝来のときである。江戸時代となると、太平の中で火術の用途は銃器から花火に移った。有名な長岡花火に代表されるように、花火には平和への祈りも込められている。が、銃器→花火という歴史の流れは、決して不可逆なものではない。そのことに思い至り、目の覚める思いだ。
映画的なわかりやすさに支えられた部分もあるが、それを乗り越えた強度をもつ作品。たまげました。「ポレポレ東中野」での上映は19日(金)までとか。ぜひ一見をオススメしたい映画らね。
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