「セルピコに成りたかった警察」レベル・リッジ mzmzさんの映画レビュー(感想・評価)
セルピコに成りたかった警察
かなり面白かった。警察官の心理描写が複雑、セリフも少ないので、表情ちゃんと見ないと葛藤してるとこの気持ちとか理解しづらいかも。
冒頭、主人公が警察官にはねられるシーン。
警察官は主人公に対して誠実に対応したい気持ちもありつつ、金を取れそうな所があれば取らないと、町の税金や仲間の給料を賄えない為、すぐに釈放されるから勘弁してくれよなという気持ちもありつつ逮捕。主人公の財布からは金取らなかったしね、あくまで犯罪に使われる可能性のお金ということで没収。
もうこのシーンで(なんか他の映画と違うな)と思った。
このときは何も知らない自分は、警察官にも守るべきものがありそうな雰囲気だな、でもクソやなコイツラ、と想いつつ続きを見ていく。
シーンが変わり主人公が署に奪われた36000ドルのうち保釈金に充てる10000ドルだけを返してもらうシーン、敵に情けをかけるというか、主人公の毅然とした態度が良かった、全額返してもらうことになると警察の報復が自分の大事な人間に降りかかるかもしれないから、両者の落としどころに落として“あげた”感が凄くかっこいい、その毅然が後のシーンにも効いてくる。
主人公の従兄弟が報復に遭った後のシーン。
署長はいわば借りを作られた26000ドルを返してあげる事で、主人公を見逃す、これでチャラと言わんばかりに。自分達のせいで彼の従兄弟は報復にあった、生死は不明、、、その贖罪では無いが金は返してやる、車もこちらが金を払っておいた。もう十分だろう、もうお前から何も奪わない、そのかわりこの町から出ていけと。
でも結局従兄弟は亡くなり悲しむ主人公、立ち去る事で自分を納得させようとするが、そこでサマーにまで被害が、、、
もうこっから怒涛よね。
ラストシーンの銃撃戦もかなりリアル、撃つべきか迷うもの、撃つべきだと覚悟するもの、普通のアクション映画みたいな風呂敷であればじゃんじゃん死んで構わないけど、この映画は殺せば良いってもんじゃない、の納得感もしっかり有り凄く良かった。
話は変わるけど警察官に成りたい人間って言うのは、正しくありたいと願うモノ達だと思う。
ラストシーンの警察の手のひら返しに納得いかない人も居るだろうけど、この警察官達も正しくありたかった、セルピコに成りたかった人達なのではないか。間違ったことをしている自覚はありつつ署長には逆らえず、町の為、家族の為に違法な金の集め方をせねばならない。
その想いがあったからこそ即座に10-59に移行したと思う。
サマーの「なんだ骨太なやついるじゃない」といった笑みで私は報われたような気持ちになった。
ラストシーンの主人公も手際も良かった、最後まで気は抜くまいといった表情、初志貫徹、カッコいい。
関係ないけど、セルピコは記憶消してもう一階見たい映画。