「予備知識なし、期待感なし、でもメチャ面白かった」ザ・ゲスイドウズ かなさんの映画レビュー(感想・評価)
予備知識なし、期待感なし、でもメチャ面白かった
監督・脚本、宇賀那健一、主演、夏子。はっきり言って知らない。配信でジャケ買いするように目についたタイトル「ザ・ゲスイドウズ」パンクロックバンドの物語。まったく自分と接点がないがなぜか気をそそられて見た。
予備知識なし、期待感なし、アルアルでこれがめっぽう面白かった。まったく売れないパンクバンドが解散させられそうになり、田舎で仕事しながら活動をするのが主なストーリーだ。パンクロックの音楽はぐちゃぐちゃでボーカルも何を歌っているのかわからない。奇抜な格好をしているが、メンバー全員素直でどこかかわいい。
彼らは農作業を手伝いつつ、牛の前で歌い、一軒家のなかで大きな音と声を出して演奏しても誰からも文句はこない。田舎の人たちから彼らの音楽自体わからないが、なぜかカッコいいと言われる。
バンドは社長からヒット曲を命令され、作詞担当の夏子は必死で半紙に筆で歌詞を殴り書きしていく。曲のイメージを夏子が言いバンドメンバーが演奏する。何回も何回も。
田舎に来たことにより、人情の暖かさにふれ、労働と曲作りという生活のリズム、一軒家という曲作りの最高の環境、そこに彼らのホームグラウンドとして迎える田舎が彼らを「再生」させていく。
そして渾身の力で作った曲が、あれよあれよという間に世界中で大ヒットする。世界中で「ザ・ゲスイドウズ」を知らない者はいないほどヒットする。当然彼らも唖然とする。しかし事実だ。社長はいい気なもので次の曲を作るよう命令する。
期日に間に合わせようとしてまたも夏子は必死に半紙に歌詞を殴り書く。その必死さと歌詞の内容の「ズレ」も面白さを誘う。彼らが必死になればなるほどユーモラスになり見ていて彼らに感情移入したくなる。
やっと曲ができたとき、親しいおばあちゃんが亡くなった。おばあちゃんの弔いのため新曲を演奏し歌う彼らの姿は輝いていた。
地に足をしっかりつけたところに新たな創造がある。彼らは田舎で「再生」し世界に「跳躍」したのだ。このような小さな映画を多くの人に見てもらいものだ。