劇場公開日 2025年8月8日

アイム・スティル・ヒアのレビュー・感想・評価

全126件中、81~100件目を表示

3.0ポスターなんで4人なの??

2025年8月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

軍事政権下のイメージ通りの実話。
軍事政権下でなくとも国が混乱してる時には何だって起きる。
それを映像として観られたのはよかった。
日本だって例外ではない。これまでもこれからも。
擁護してるわけでなく事実。ちゃんと政治に関心を持って自分の身を護ろ。

でもどうしてこんなに淡々としてるの?
映画とドキュメンタリーの中途半端な作品を見せられた印象。
むしろドキュメンタリー作品にしちゃえばよかったのでは??

コメントする (0件)
共感した! 1件)
らまんば

4.0どこにいるの⁉️

2025年8月13日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

怖い

興奮

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 21件)
活動写真愛好家

4.0現実的な怖さ

2025年8月13日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

「近畿地方のある場所について」や「ジュラシック・ワールド」よりも現実的に起こりうる恐怖を、さまざまと描いた映画でした。
「アイム・スティル・ヒア」のチラシを見たときにホーム・ドラマかなと思い、それほど気にもとめませんでした。radikoで町山智浩さん「アメリカ流れ者」に、この映画が紹介されて軍事政権下のブラジル70年末が描かれている事が分かりました。この番組で予習したおかげで劇中に流れる音楽の意味が分かりました。当時ブラジルで流行した音楽がかかるのですが体制にそぐわない歌詞は徹底的に弾圧されたんですね(戦中の日本みたいな)。そして目をつけられたミュージシャンは亡命を余儀なくされたらしいです。
パイバ家に押し入った軍の一人がレコードにまでチェックを入れて顔をしかめるシーンは思想までコントロールしようとする軍の横暴を感じます。

もう一度チラシを見ると奥さん(主人公エウニセ)が不安そうに違う方向を見ています。その視線の先は劇中で分かります。
それにしてもロンドンに留学した娘さんはシネフィルみたいですね。友達とM・アントニオーニ監督「欲望」観にいったり部屋の壁にはJ・R・ゴダール「中国女」のポスターが貼ってあります。スーツケースにA・ヒッチコック「サイコ」の本(だったかな?)にコダクロームの8ミリフィルムを入れて、いい趣味ですね。
(もしかしたら監督自身の投影かもしれません)

ミニシアターで、そこそこお客さんは入っており皆静かに鑑賞しておりました。終わった後も皆無言で劇場を後にしました。何か考えさせる映画でした。
帰ってからR・ブラッドベリ「華氏451度」を読み返しました。

コメントする 2件)
共感した! 10件)
naoki

3.5もしもの話ではない

2025年8月12日
iPhoneアプリから投稿

生まれた時代と国が違うだけで、家族が奪われていいわけがない。軍事国家の中で本音や本当の事は言えないが、家族が大切で心配なのは伝わる。
家族や友人などの内輪の話が大半で、その時代を知らない世代としては当時の国情をより感じたかった。

コメントする (0件)
共感した! 4件)
ななな

3.0ブラジルの黒歴史

2025年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

半世紀前、ブラジルが軍政下だった時の黒歴史。実話を映画化。
軍政による弾圧を、ある一家の視点で描いているが、あまりにも描き足りない部分が多く、期待外れだった。
背景となる社会情勢が説明が不足で、夫を救おうとする妻の努力も、もっと丁寧に描いてほしかった。この一家かなり裕福らしく、そのため一家としての苦境も伝わってこなかった。
主演のフェルナンダ・トーレスは良かった。

コメントする 4件)
共感した! 17件)
ファランドル

4.5ジェーン・バーキンでダンスを

2025年8月12日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

素晴らしい映画でした!軍事独裁下のブラジルで、1971年に元政治家で土木技術者のルーベンス・パイヴァが不当に連行され殺害された事件、それに翻弄された家族の物語です。息子のマルセロ・ルーベンスの回顧録が原作で、映像にも想い出を辿るような情緒的な趣きがありました。胸を突き刺すほど美しい映像の連続で感動的でした。

コメントする 1件)
共感した! 10件)
TT

3.0ある時

2025年8月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 2件)
ごっとん

4.0昔のブラジルの軍事政権=今の日本の司法制度

2025年8月12日
iPhoneアプリから投稿

序盤は1971年のブラジル、リオデジャネイロの海岸沿いで暮らす富裕層の家族の、笑顔の絶えない日々が描かれる。
家族構成は父、母、娘4人、息子1人、家政婦、そして犬。
しっかり者でありながら優しさも兼ね備えた両親と、無邪気で元気な子供たちの、毎日海で遊んでいるかのような楽しげな様子が印象的。

特に心に残ったのは、幼い末娘の歯が抜け、父と2人で海岸の砂浜に埋めに行くエピソード。
父親のさりげない行動から、その温かい人柄が伝わってきた。

しかし、家族の幸せな日常が描かれる一方で、テレビからはスイス大使誘拐事件をきっかけにブラジル国内の社会情勢が不安定になっている様子が繰り返し報道される。
この後この幸せな家族に降りかかる出来事を考えると、社会の不穏さに無関心でいると、いつか自分にも降りかかってくるかもしれないという、この映画からのメッセージを感じずにはいられなかった。

ある日、長女は大学の友人たちとドライブに出かける。
ところが、途中で軍の検問に引っかかり、まるで犯罪者のように乱暴なボディチェックを受ける。
長女が軍人から強いライトを当てられ、眩しそうにする場面で、隣の席に座っていた観客が光る機器を操作。
思わず「映画鑑賞マナー違反では?」と感じたが、「もしかしたら、画面の中の長女の気持ちを疑似体験させてくれたのかも」と勝手に解釈。
ちなみに、その隣の観客はその後も上映中に何度も光る機器を操作していて、逆にすごいと思った。

やがて、平穏な家族の日々は終わりを告げる。
拳銃を持った数人の男たちが家に押しかけてきた。
強盗かと思いきや、彼らは軍の関係者で、父親を事情聴取のために連行しに来たのだった。

父親が正装に着替えている間、三番目の娘が学校から帰宅。
事情を知らない娘は、帰るなり父親に小さなおねだり。
父親は快く応じる。
娘からすればいつもと変わらない優しいパパ。
しかし、父親にとって「もう二度と家族と会えないかもしれない」という想いを抱えながらの触れ合いだったと思うと、胸が締め付けられる思いがした。

父親が連行された翌日、今度は母親と次女(長女は留学中で不在)が事情聴取を受けることになる。
車に乗せられ、サイレンを鳴らしながら街中を爆走する車内で恐怖を感じていると、突然車が止まり、2人は真っ黒な袋を被せられる。
スクリーンもまた、しばらくの間、真っ暗になるという演出。

母親が取調室の椅子に座らされ、男との尋問が始まる。
男の口調は冷静沈着で、部屋の中は不気味なほど静かだが、部屋の外からは断末魔の叫びが聞こえてくる。
母親は知っていることを正直に答えるが、男は納得しない。
長時間の取り調べの後、彼女は家に帰してもらえず、手錠をかけられ、汚い独房で拘禁される。
次の日も、また次の日も、取り調べと拘禁が繰り返される様子が淡々と描かれていく。

この場面を観て、多くの人は「ブラジルの軍のやっていることは酷い」と思うだろう。
しかし、自分は一人の日本人として、これは今の日本の「人質司法」と同じなのではないかと感じた。
刑事事件で容疑者が否認や黙秘を続けると、いつまでも釈放されず勾留され続ける日本の現状。
弁護士の付き添いを認めない点もそっくり。

近年、日本では数々の冤罪事件が明るみに出ているが、その温床になっているとされるこの日本独自のシステムは、国際社会から非難され続けているにもかかわらず、行政は無視を続けている。
最近ニュースになった「大河原化工機冤罪事件」では、無実の人たちが11ヶ月間も勾留されていたという(そのうち一人は体調が悪化しても病院に連れて行ってもらえず、胃がんで死亡。酷すぎる…)。
それに比べると、本作のブラジルの軍は母親を数週間で釈放していて、良心的に思えてしまった。

母親が釈放され、帰路につこうとしたとき、彼女を監視していた男の一人が「本意ではなかった」とポツリと一言つぶやく。
散々酷い目に合わせておいて、最後にそんなことを言われても複雑な気持ちになるが、おそらくそれは本音。

彼らはあくまで上層部の指示に従っていただけ。
逆らえば自分の立場が危うくなるため、そうするしかなかったのだろう。
思い返せば、父親が連行された夜、家を監視していた軍人たちが、上司の目を盗んで子供たちと優しく接する場面があった。
もしかしたら悪い人間ではないのかも、と思わせる瞬間。

しかし、そのような人々が、命令だと平気で非人道的な行動を行ってしまう。
人間社会の恐ろしさを痛感するとともに、こうしたことをなくすには、システムそのものを作らせないことが重要だと感じた。
そう考えると、先の参院選で支持を集めた政党が、個人的に「大日本帝国憲法か?」と思わせるような憲法草案を提示していたことに、強い危機感を覚える。

母親への拷問のような勾留を観ていて、ウィシュマ・サンダマリさんのことも思い出した。
ガザで起きている虐殺もそうだが、いかなる理由があるにせよ、無抵抗の人間に対して非人道的なことを行うのはやめるべき。
しかし、世の中にはウィシュマさんの件にしろ、ガザの虐殺にしろ、それを支持する人間が少なからず存在する。
名古屋入管で亡くなったウィシュマさんに対して「詐病」発言で処分された議員が、先の選挙で当選。
日本は1970年代のブラジルの軍事政権を目指しているのだろうか。

母親が家に戻った後も父親は戻らず、家族は経済的に苦しむことになる。
今でも一部の人々から根強く支持されている「男は外で稼ぎ、女は家を守るべき」という考え方の問題点が現れていると感じた。

物語の後半は、軍事政権に対し、報道の力で抵抗していく展開。
今の日本に広がる「オールドメディア」という言葉を使って、新聞やテレビの報道を軽視する風潮に危うさを感じる。
新聞やテレビを「マスゴミ」と馬鹿にし、簡単にデマを生み出せるネットの情報は鵜呑みにする人、逆にすごいと思う。

コメントする 1件)
共感した! 5件)
おきらく

3.0軍事政権下の言論統制は、文民化されてもなお、その全貌を語れていない

2025年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 7件)
Dr.Hawk

4.0母は強し

2025年8月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

軍政のなか、政権に強制失踪に陥れられた夫の真実を追い求めた妻、母。最後まで悲壮な表情をみせることが少なかったのが印象的でした。記者に求められても笑顔で応えていましたね。
そして、そんな激動の日々の描き方が、リオの海の波のように、“静かに淡々と”という感じだったのが真に迫っていましたし、迫力をもたせていたように映りました。
エンドロールに添えられた、本物の写真が全てを語っていましたし、作品が丁寧につくられたものであることも証明しているようでした。

そんなに昔の出来事ではないですし、現在もどこかで似たようなことが起きていてもおかしくない状況ですよね。同じ過ちが起きない日を願い続けた主人公の力強さに頭が下がる思いがしました。

コメントする (0件)
共感した! 6件)
Eiji

4.0家族は自由をめざす

2025年8月11日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ウォルター・サレス「アイム・スティル・ヒア」米支援の独裁政権の弾圧を描いた秀作は今まであったけど、今作はひたすら弾圧を受ける家族の目線で描かれている。前半に家族の姿をしっかり描き、父が連行された後の家族や周囲の人々の地獄の苦しみを浮き彫りにする。

治安維持法を肯定し、スパイ防止法を謳うファシズムむき出しの極右政党が伸長するこの国で、今、最も観るべき映画です。

あと、この映画は音楽映画でもあります。映画観た後に即プレイリストを聴く音楽好きも多いんじゃないかな。#アイムスティルヒア

コメントする (0件)
共感した! 5件)
ピンボール

3.0描き過ぎるのが映画としては弱点

2025年8月11日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

素晴らしい映画だと思う。
魅力的な役者たちによる、素晴らしい家族の人間ドラマ。
そこに忍び寄る国家による暴力。
その対比が鮮明で有ればあるほどに重厚で見応えある映画となっている。
この題材を描くなら、最後まで描き切りたいという切実さは理解できる。
ただ映画としては、家を離れるまでの一時代で構成するほうが、テーマが鮮明になたのではないだろうか。
役者を変えてまで次の時代を描くことで、映画自体が散漫に感じるのが惜しい。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
ケージ

2.5フェルナンダ・トーレスは魅力的でとても素敵な俳優

2025年8月11日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

楽しい

怖い

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 2件)
ねこたま

5.0丁寧で色彩豊かな雰囲気がたまらなく良かったです

2025年8月11日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

過酷な人生を生き抜いた逞しい人物の物語だと思いきや、まぁ半ばそうだったのですが、非常に丁寧な演出とか描写が実に良くて、センスある音楽とその見事な映像が相俟って、非常に厳しい時代の出来事ながらとても楽しく鑑賞できたと思います。カメラの目線というか視点というか画角というか、画面内の絵がなんか良かったなぁ
それと、何といってもフェルナンダ・トーレスのパフォーマンスが素晴らしかったです。勝手に力強い女性像なんていうイメージでもって見ていたのですけど、時代を越えて非常にナチュラルでかつ華麗でスマートな演技に、とにかく魅せられました。子供たちもそれに負けじと見事な容姿と演技で、泣けました。皆が皆あまりに洗練されすぎていた気がしましたが、それでも嘘っぽさなど微塵も感じなかったし、むしろそれがより一層作品の質や美しさ・楽しさなんかを引き立てていた印象で、時代の出来事を描いたということを完全に忘れるぐらいに見事な映画作品に仕上がっていた気がします。
最後の方は一気に時代の描写へと引き戻されてしまいましたが、作品のほとんどはなんか別世界へと誘われていた感じでした。なので、終わりは結構さみしい気持ちが立ってしまいましたが、むしろそれが作品の本質なのかもしれないので仕方ありません。そもそもが悲しい出来事なので、予想外に楽しさや美しさを感じることができて、上質な作品を存分に堪能することができて、今を存分に生きていることへの喜びをしっかりと噛み締めた次第です。

コメントする 2件)
共感した! 6件)
SH

4.0軍事政権の闇と陰

2025年8月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

『コスタ=ガヴラス』の〔ミッシング (1982年)〕の舞台は
1973年のチリ。

軍事クーデターの最中にアメリカ人男性が突然失踪。
彼の妻と父親が行方を探すが
消息は杳として知れず、
事件の背景にはアメリカ政府の思惑も隠れている、との
実話を基にした映画化。

〔Z(1969年)〕〔告白(1970年)〕〔戒厳令(1972年)〕の「三部作」に引き続き、
社会の暗部に家族間の葛藤を人間ドラマとして絡めた秀作だった。

そして本作の舞台は1971年の軍事政権下のブラジル。
軍による自宅の強制捜査ののち、
連行された夫が行方不明となる。
地域も年代も近似のシチュエーション。

こちらも事実を基にした映画ながら、
その後の展開は大きく異なる。

妻と次女も同時に拘束され、
次女は間もなく、妻は十日を経て解放されるも、
夫の消息は知れぬまま。

証拠を集め法的な手続きを取っても
公権からは知らぬ存ぜぬの反応で一向に埒が明かない。

裕福だった家庭は次第に困窮、
母子六人は家作を売却し糊塗を凌ぐ。

月日はいたずらに過ぎて行く。
夫の生死さえ判らぬまま。

冒頭の家族七人と知己による
豊かで平和な生活描写がなまじ眩しいだけに、
その落差を余計に感じてしまう。

繰り返し描かれて来た
軍政下の悲劇あるある。

直近のアジア、アフリカ、中南米でも
同様の惨事が繰り返されていることだろう。

一方で1970年代のブラジルでは
年率10%超える経済発展が続き
「ブラジルの奇跡」と称された事実もある。

これを以って「良いこともしていたのだ」との
ありがちな意見が出されるが、論理のすり替え。

無辜の民に犠牲を強いることなく
発展させるのが本来の政治のありようで、
恐怖政治を併存させるのは別問題。

主人公は軍事政権の欺瞞を暴き
夫の失踪の真相を知るため
不屈の精神で闘いを続ける。

それに要した年月は幾星霜。
加えて事実が判明しても、往時の関係者に
追及が及ぶことはない。

物語りは南国らしい陽光のもと、
当の家族以外は、何の憂いもなく日常が過ぎて行く。

しかし人々の根底には、
いつ自分たちも当事者になるかもしれぬとの怖れがある。

経済的に満たされても、
そうした社会は本当に幸福なのか。

コメントする (0件)
共感した! 7件)
ジュン一

4.0民主主義と自由主義

2025年8月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

驚く

民主主義と自由主義の大切さを改めて実感した。奥さんすごすぎる。重苦しい事実なのに明るさ、味わい、余韻のある映画としても素晴らしいが、記録再現映像としてもとても価値がある。パンフレットの解説やインタビューが、関連情報も含めてとても素晴らしい(当方のこれまで購入したパンフレットでは歴代1位の感想)。

コメントする (0件)
共感した! 7件)
ひぐらし2(ひぐらしから引継ぎ)

5.0解放感を取り戻すための長い道のり

2025年8月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

知的

 ウォルター・サレス12年ぶりの長編映画。過去の彼の作品から見ると、『モーターサイクル・ダイアリーズ』の解放感、『シティ・オブ・ゴッド』の暴力性、『セントラル・ステーション』の人間性が微妙に交錯した集大成的作品。

家族の子供たちがリオの海岸で、ブラジルの国民的スポーツのサッカーやバレーに興じるシ
ーン。本作はこの解放感を、軍事政権の閉塞感を解き放って、再び取り戻すための歴史絵
巻のように思えた。その家族の美しい肖像を取り戻すために半世紀の時間が費やされたのだ。なんという長い道のりなのだろう。

 共産主義者とマークされた夫が、拘束され、謎の失踪を余儀なくされ、その行く末を知った時の妻と家族の慟哭ははかりしれない。だが、家族の平和は、どんなに時を経過しても勝ち取らなければならない。
 ウォルター・サレスは、「家族とはなにか」、「正義とは何か」、「民主主義とは何か」を大上段に語っているわけではない。しかし、それらを改めて我々に問う限りない力を持っている。そう信じたい。

コメントする (0件)
共感した! 4件)
ジョー

3.5実際に起きたこと、その重み

2025年8月10日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

プロローグ的な部分、家族の姿、日常の風景、不穏な出だしと軍事政権の恐怖ではなく、そんなこと関係ないかのような日常
それが思っているより長く、しっかり描かれる
観ている側としては、よりこの家族に心を寄せてしまう

そこに突然、ルーベンスが連行される現実が襲ってくる

なにもわからないまま過ぎる時間、そしてエウニセも連行される
精神的にも、身体的にも、過酷な体験

具体的にルーベンスやそこにいる人たちになにが起きていたのかはほぼ描かれない
だからこそ、より恐怖をあおってくるが、残酷なシーンに支配されないのはありがたい

驚き、混乱、不安、恐怖…ネガティブな感情に押し潰されてもおかしくないのに、エウニセはそうはならない

夫がいないことで銀行からお金を引き出すことすら出来ない
夫が連行されて行方不明というだけではない、子どもを抱えた一家の生活の危機すら発生する

次第に腹を括ったようなエウニセ、そこからの行動と判断、その後の人生
この人の底力はどこからうまれてきたのか

I'm still here、私はまだここにいる
ここ、とは
それを考えながら、物語ではない、実在の人物に降りかかったこの恐ろしい現実に直面し続けた時間だった

コメントする (0件)
共感した! 6件)
yukarin

4.0ブラジルにも軍事政権時代があったとは知らなかった…

2025年8月10日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

「アイム・スティル・ヒア」をグランドシネマサンシャイン池袋で鑑賞。ウォルター・サレス監督作、ブラジル🇧🇷+仏の合作映画。

壮絶な大河ドラマを観た味わい、世代を超えたファミリーヒストリーだった。評判通りの傑作でした。
第97回アカデミー賞では作品賞、主演女優賞、国際長編映画賞の3部門にノミネートされ、国際長編映画賞を受賞したのも納得の家族ドラマ。

何と言っても、主演のフェルナンダ・トーレスが素晴らしく、家族の不安を案じながらも感情を抑えて、複雑な心情を巧みに演じていたのが印象的だった。

1971年、ブラジル軍事政権下を生きた家族が辿る壮絶な運命を、妻であり母親の視点から描いており、当時のブラジルを取り巻く状況説明は極力排して描かれていたのも良かった。

豊かで幸せな中産階級家族の元議員だった建築家の夫が、ある日突然、政府に連行された事を契機に、家族は激動の人生を歩む…

夫の連行後、続けて母親と娘が頭から袋を被せられ軍事政権施設に連行され、何日も牢屋に留置されるシーンが本当に悍ましく恐怖の極みだった。

母親エウニセが何とか無事に帰宅してからは、子供たちを守るべく強く気丈に生きる姿も素敵だった。特に新聞社の取材撮影で、悲しそうな表情でとの注文にも満面の笑顔で応対する娘、息子たちの姿に母親は勇気づけられたに違いない。また、緊張感が緩む良いシーンでもあった😌

48歳で一念発起して大学に戻り、軍事政権による横暴を暴くため、また夫の失踪の真相を求めるため勉学に勤しみ、弁護士資格を得る強さ。
そして、遂に夫の死亡証明書を手にした際の彼女の笑顔も忘れがたい。軍事独裁政権が終わり、死亡証明書が発行される事を喜んでいるようにも見えた。

認知症を患いながらも、立派に育った子供たちや孫たちに囲まれながら撮影する家族写真は幸福の象徴。偶然みたテレビ画面に映る行方不明の夫の写真に眼を大きく見開くカットも印象的だった。

恥ずかしながら、ブラジルにも軍事政権時代があったとは知らなかった。調べると1964年3月31日、軍部はクーデターを起こしてから1985年まで軍事政権時代があったらしい。

憲法や法律に背く政治家の動きをちゃんとウォッチして、民主主義をベースにした平和な社会と世界を維持する責任があると感じた。

(備忘録)
★2014年、ブラジルの軍事独裁政権による人権侵害を調査した真実委員会は、死者・行方不明者は434人にのぼり、およそ2000人が拷問を受けたと報告している。

コメントする 2件)
共感した! 7件)
くまねこさん

3.5洗い流す

2025年8月10日
iPhoneアプリから投稿

淡々と事態は推移する。演出は抑制がきいている。乱暴や暴力や絶叫や慟哭は形跡や音として存在するが、弾丸が飛び交っているだけで直撃はしない。看守の青年兵の誠意ある対応と対比的に教練において吐かれる攻撃的な文句。現在においても見られる社会の脆さを示している。

コメントする (0件)
共感した! 4件)
Kj