「笑顔と強い絆で乗り越える」アイム・スティル・ヒア コショワイさんの映画レビュー(感想・評価)
笑顔と強い絆で乗り越える
1 軍治独裁政権時代のブラジルにおいて、主人が当局に連行され行方不明となり、翻弄される一家の姿を描く。
2 映画は、冒頭から町の人々の開放的な場面を写すとともに家族の愛情溢れる温かい有り 様を丁寧に描く。その一方、舞台となった1970年当時のブラジルが強権的で不穏な社会状況にあることも示される。また、この家族の主人が政治亡命者の支援活動を密かに行っていたことがサラリと描かれる。家族はこのことは知らない。妻だけは後日主人の仲間から知らされた。なので、彼が連行された理由を観客は知っているが、彼の家族は分からず混迷する。
3 妻は、主人が拘置されていたことを立証する証言を得て、国に彼の保護や解放を求める訴えを起こしたり、マスコミを利用する。国はそんな妻を一時拘束したり、監視するなどの圧力をかける。そうした中、妻は行方不明中の主人が既に殺されて海に遺棄されたとの未確認情報を得て絶望する。さらに経済的にも困窮し、家を手放し、引っ越す。
4 映画は、そこから約25年後に飛ぶ。1996年、国はようやく主人の死亡に関する公文書を発行し彼の死を認めた。喜ぶ妻と子供達。この間、妻や家族がどんなに苦労して来たかは推察するしかない。この映画は、ブラジルの昔の国家的犯罪を糾す社会派の性格を持っているが、それよりも先ずは、どんな困難にも負ける事なく笑顔と強い絆で乗り越えてきた家族の物語であった。
コメントする
