「幸福のすぐ隣には絶望が待っている……?」アイム・スティル・ヒア Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)
幸福のすぐ隣には絶望が待っている……?
1970年、軍事政権下で軍部に連れ去られ消息を絶った元国会議員のルーベンス・パイヴァと、その消息を追い続けた妻のエウニセや子どもたちの実話を、一家の長男マルセロが母親の話を聴き取りながら著した回顧録を原作として映像化したもの。
何気なく幸せに過ごす日常生活に突然秘密警察が土足で踏み込んできて、一気に絶望の底に突き落とされる。
夫を奪われたエウニセは武装して軍隊と戦うわけでもなく、法律の知識で身を守りながら静かに訴え続けるのみ。
長い年月の後、ようやく夫の死亡を政府が認めた際のインタビューで、政府の過去の悪事を暴くより大事なことがあるのではないかと記者に問われたエウニセは、過去をしっかりと反省しなければまた同じことが繰り返されると答える。
軍事政権が独裁国家を率いる中で、言論の自由は弾圧され、拷問によって仲間を売ることを強要され、政敵はことごとく排除されていく。それは過去から現在まで何度も繰り返され、ブラジルに限らずどんな国でも起こりうる。
「スパイ防止法」という名のもとで戦前の治安維持法の復活を目論むような政党が選挙で得票を集めるような国では、過去の反省が十分になされたと言えるのであろうか?油断をしていると、幸福のすく隣には絶望が待ち構えていることを忘れてしまうのかも知れない。
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