「母であり父になったエウニセ」アイム・スティル・ヒア めるさんの映画レビュー(感想・評価)
母であり父になったエウニセ
上映館少なすぎる…でも、ほぼ満員。もっと上映館増やしたらええのに🤨
これが実際に起きたことというのが衝撃的でもあり独裁政権の恐ろしさを認識させられる。この映画のすごいところは、暴力的なシーンはほぼ描いていないにも関わらず背景にある軍事政権の恐怖が伝わってくるところ。
幸せな日常が描かれる前半、そして愛する夫がいなくなり苦悩する後半。幸せな日常シーンはありふれた家族の幸せをこれでもかと描き、ディアーハンターを彷彿とさせる。この前半の対比が後半でありこれから起こる悲劇を予感させる。
あの家族が崩壊せずになんとか生きてこられたのはエウニセの強さゆえやろう。悲しみや憎しみに耐え、ただただ家族を守るために動く。子どもたちも状況がわかっている子、わかっていないけれど様子がおかしいことは察している子それぞれの痛みや苦しみがある。
父のいない家族写真を笑顔で!と言う強さ。憎しみの気持ちに負けず、反骨精神を持ち理不尽に立ち向かう姿勢。心から尊敬する。母であり父になったエウニセ。あの軍事政権化でおかしいと立ち向かおうとしたパイヴァ。感性が似ている夫婦やったんやろうなあと。死亡診断書を手にし、笑顔になるシーンはやっと一区切りしたという安心感もあったのだろう。実際の写真が出てくるが、エウニセが指輪をつけ続けているところに深い愛を感じた。
この映画の原作が、事件当時幼かったマルセロが書いたものというのも感慨深かった。
みてもちろん明るくなる映画ではないし、私はしばらくあの笑顔を引きずるだろうが、歴史を知ることに意味がある。そして考えることに意味があると思いたい。
