「幸せに満ちた日々が一瞬で奪われる恐怖」アイム・スティル・ヒア sugar breadさんの映画レビュー(感想・評価)
幸せに満ちた日々が一瞬で奪われる恐怖
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ビーチでの戯れ、ゲンズブールの音楽に合わせたダンス、スフレを味わう食卓、本当に楽しかった日常を同じ気持ちでは過ごせなくなる、この理不尽さ。
政治的背景や母や息子の後年のエポックメイキングな出来事は敢えて描写しなかったため、映画的にはドラマティックな部分が薄まった感じはあります。一方であくまで家族にフォーカスしたエモーショナルな手法は、名作「セントラル・ステーション」のウォルター・サレス監督らしさとも言えます。
母役のフェルナンダ・トーレスが渾身の演技をみせるのですが、子供達も印象的なシーンを担い、作品に深みを与えています。
母が十数日ぶりに解放され夜中にシャワーを浴びているシーンで、三女ナルがドアの隙間から覗いて、込み上げる感情を抑えている時の表情。
イギリス滞在中の姉からの手紙で、母と次女エリアナが言い合いになります。母は年少者に配慮して事件に関わる箇所には触れませんでしたが、次女は自分も当事者なので何故隠すのかと。双方の気持ちが理解できる辛く、緊張感のあるシーンでした。
そしてリオから引っ越す日、玄関に茫然と座り込む四女バビウ。住み慣れた家を離れる寂しさだけでなく、もう父親が戻って来ないことを確信した虚脱感が溢れるこのシーンは悲しかったなあ。
何気ない日常の大切さを改めて感じさせる力作です。
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