「現実的な怖さ」アイム・スティル・ヒア naokiさんの映画レビュー(感想・評価)
現実的な怖さ
「近畿地方のある場所について」や「ジュラシック・ワールド」よりも現実的に起こりうる恐怖を、さまざまと描いた映画でした。
「アイム・スティル・ヒア」のチラシを見たときにホーム・ドラマかなと思い、それほど気にもとめませんでした。radikoで町山智浩さん「アメリカ流れ者」に、この映画が紹介されて軍事政権下のブラジル70年末が描かれている事が分かりました。この番組で予習したおかげで劇中に流れる音楽の意味が分かりました。当時ブラジルで流行した音楽がかかるのですが体制にそぐわない歌詞は徹底的に弾圧されたんですね(戦中の日本みたいな)。そして目をつけられたミュージシャンは亡命を余儀なくされたらしいです。
パイバ家に押し入った軍の一人がレコードにまでチェックを入れて顔をしかめるシーンは思想までコントロールしようとする軍の横暴を感じます。
もう一度チラシを見ると奥さん(主人公エウニセ)が不安そうに違う方向を見ています。その視線の先は劇中で分かります。
それにしてもロンドンに留学した娘さんはシネフィルみたいですね。友達とM・アントニオーニ監督「欲望」観にいったり部屋の壁にはJ・R・ゴダール「中国女」のポスターが貼ってあります。スーツケースにA・ヒッチコック「サイコ」の本(だったかな?)にコダクロームの8ミリフィルムを入れて、いい趣味ですね。
(もしかしたら監督自身の投影かもしれません)
ミニシアターで、そこそこお客さんは入っており皆静かに鑑賞しておりました。終わった後も皆無言で劇場を後にしました。何か考えさせる映画でした。
帰ってからR・ブラッドベリ「華氏451度」を読み返しました。

