「解放感を取り戻すための長い道のり」アイム・スティル・ヒア ジョーさんの映画レビュー(感想・評価)
解放感を取り戻すための長い道のり
ウォルター・サレス12年ぶりの長編映画。過去の彼の作品から見ると、『モーターサイクル・ダイアリーズ』の解放感、『シティ・オブ・ゴッド』の暴力性、『セントラル・ステーション』の人間性が微妙に交錯した集大成的作品。
家族の子供たちがリオの海岸で、ブラジルの国民的スポーツのサッカーやバレーに興じるシ
ーン。本作はこの解放感を、軍事政権の閉塞感を解き放って、再び取り戻すための歴史絵
巻のように思えた。その家族の美しい肖像を取り戻すために半世紀の時間が費やされたのだ。なんという長い道のりなのだろう。
共産主義者とマークされた夫が、拘束され、謎の失踪を余儀なくされ、その行く末を知った時の妻と家族の慟哭ははかりしれない。だが、家族の平和は、どんなに時を経過しても勝ち取らなければならない。
ウォルター・サレスは、「家族とはなにか」、「正義とは何か」、「民主主義とは何か」を大上段に語っているわけではない。しかし、それらを改めて我々に問う限りない力を持っている。そう信じたい。
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