劇場公開日 2025年8月8日

「質問に答えれば帰れる?"彼ら"を怒らせるな」アイム・スティル・ヒア とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 質問に答えれば帰れる?"彼ら"を怒らせるな

2025年8月9日
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笑って!軍事政権の犯罪、国家の横暴と愛の強さ・力。ウォルター・サレス監督の力強い語り口に、強く・逞しく(子供たちの為にもそうならざるを得ない)・それら総じて如何なる必死さも本当の意味で美しく作品を引っ張る主演フェルナンダ・トーレスの名演によって、非常に求心力のあるドラマに仕上がっている。
この家族には欠かせないお決まりの家族写真や、劇中何度かある車中ショットが、一種の差異を伴う反復・イメージングシステムのように機能していた。また、こういう歴史ドラマには欠かせない構成ではあるものの、個人的には作中後半で一気に時が経つのが少しハマらないこともあり、本作でもやはりそれまでのパートと比べると緊張の糸が切れたりする感もあったけど、それでも実在の人物の生涯への最大限のリスペクトとテーマ性の打ち出しとして必然性があった。静かなエンディングがまた沁み入る…。
法が統治する民主主義国家あるいは時代の流れとしては、今となっては信じられない出来事であり、決して許すことはできない。ただ、報復を恐れて誰も本当のことを語りたがらないそのあまりに残酷な暴政・暴力の時代に奪われた無数の命と、本当の意味では決して屈せず抵抗した名もなき人々がいたことを、今を生きる私たちは忘れてはいけない。今の時代でも民衆が選挙など権利を放棄し、政治を監視することを怠ったら、知らず知らずの内に民主主義が失われかねず、また民族間の対立を政治のために煽る世の中では、なおも一種の切実なリアリティをもって迫ってくる。

P.S. ほとんど描かれなかった弁護士時代の闘いについても、もっと見てみたかったけど、そこは作品としての取捨選択なのが致し方ない。
最近のリバイバル上映ブームに乗っかってウォルター・サレス監督『セントラル・ステーション』ももっと観やすくならないかな。

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とぽとぽ