「個人的にはかなりの名作」ベイビーガール なみさんの映画レビュー(感想・評価)
個人的にはかなりの名作
期待せずに観たつもりが、まさかの良作。
6P鑑賞ということもありあまり期待していなかったが、思いのほか心に刺さる作品でした。
不倫の是非は置いておいて、人間の欲や弱さ、繊細さにフォーカスした描写が秀逸。
理解できないとB級に見えてしまうかもしれない難しさはあります。
劇場内に微妙な空気が流れるほど露骨な描写もあるが、そこに込められた意味を汲み取れるかどうか、本人の恋愛観や経験によって評価が大きく分かれそうですね。
ただ目があってはじまるのが男女だと思うので違和感なく見れました。
リアルな女性心理の描写。
満たされない夜の生活、若い男への依存…テーマはありがちでも、女性特有のヒステリックさ、劣等感、視線、仕草までが非常にリアルに描かれている。
犬やミルクといったアイテムに込められた主従関係の暗示も巧みでみどころです。
娘たちの描写にも深みがあり、
優しく穏やかなホームレスに靴をわたして裸足で帰ってきてしまう娘はおそらく夫似、反抗的で浮気性なレズビアン娘は主人公似。
表面上は問題児に見える妹の方が、実は母親を深く理解している構造も物語に納得感を与えています。
気持ち悪いような際どい描写もビジュアルの良さでカバーされています。
不倫相手のセリフ「ぼくのベイビーガール」「綺麗だよ」と言うと本当に可愛らしく見えるんです。
「私はあなたのことが怖くない 私の欲しいものをよく知ってる」
人が恋愛にハマって失敗する理由が詰まっています。
最初のシーンの「私はあなたを恐れていない」と同じセリフでもタイミングで意味が変わってくるのも面白かったです。
ジェンダー描写もありましたが、あくまで主人公視点からの風刺的な表現だったと思います。
女性監督だとこのあたり偏りがちだなーと感じることは多かったのですが、その点見やすかったです。
正義感の強い真面目なフェミニストの本命彼女と、プライドは高いが繊細でドMな主人公のコントラストも面白いです。
「尊敬できるあなたでいてください」「野心と道徳を履き違えないで」のやりとりはその部分がよく表現されていました。
惜しいラスト、でもまた観たい。
終盤はややありきたりな展開で締めくくられたのが残念だったが、それでもまた観たくなる魅力があります。
万人受けはしないかも…でも個人的にはブッ刺さった作品でしたね。