「彼女の欲求は分かるものの、彼が何を考えていたのかがよく分からない」ベイビーガール tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
彼女の欲求は分かるものの、彼が何を考えていたのかがよく分からない
冒頭、セックスをした直後なのにマスターベーションにふける主人公の姿に驚かされる。
そんな彼女が、若い男とのセックスに溺れていく過程は、確かにスリリングではあるものの、欲望のままに生きているだけのようにも思えてしまう。
いくら、夫とのセックスでオーガズムに達することができなくても、あるいは、心の奥底に「支配されたい」という欲求を隠し持っていたとしても、それが、不倫を正当化する理由になるとも思えない。
ましてや、企業のCEOという彼女の立場と、そのインターンという彼の立場を考えれば、あまりにも軽率で、社会人としての分別が足りていないと思わざるを得ない。
何も、こうした娯楽映画で、道徳論を振りかざすつもりはないのだが、それでも、彼らがやっていることには、共感することも、納得することもできなかった。
彼女と彼の立場の逆転というのも、一つの見どころになってはいるのだが、「ハラスメント」を訴えることで、上司よりも部下の方が強い立場になり得るという現代の世相が、そうした主導権争いに、うまく活かされているとも思えない。
結末にしても、こうした「悪事」は、必ず「破滅」をもたらすと予想できるのだが、彼女の部下の女性や、夫にも「ことの次第」が知られることになり、遂にその時が訪れるのかと思っていると、すべてが丸く収まってしまって、逆に驚かされたし、何だか肩透かしを食らってしまった。
何よりも、やたらと生意気で失礼なインターンが、本当に彼女のことを愛していたのか、あるいはCEOという立場の人間を意のままに操りたいだけだったのかといったことが、最後までよく分からなかったところには、釈然としないものを感じざるを得なかった。