「皆さまのレビューで本作の価値観が大きく変わりました。ありがとうございました!!」ブルータリスト 月イチひとりでシアターへさんの映画レビュー(感想・評価)
皆さまのレビューで本作の価値観が大きく変わりました。ありがとうございました!!
あくまでも個人の見解ですが、映画は大衆娯楽ですから、あまり難しく考えるのは苦手です。
それでも、この作品に限っては最低限の予備知識を持ち、漠然とでよいので、主人公の出自、生き様、感情に思いを馳せるとより楽しめると思います。
よって、知識吸収のため、これまで以上にレビュアーの方の感想を丹念に拝読いたしました。
本作鑑賞の際にたいへん参考になりました。深謝いたします!!
【私の最低限の予備知識】
・本作はユダヤ人ラースロー・トートが主人公
・演じたエイドリアン・ブロディもユダヤ系(ハンガリーの血も流れている)
・ホロコースト(ユダヤ人迫害および大量虐殺)とシオニズム(イスラエル建国)
・ユダヤ教と基督教(プロテスタントとカトリック)。シナゴークと基督教教会
・戦後のハンガリーから逃避した米国(ペンシルベニア州、フィラデルフィア)が舞台
・R15+の制限。暴力、性描写、麻薬摂取などのシーンがあるので中学生以下NG
・日本語コピーは「荒ぶる、たぎる」。主人公の感情の起伏を表現したものでしょう
・建築家の「半生」を描いたヒューマンドラマ。215分長尺映画。覚悟が必要(笑)
・皆さまの素晴らしいレビューの数々
で、鑑賞後は、エイドリアン・ブロディの演技力に驚嘆しました。
ゴールデングローブ、オスカーの受賞、当然の結果ではないでしょうか。
以下、ラースロー・トートの出自、生き様、感情について。
真珠湾以外に攻撃を受けなかった米国は建設需要は少ないはずで、ラースローは、建築家としての勲章は捨てたのだなと。それでも米国を目指したのは、ホロコーストから生き残ったことで、何よりも自分自身や家族の命と精神的な自由を求めることを優先したのかなと。
生きているだけで儲けものと思っていたところ、わらしべ長者的なラッキーが重なり、当然、人間としての欲が出てきます。芸術家としてのプライドやそれによる葛藤が生まれ、それまでは穏やかな性格で他人との衝突は無縁であったのが、時として無碍にエキサイトするシーンがインサートされます。
米国上陸直後の娼館を出たときに、タバコを燻らす娼婦から掛けられた言葉で彼の性癖は〇〇かも?と。その後、性的なシーンがいくつかありますが、ラースローの苦悩を表現するような表情のカットが印象に残っています。♂としてダメなのでしょうね。妻エルジェーベトとの関係性にも大きく影響しているように思います。
芸術家気質ゆえの繊細さでしょうか? アル中(?)、ヤク中(?)も加わります。
このバックグラウンドと誰にもわかってもらえない孤独を演じるブロディの姿は、私の素人眼に強烈なパンチを喰らわせましたね。
半生ですから、老後もあるのですが、自由発想で。私は、家族仲良く穏やかな時の流れをイメージしました。
以下、作品と撮影、音楽について。
やはり、同じ時代設定のゴッドファーザーを思い出さずにはいられませんでした。
コッポラもラースローのセリフと同じようなことを言ってましたよね。
コルレオーネ・ファミリーがニューヨークで暗躍した同じ時代に、やや西側に位置するフィラデルフィアとペンシルベニア州の田舎町(ロケ地はハンガリーか?)を舞台にストーリーは展開します。
ただし、超有名なフィラデルフィアのロケ地(ロッキーステップ)は、残念ながら登場しません。
シークエンスの切り替え時に車載カメラが捉える道、空、道沿いの緑が印象的です。
おそらく、ラストメッセージの伏線でしょう。
驚いたことに15分間のIntermissionがあります。歌舞伎じゃあるまいし・・・。
たぶん、配慮に見せつつ演出ですね。
なぜなら、休憩時間にスクリーンに投影されるポートレートが意味を持っているからです。多くの方がトイレに席を立つでしょうが、よく観ておくことお勧めします。
撮影班、ロケ地の素晴らしい景観も奏功してとてもよいです。AI画像も自然に思えました。
カット割りと音楽のシンクロ、カッコイイと思います。時代に合わせた選曲もグッドです。
ただし、スタッフロールだけは面食らいました。何があったの???
プリプロ(脚本、コンテなど)もポスプロ(編集など)も観客心理を考え抜いた結果の大作でしょうから、製作側にとっては、一欠けらのミスもないのでしょう。恐れ入りました。
おまけ。
ガイ・ピアース、いいなあ。L.A.コンフィデンシャルの頃から好きだなあ。
オスカー取らせたかったなあ。