「難解な事なく、意外と力作♪ が、後半に問題あり。 ★3.7」ブルータリスト レオンさんの映画レビュー(感想・評価)
難解な事なく、意外と力作♪ が、後半に問題あり。 ★3.7
「TAR/ター」ほど難解でなく、「哀れなるものたち」ほどグロくなく、「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」ほど冗長ではない。 意外にじっくり見せる力作だった。
タイトルは、ブルータリズム建築と、
Brutal(粗野な、厳しい、冷酷な)ist(~な人)を掛けた意味かと。
さすがに長いと評している方もいるが、私はそう感じなかった。
迫害を感情のベースとした物語に、建築家としての腕の見せどころが相反する進展にオリジナリティーを感じ、ゆったりペースだがかなり引き込む。
ブロディーは喜怒哀楽全ての表情を見せた。 が「TAR/ター」のブランシェット同様で熱演には間違いないが、唸るような名演技に見てる方も同調した・・ほどには感じなかったのも事実。 (でもアカデミー主演男優は獲りそうな予感)
↓序盤展開含む
ただ冒頭のみ私には酷く感じた。
夢の国への船内は暗く、到着時になにがどう動いているか分からぬ描写で、いきなりマイナスポイントに。
そして明るく現れたニューヨークのシンボルは 逆さま?
何意味するのか思考中に、今度は横向き!(予告で流れるが私は初見)
「何だこの演出?」
このシーンは建築物を多方向からの観察、と評価している方もいるが、
私的にはビデオカメラを初めて購入した者が、遊んでいる様なとても稚拙な演出に感じた。
日中でも暗いシーンが続き、娼館でのリアル性描写もこの作品には不向きで、掴み映像としているなら、それは悪手。
ラジオナレーションがホロコースト状況を伝えながら映像も動き、両方の解釈に神経を使う為、作品そのものが入って来ない・・。
これは楽しめるというより、我慢する3時間になりそうだと、序盤からため息が出る・・。
が、その後家具店に赴くシーンからようやく物語が動き出し、引き込む。
一度は憤怒した資産家が、謝罪の為合うシーンは、前半一番の起伏ポイントで見所♪ 自身の過去建築写真を「もらってもいいか?」との台詞が、
グッと来て一番感情が傾いた。
それは自身の輝かしい履歴書であるから。
こういう描写が随所で存在すれば、文句なしの作品賞候補になっただろうと・・。
前半だけなら★3.9~に評価。
が、問題は後半でそれにより★減点
↓後半ネタバレ含む
「暗」に展開するのは致し方ないとしても、急転する様なシーンが増え始める。
談笑から、作業員に憤慨・・。
大理石断崖の美しく素晴らしい絶景をじっくり描写せず、作業所でのダンスパーティー?
採掘決定の祝宴にしては、娼婦の様な女性との唐突な絡み。
その後の暗シーンで、はっきり分からぬ描写が、LGBTとは!
序盤の家具店主との妙にベタベタした動作や、
娼館での性描写・ダンス女性を相手のしなかったのは、その伏線?!
にしては唐突過ぎるし、実業家ピアースにはそんな素振りが全くなかった様に思う。
そして結末は私が他作レビューでもよく批判している「逃げ脚本」・・。
(主要人物の死を持って作品に重厚感を増す、安易な脚本)
後半まで視聴者を引きつけるアイデアが持続せず、
アカデミー作品賞必須項目の "マイノリティ要素" を無理矢理挿入したイメージで、急に冷めてしまった。
エピローグでも建物実物の全体像を見せず、小さな大理石に十時が差すだけの描写。
実在の名建築家「安藤忠雄」設計 ”光の教会” を知っている者なら、
十時光サイズを小さくしたパクリじゃないかとすぐ分かる。
結局、圧倒する"物"は見せずに終わった後半に、★評価が下がるのも止むなしに。
ただ、この人物と物語は非情に独創性があり、
脚本を少し手直しして脇役にも魅力ある者を登場させ。
もっと年期の入った監督が撮れば、
映画史に残るような傑作になった予感もするので、非情に惜しい作品だとも感じた。 (コーベット監督はまだ若干36歳)
もしコーベットが作品賞の対象となる事を意識してこの脚本を書いたなら、もうアカデミー作品賞必須マイノリティ項目はハリウッドの為にも排除した方がいい。
トランプさんが米大統領に返り咲いて、この世に性は「男と女の2つしかない!」と明言して、
トランスジェンダーの女性競技参加を廃止したのを機に、
アカデミーも不要なLGBT推進の波が静まればよいのだが・・。
PS
劇伴がよいと評価している方も多数いて、
確かにそのシーンの雰囲気にインスト曲が合っている場合も多かったが、
音楽好きな私には違和感を感じた場面も複数。
まず家具店内。
高額品を売る店では、早いテンポの曲はほとんど流さない。
(会話の邪魔をしてノイジーに聞こえた)
落ち着いて品定めするには、スローな曲が必須。
丘の上からピアースが夢の提案を語っているのに、
不協和音の様な不安を醸し出すBGM。
ここは聞いてた者に拍手させ、メジャーコードの盛り上げる曲を流す方が、
見る者は感動するのでは?
後に出る資金面等の不安要素を暗示しているのかもしれないが、
初めて見る者には、まず違和感が湧き、使うのが早すぎたイメージが。
エピローグ開始時点での、シンセサイザー音の様なエレクトロポップはいくら何でも今作には不向き。
エンドロールがまだ終わらないうちに、曲がストップ。
その後もそこそこ長く文字は続く。
やはり違和感が。
斜めの文字列と共に、若い監督が安直に奇をてらってる様に感じた。
たしか「TAR」もエンドロールに凝っていた様な・・。
もし私がエンドロールに凝るなら、
文字列を全て、個別の "四角い長方形の塊" にして、文字で建造物を表すだろう♪