劇場公開日 2025年2月21日

「小冊子「建築家ラースロー・トートの創造」」ブルータリスト TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0小冊子「建築家ラースロー・トートの創造」

2025年2月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

第97回アカデミー賞において10部門にノミネートされている本作。以前はスカラ座だったTOHOシネマズ日比谷のSCREEN12(東京宝塚ビル地下)は同劇場最多座席数の大きな箱ながら、平日の割にそこそこの客入りで作品に対する注目度の高さが判ります。
本作の監督、ブラディ・コーベット。今作で初めて「アカデミー賞監督賞」にノミネートされたわけですが、彼のフィルモグラフィーでを過去の監督作品を確認すると『シークレット・オブ・モンスター(16)』『ポップスター(20)』となかなか個性を感じさせる2作品。そして本作でも裏切らず「いろいろと戸惑わせてくれる作品」に仕上がっています。
まず入場時に配られた小冊子「建築家ラースロー・トートの創造」。鑑賞前にあまり情報を入れないようにしている私は、それを見るともなしにサッと目を通してバッグに仕舞い込み、これから始まる長丁場に備えます。なんせ、本作の上映時間は215分。ただ、本作は大きく2部構成となっており、開始から1時間40分ほどで1部が終って15分のインターミッション(途中休憩)が入ります。その間は客電も点き、スクリーンにはカウントダウンも表示されるため落ち着いてトイレ休憩も可能。高揚感たっぷりで終わった1部のことを考えつつ、本作の主人公ラースロー・トート(エイドリアン・ブロディ)に興味が湧き始めた私。そういえばと思い出し、改めて例の小冊子に目を通します。そうこうしているうちにカウントダウンは1分を切り、再び小冊子を仕舞って2部に控えます。実は「劇場でのインターミッション初経験」の私、再開後の2部にすぐ集中できるか若干の不安もあったのですが、、2部の冒頭で早速、1部で出演のなかった「あの人」の登場シーンに、流石の存在感と演技力にすっかり涙腺を刺激された私。そこからは、1部以上に波乱万丈が続き「果たして、ラースロー・トートはこの偉業を成し遂げるのか?」心配がやまない展開。で、全て観終われば幾つか冗長に感じるシーンもなくはないのですが、215分の上映時間はインターミッションの効果もあって案外長くは感じませんでした。
そしてすっかりお昼のピークタイムが過ぎ、いつもは行列のできるラーメン屋に待ちなしで入店。この時点で本作を「建築家ラースロー・トートの伝記映画」と勘違いしている私、配膳を待つカウンター席にてWikipediaを検索、、ん?該当がない??。。何でだ?と思いながら改めて「小冊子」を出し、今度は注意深く目を通してようやく気付く小さな級数の注記に目を凝らすと…「本書の内容は一部を除き全て架空の内容です。」何と、全て創作だったとは。。。まぁそれを知ると、本作(特にエピローグ)に強く感じるシオニズムに対し、どうしても「今起きていること」が引っかからずにはいられないのですが、唯一無二の作品性と役者達の素晴らしい演技に対する高い評価は納得の一言。騙されたことも含め、すっかり楽しみました。いやはや参りました。

TWDera