「傑作2本分の怪作!等身大の夫婦愛に浸る。」ブルータリスト やまちょうさんの映画レビュー(感想・評価)
傑作2本分の怪作!等身大の夫婦愛に浸る。
ナチスの迫害から自由の国アメリカへ逃げ延びた天才建築家が辿る数奇な運命の話。
ユダヤ人迫害、人種差別、立場や状況によって豹変(悪い意味です)する人の心、薬物含めた快楽依存などなど・・・私の嫌いなアカデミー賞(笑)にも複数部門エントリーされているだけはあり、社会派のお堅いイメージだったんですが、それらは「建築素材」として使われているだけでした。
描かれている・・・いや、いろんな効果を考えて設計され基礎からがっちり組み上げられて「建てられた」のは、「濃厚な人間ドラマ」であり、「夫婦愛」だった訳です。
特に、15分のインターミッションの後に始まった後編は、奥様と姪の登場シーンからして印象的で、感激というよりも互いの異変を気遣い心底心配するような・・・感情をセーブしながらの演技が本当に素晴らしかったです。
車椅子生活の自分より、外見はまともなようでも精神的にぶっ壊れつつある夫のケアに余念がない妻の発言、行動は努めて献身的でした。しかしそれは肉欲にもリンクし同時に自身の快楽にも忠実であることが示されており、等身大で互いに自身の奥まで曝け出す様な愛の形が美しかったです。
あと、敵役?の成金似非インテリオヤジ、その馬鹿息子の配置や演技も見事で、物語に効果的な起伏を与えておりました。
主人公の夫が似非インテリオヤジに、自分の妻の経歴などを一切伝えてなかったのは、彼が無口なの以上に防衛戦略的には最善手(笑)でした。つづくテーブルを挟んだやり取りも夫として最高で、夫婦愛が暗喩された大好きなシーンのひとつです。
長い時間の映画ですが、演出、描写の丁寧さと、しかけのうまさで終始退屈することなく鑑賞できました。
傑作2本分だから星は10個差し上げたいくらいです笑
ぜひぜひご鑑賞ください!