劇場公開日 2025年1月31日

ザ・ルーム・ネクスト・ドアのレビュー・感想・評価

全112件中、61~80件目を表示

1.5そして扉が閉ざされた

2025年2月5日
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鑑賞方法:映画館

寝られる

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uz

5.0映画として完璧

2025年2月5日
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くー

4.5仕事に

2025年2月4日
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WELOVEMOVIES

4.0見守るということ、見守られるということ

2025年2月4日
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末期癌を患うマーサ(ティルダ・スウィントン)が治療を諦め、安楽死を決意する物語でした。彼女は親友のイングリッド(ジュリアン・ムーア)とともに、森の中の別荘で最期の時を過ごします。アメリカでは安楽死が合法化されていると思っていましたが、マーサは非合法の毒薬をネットで入手することになります。この描写には驚かされ、鑑賞後に調べたところ、ひと口にアメリカと言っても週ごとに法律は異なるようで、また安楽死を選択するための条件があることが分かりました。例えば、6カ月以内に死亡する不治の病であることや、本人が意思表示できることなどが求められるようです。マーサの病状はこの条件を満たしていなかった可能性が高いと考えられます。

本作は、「どのように最期を迎えるか、そして見送るか」というテーマを扱っており、自身がマーサの立場になる可能性や、イングリッドの立場で誰かを見守る可能性について考えさせられました。特に、マーサが娘との確執を抱えたまま旅立たざるを得ないという点は、人間の性を象徴しており、優れたシナリオだと感心しました。

映画としては、マーサとイングリッドの二人芝居というシンプルな構成ながら、美しい別荘や周囲の大自然を背景に、ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアの繊細かつ力強い演技が光りました。特にスウィントンは、序盤の希望に満ちた様子と、中盤以降の病状の進行を見事に表現し、その説得力に圧倒されました。

また、本作を通じて改めて安楽死と尊厳死の違いについて考えさせられました。日本尊厳死協会の定義によると、安楽死は「医師など第三者が薬物を投与し、患者の死期を積極的に早めること」とされ、マーサの選択はこれに該当すると思われます。一方、尊厳死は「延命措置を断ち、自然死を迎えること」とされ、日本ではこの二つを明確に区別しています。しかし、世界的には両者を同一視する傾向があり、この点は日本独自の特徴のようです。

最近の日本では、国民民主党の玉木代表が「社会保障の保険料を下げるために終末期医療の見直しを進め、尊厳死の法制化を含める」と発言し、物議を醸しました。この発言には賛否があり、一部では「姥捨山政策」や「優生思想」と批判されました。後に玉木氏自身も「尊厳死の法制化は医療費削減のためではなく、自己決定権の問題である」と釈明しました。

こうした議論を踏まえると、本作中でダミアン(ジョン・タトゥーロ)が口にした「アメリカを悪くしているのは新自由主義者と極右だ」というセリフが印象に残りました。マーサのように安楽死を自己決定することと、若者の社会保険料負担を減らすために尊厳死を推進することは別問題であり、金銭的な理由で議論するべきではないと感じました。しかし、玉木さんのような政治家が大衆に持て囃される現代の風潮を考えると、遠くない将来、『楢山節考』のような世界が復活するのではないかとも思わされました。

そんな訳で、本作はテーマ性の高い作品であり、考えさせられる内容でであり、評価は★3.8とします。

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鶏

3.5死ぬ間際は

2025年2月4日
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個人的に我を抜いて、真っ白に逝きたいから共感出来なかったのかな
直前に、リアルペイン見たのもあるか

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G列は貸し切り

3.5おーいお茶

2025年2月4日
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おーいお茶。

ペドロ・アルモドバル監督の作品は、
常に観客を驚かせ、時には戸惑わせる。

その大胆な作風は、繊細なテーマを扱いながらも、
過剰とも感じられる演出で観客を挑発し、
強烈な印象を与える。

本作も、アルモドバルらしい色彩と感情の濃厚さが特徴の作品だ。

ティルダ・ウィンストンとジュリアン・ムーアという二人の名優が複雑で多面的な女性たちを演じている。

ウィンストンはどこか奔放で自由な精神を感じさせながら、
過去の重荷を背負っているようにも見える。

一方、ムーアはこれまでのキャリアにおいても、
繊細で内面的な役柄を得意としてきたが、
本作でもその技術は発揮されている。

彼女が演じるキャラクターは、
まるで心の中で戦っているかのような複雑さを持っている。

常に微細で、感情の揺れを一瞬の表情や仕草で見せるため、
観客は彼女の心の中に引き込まれていく。

ただし、あまりにも内向的で感情を抑制した演技が、
時に物語の進行に対して少し重く感じられることもあるかもしれない。

アルモドバル監督の作品は、
しばしば観客に対して安易な答えを与えることを避け、
観る者自身に深く考えさせる。

本作もまた、そんな監督らしい挑戦的な作品だ。

物語が展開する中で、観客は必ずしも一貫した感情を持つことができない。
複雑な人間関係と織り交ぜられたテーマは、
時に観る者を混乱させるが、
それこそがアルモドバル作品の魅力でもある。

それにしても、
冷蔵庫にあった、おーいお茶。
まさか、
これがラストドリンクにならないよな、
日本人には受け入れられない、、、
ハラハラしたのは私だけではないはず。

ザ・ドリンク・ネクストドア

【蛇足】
スペインで撮影をしていた時、
スタッフルームをアルモドバルチームとシェアしていた。
その時に日本のモノを見かけたのかもしれない。
カラフルなモノが好きなペドロさん、
綾鷹、生茶だったら物語は入ってこなかったかも・・・

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蛇足軒妖瀬布

3.5全体的におしゃれな空気感の映画でした イングリッド、素敵な人ですね...

2025年2月4日
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全体的におしゃれな空気感の映画でした

イングリッド、素敵な人ですね

マーサ、細いだけで、
そこそこ元気そうに感じてしまったのは私だけ?

ストーリー(小ネタ)は良かった

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jung

4.0母と娘と友人の濃密な物語

2025年2月4日
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知的

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サム

4.0好きなものに囲まれる最期には、その物語を語る存在が必要なのではないだろうか

2025年2月4日
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知的

難しい

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Dr.Hawk

5.0いつまでもこの映画の世界にいたい

2025年2月3日
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田中スミゑ 90歳

5.0まさにアート作品

2025年2月3日
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興奮

知的

難しい

アルモドバルはいつもド演歌なイメージあったけど
今回の作品は映画芸術作品として完璧で素晴らしかった。
かと言って決して堅苦しい作品では無い所がまた良かった。
洗礼されたアルモドバル

全然関係ないけど冷蔵庫の中に“おーいお茶”がはいっててビックリしたw

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HIROKICHI

4.0「安楽死」≠(ノットイコール)「尊厳死」

2025年2月3日
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ベネチアで金獅子賞受賞の本作。前日の降雪予報もあり、積雪の心配がなくなった昨日の午後まで待ってオンライン購入したのですが、その時点ではまだガラガラ。しかし実際に劇場へ訪れた本日、10時40分からの回は平日の割になかなかの客入りです。
今回も予告やあらすじを見ず、前情報なしに鑑賞です。全般会話劇でありつつも全ては語らず、やや謎めいた雰囲気と心配事の多い設定に、ティルダ・スウィントン×ジュリアン・ムーアと言う実力派俳優の「抑えのきいた演技」でミステリーの要素も感じるヒューマンドラマ。
あることがきっかけでマーサ(ティルダ)と再会することとなったイングリッド(ジュリアン)。闘病中のマーサは戦争ジャーナリストであり、その経験も踏まえ自身の死生観に対して確固たる考えを持っています。がん告知を受けたものの元々は治療する意思がなかったことや、娘との関係、そして娘の父親に関する過去について語るマーサに熱心に付き合うイングリッド。久々に会う友人との語らいに生き続けることへ前向きになりかけた矢先、治療への期待を裏切る「転移」という結果に、マーサは以前から考えていたある計画をイングリッドへ打ち明けます。
闘病中の友人に対する同情という気持ちに収まらず、背負いこむ覚悟をするイングリッド。恐らくは、マーサの死生観に対して「深く理解したい」という(イングリッドの)物書きならではの心理と、同業者ならではにそのことをすかさずに見込んだマーサの「思惑の一致」が生んだ期間限定の共同生活。未経験の緊張感や恐怖心にお互い戸惑いながらも、偶然が生んだ「想定外」をきっかけに計画以上の満足感で、これぞ正に「尊厳死」という最期を迎えるマーサ。その後の些末なアレコレをバッサリとやっつけ、もっと重要なことを美しく魅せる物語の「終着」はとても美しく、107分とコンパクトにまとめられた作品は「THE完璧」。流石のペドロ・アルモドバル、あっぱれです。

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TWDera

3.0彼女の選択や頼み事の理由がよく分からない

2025年2月3日
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tomato

5.0色彩に息をのむ

2025年2月3日
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配色の美しさに心奪われっぱなし。ワンカット・ワンカット一枚の絵画のよう。オシャレ過ぎる絵作りにワクワクが止まらない。

内容的には安楽死がテーマなので、見る者それぞれの生死観が問われる。一般に死は、葬式で黒の喪服を着るように重苦しく悲しいものとみなされているが、死は肉体という重い鎧からの解放であり、ブラジルのサンバのように明るくお祝いしたらどうかと思う。生命は永遠の祝祭なのだから。

監督のペドロ・アルモドバルはゲイなのかな?ゲイの人たちは、ときにとても鋭い美的感覚を持っているし、台詞の中に不自然に多くの性的な話題が出てくる。

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CR7

5.0隣にいることを考える

2025年2月3日
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ティルダはいつだって変幻自在。人間だけじゃない。吸血鬼、天使、魔女。いかなる性別であれ、いかなるアイデンティティであれ、何にも囚われず自由に意識を流動させるところが好き。
ジョイスが意識の流れを外に開放させようとしたように。

ジュリアンムーアはいつだって人間の量感たっぷり。相手との一筋の糸を取らまえながら存在そのもので語るところが好き。ヴァージニアウルフが自分に意識を集中させたように。

本作は死についての映画ではない。やがて訪れる死を前にして人はどう生きるかという映画。
そして、死にゆく人に目を背けることなく側にいること、何も言わずにただ耳を傾けること、すべてを目撃する繋がりの映画。

私たちは誰かの隣の部屋にいる。ガザやウクライナの人々の死と共鳴するのは恐ろしいことだけど、私たちは彼らの隣の部屋にいる。彼らと繋がることを拒否しない優しさ。そのことをグサリと思い出させられた。

読書が大好きだった人がもう本を読めなくなったり、ひとつずつ自分の機能を失い始める辛さを、ティルダも〝自分自身が減ってしまう〟と言っていた。だからこそ、最後に真紅のルージュを引きイエローの服で自分自身を停止させなかったところが詩的で美しかった。

一方で、メタファー的な死とは、固定観念や過去に支配され自ら判断・選択することを停止した者のこと。取り調べをした単純思考の警察官や、「新自由主義と右翼が台頭する世界で…」ってセリフにも、思考停止に対する不安と批判が凝縮されていた。

それでは、過去に囚われ、誰かを助けるために火の中に飛び込んだ青年のことは?

ラストのピンクの雪は、死者と生者 、批判する者と批判される者全てを一色に埋め尽くす。意識の階層の分断、その構造を全て均質化させた。

ヴァージニアウルフの遺書「また自分の頭がおかしくなっていくのがわかります。(中略)私にはもう何も残っていませんが、あなたの優しさだけは今も確信しています。」の言葉が思い出されて、本作の二人の物語に滲み出ているように思った。

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Raspberry

4.5あなたの選択よ‼️

2025年2月3日
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泣ける

怖い

幸せ

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活動写真愛好家

4.5誇り高き死を

2025年2月3日
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まき

3.5自由な死

2025年2月3日
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知的

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おきん

5.0美しいマーサ

2025年2月2日
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美しく死にたい、気が狂いそうな程の痛みに侵され人間らしい思考が保てなくなる前に…

癌の痛みは壮絶と聞くけど、人格保てなくなるほどの痛みって
見てる方もつらい

普段は上品な女性が、痛みゆえにすごい言葉を吐く。私も自分の尊厳を保てないほどの痛みに見舞われ続けるのが分かってたら…終わらせたいと思うかも。

そう思ってても、「近いうちに自死を決行するけど、隣の部屋にいて(事後の処理をして欲しいの)」とかの友達の頼みを受け入れるのは、辛いんだよ。イングリッドはとても強く優しい心を持ってる。あの狂信的な警官もそこは見抜いた(あなたは友人に自死を見守ってくれと頼まれれば断れない人だと)。

ミシェルは同一人物かなってほどそっくり。

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れい

3.5色彩豊かに、主演女優の演技力を武器に描かれる旅立ち

2025年2月2日
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泣ける

悲しい

難しい

「尊厳死」を題材に、病に侵された女性が、安楽死を求めて親友と共に過ごす数日間を描いた意欲作。
監督は、色鮮やかな映像とユーモア溢れる作品群で数々の賞を受賞してきたペドロ・アルモドバル。本作も2024年度ベネチア国際映画祭にて金獅子賞を受賞。W主演には、ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアの2大オスカー女優。

小説家のイングリッドは、自身のサイン会にて旧友から親友のマーサが闘病生活で入院している事を聞かされる。
見舞いに訪れたイングリッドは、再会したマーサと病室で語らいあう。かつて戦場ジャーナリストとして活躍していたマーサの人生は、若かりし日の恋人との苦い思い出や、彼との間に出来た娘との軋轢がありながらも、1人の女性が送ってきた人生として充実していた。
しかし、そんなマーサにも容赦なく病魔は歩み寄る。投薬治療も効果が無いと悟ったマーサは、「尊厳のある死を望む権利くらいはあるはず」と、ネットの闇サイトで安楽死の薬を入手。
「人の気配を感じながら最期を迎えたい」と、イングリッドに最期の日々を共に過ごしてほしいと懇願する。はじめは戸惑いつつも、イングリッドはマーサの要望を聞き入れ、彼女が借りた森の中の家で、彼女と最期の数日間を過ごす事になる。マーサは、自身がもうこの世にいない場合の証明として、自室のドアについてイングリッドに告げる。
「もしドアが閉まっていたら、私はもうこの世にいない」

私はアルモドバル作品初鑑賞。しかし、これ一作だけでも、監督の持つ独自の作家性を存分に味わう事が出来た。「尊厳死」を題材にしつつも、作品を彩る鮮やかな背景や美しい音楽が、最後の旅立ちへの物語を暗くさせずに演出している。それは、監督自身も意識していた部分であり、「死」というものを暗く陰鬱に描くのではなく、あくまで一つの旅立ちとして表現している。また、画角に収まる人物や小物の配置、ファッションに至るまであらゆる視覚的部分に拘っている事が伺える。

W主演のティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアは同い年。何処か両性具有的な雰囲気を放つ個性派のティルダと、女性的な優しく暖かな印象を与える王道派のジュリアンの共演は、ともすれば個性のぶつかり合いに成りかねないかもしれないのに、抜群の調和を持って画面に溶け込んでいる。
そんな本作を語る上で、ティルダ・スウィントンの放つ「病に侵され、尊厳死を望む」というリアリティある女性像は外せない。これまで私は、『コンスタンティン』(2005)の天使ガブリエルや『ナルニア国物語』シリーズの白い魔女、『ドクター・ストレンジ』(2016)のエンシェント・ワンといった超常的存在を数多く演じてきた彼女に、リアリティある女性感を抱いた事は無かった。しかし、本作では癌に蝕まれ、思考がネガティブになっていく、精神的孤独を恐れ、親友に最後の頼みを行う姿のどれもこれもが、抜群のリアルさを感じさせる。不吉な発言ばかりで、時にイングリッドとの間に気まずい雰囲気が流れる様も他人事とは思えなかった。

対するジュリアン・ムーアは、長い赤髪と緑の瞳が放つ抜群の包容感で、ティルダ演じるマーサの最期の日々に寄り添う。長い間交流の無かった親友が、最後に頼る存在としての説得力がある。小説家としてではなく、親友としてマーサへの素直な言葉を紡ぐ姿の暖かさ。劇中で恋人のデイミアンが言う「君は他人に罪悪感を抱かせず、苦しむ方法を知っている」という台詞が印象的。

また、チョイ役ではあるが、マーサが自殺した後、イングリッドを取り調べる事になる警察署の刑事を演じたアレッサンドロ・二ボラも印象に残る。狂信的なカトリックである彼は、マーサの尊厳を無視して自殺を絶対の悪として捉え、協力者であるイングリッドにも厳しい視線を向ける。彼の言葉は、決して間違ってはいない。しかし、世の中には「正論では救えない事」がある。だからこそ、僅かな出演時間と台詞ながら、それを否定する彼は本作唯一の悪役として強烈な存在感を放つのだろう。

本作を鑑賞した者ならば、自然と頭を過ぎるであろう「私がマーサの立場ならどうするか?」「私がイングリッドの立場ならどうするか?」という問い。私は、マーサには共感出来るのだが、イングリッドの持つ底知れない包容力は持ち合わせていないと思ってしまう。また、尊厳死として自殺を選択せざるを得ない現在の司法の是非についても、安易に答えは出せない。
しかし、先述した「正論では救えない事」があるのは間違いないし、あの刑事のようにマーサの死を責めたてられるだけの「自らの正義」はない。そう選択したのなら、それを理解は出来なくとも受け止めはすべきだと思うから。

マーサが雪降るマンハッタンの街を眺めて引用する『ザ・デッド/「ダブリン市民」より』(1987)の台詞と、それをアレンジして語るラストのイングリッドのシーンの美しさが圧巻。
【雪が降っている。寂しい教会の墓地や、すべての宇宙に、おぼろげに降り続く。かすかに降る雪。やがて来る最期のようにーすべての生者と死者の上に…】
【雪が降っている。一度も使わなかった寂しいプールの上に。森の木々の上に。散歩で疲れ果て、あなたが横になった地面に。あなたの娘と私の上に。生者と死者の上に降り続く】

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緋里阿 純