「素晴らしかったのですが…」ザ・ルーム・ネクスト・ドア shin-zyさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしかったのですが…
作品自体はとても素晴らしかったです。
死について色々、深く考えさせられました。
鑑賞しながら両者の立場に自分を置き換え、自分ならどうするか?と都度考えを巡らせていました。
監督がわざとこちらに考えさせる時間を与えたんではないか?と思えるほど、絶妙な間を織り込んでいたようにも感じました。決して展開が遅いというわけではありません。それぞれのシーンに深みがあり、こちらに静かに語りかけてくるメッセージが込められていたのです。
それはもちろん、両女優さんたちの素晴らしい演技によるところも大きかったでしょう。
特にティルダ・スウィントンは、本当に命の危機が迫っているのではないかと思えるほど、鬼気迫る迫真の演技を見せてくれました。静かでありながらも、内面に激しさを秘めた演技でした。
ただ、敢えて言わせてもらうなら、娘役は別の女優さんにやってもらいたかったな。
もし娘が出てくるとしたら、恐らく有名ではあるけど意外な大物女優が起用されているのでは?という期待が少しあったので、いざその人が現れると少し興ざめしてしまいました。
確かに意外ではあったのですが、それじゃないだろう、と。
もちろんその方の演技も良かったのですが、せっかく最後まで充実した大切な物語を重ねてきたのに、こちらの気持ちを切られたような気さえしました。その女優さんの使い方はむしろ、言葉はきついかもしれないですが、この映画のテーマ自体を「冒涜」しているような気さえしました。
あるいは、何かコメディのようなオチにすら感じてしまったのです。
もちろん高度なメーキャップ技術のおかけで、人の顔すら変えられるのは百も承知です。過去に「スキャンダル」と言う作品もありましたしね。
しかし、この作品のテーマを考えると、やはりマーサにはそのままフェードアウトしてほしかったな、というのが私自身の正直な感想です。おそらく誰にも共感されないでしょうが…
せっかく中身の濃い良い作品なのに、女優さんの使い方次第で作品に対する想い変えられてしまうのも、何かもったいない気さえしました。