「美しい映像」ザ・ルーム・ネクスト・ドア おかなまこさんの映画レビュー(感想・評価)
美しい映像
アルモドバル監督作品はトーク・トゥ・ハーに続いて2作目。
奇しくも病院つながり。
だれも興味ないと思うけれど、トーク・トゥ・ハーでは、介護士のベニグノはレイプしていないと私は思っている。
その作品もこの作品も、生と死が連続する時間の中のイベントに過ぎない、しかし避けようのないものであることを描いているように思う。
当然、愛に満ちた人生の中で。
序盤に病院に見舞いに訪れたイングリッドと電動ベッドを起動して状態を起こしたマーサが会話するシーンは、カメラが水平ではない。
彼女たちの顔は画面の中で右と左にきれいに配置されているが、不思議な落ち着きの悪さを感じさせる。
その後、マーサが点滴のスタンドを左手に持ってイングリッドを見下ろす様に直立しているシーンは、ファンタジー映画の賢者のようである。
マーサがいよいよイングリッドに提案するあたりから、イングリッドの衣装がマーサ側に寄ってくる。
それまでは、イングリッドは柄物の衣装が多かった。
それが通俗世界から閉鎖世界へ転移する予兆にも思える。
二人とも社会で成功した人たちなので、経済的に豊かであり、都市部のアパートメント、VOLVOのワインレッドの車、最後の贅沢よ、と言って借りる林の中の邸宅、うらやましい限り。
出てくる食べ物も、動物性のものはなく、ベリーを中心とした果実。エデンの園か。
人参スティックも食べていたな。
闘病ものではないので、闘病で苦しむシーンはほとんどない。
経験したことのある人からしたら絵空事にしかみえないかも。
マーサの提案から死まではイングリッドにとってはホラー物語だろう。
舞台を山荘に移動したことで、さらに現実味が薄れる。
妄想と現実の間を漂う時間が、描きたかったことなのだろうか。
そういう点は、たしかにピナに通じるかもね。