劇場公開日 2025年1月31日

「「安楽死」≠(ノットイコール)「尊厳死」」ザ・ルーム・ネクスト・ドア TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「安楽死」≠(ノットイコール)「尊厳死」

2025年2月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ベネチアで金獅子賞受賞の本作。前日の降雪予報もあり、積雪の心配がなくなった昨日の午後まで待ってオンライン購入したのですが、その時点ではまだガラガラ。しかし実際に劇場へ訪れた本日、10時40分からの回は平日の割になかなかの客入りです。
今回も予告やあらすじを見ず、前情報なしに鑑賞です。全般会話劇でありつつも全ては語らず、やや謎めいた雰囲気と心配事の多い設定に、ティルダ・スウィントン×ジュリアン・ムーアと言う実力派俳優の「抑えのきいた演技」でミステリーの要素も感じるヒューマンドラマ。
あることがきっかけでマーサ(ティルダ)と再会することとなったイングリッド(ジュリアン)。闘病中のマーサは戦争ジャーナリストであり、その経験も踏まえ自身の死生観に対して確固たる考えを持っています。がん告知を受けたものの元々は治療する意思がなかったことや、娘との関係、そして娘の父親に関する過去について語るマーサに熱心に付き合うイングリッド。久々に会う友人との語らいに生き続けることへ前向きになりかけた矢先、治療への期待を裏切る「転移」という結果に、マーサは以前から考えていたある計画をイングリッドへ打ち明けます。
闘病中の友人に対する同情という気持ちに収まらず、背負いこむ覚悟をするイングリッド。恐らくは、マーサの死生観に対して「深く理解したい」という(イングリッドの)物書きならではの心理と、同業者ならではにそのことをすかさずに見込んだマーサの「思惑の一致」が生んだ期間限定の共同生活。未経験の緊張感や恐怖心にお互い戸惑いながらも、偶然が生んだ「想定外」をきっかけに計画以上の満足感で、これぞ正に「尊厳死」という最期を迎えるマーサ。その後の些末なアレコレをバッサリとやっつけ、もっと重要なことを美しく魅せる物語の「終着」はとても美しく、107分とコンパクトにまとめられた作品は「THE完璧」。流石のペドロ・アルモドバル、あっぱれです。

TWDera