「性と死」ザ・ルーム・ネクスト・ドア カール@山口三さんの映画レビュー(感想・評価)
性と死
ザ・ルーム・ネクスト・ドア
イングリットの小説家の紹介の後、
マーサの紹介が始まった。
戦場カメラマンは、
殺戮の中で安らぐのはSEXだと、同性同士の行為を女性戦場記者に臆面もなく語り、
今インタビューした戦地の二人の男性達も恋人同士だと言い放った
マーサが20歳前に、戦地からPTSDで帰還した恋人と別離のキスして、その延長で激情に任せて性交に至り、その時に妊娠し、その後、戦場記者となった故に、戦場でのSEXの興奮が深く分かるのだろう
また、次の夫との激しい営みが同じ夫となるイングリットと赤裸々に語り合えるのが頼もしい
そんな生死の殺戮の戦場が、
自身の身体に癌として命を奪いに襲って来た時、マーサが選んだのは人間として尊厳ある最期を過ごし終えたいと言う望み…
その為には、介護でもなく寄り添わなくてもいいから信頼できる人を感じながら、隣の部屋に居るだけでいいから最期を迎えたいと言うことを疎遠だったイングリットに頼む
その思いと深部には、やはり、かの戦場カメラマンと同じように、理解あるイングリットに肌を触れられながら安穏の中で、その日を感じ、受け入れたのであろうか
その後に完璧に安楽の死に至る身だしなみを整え薬を飲んで白昼に屋外テラスの長椅子に横たわった
立派な終わり方だった。
素晴らしいロケーションと友人に包まれたその死は、爆弾と血肉飛び交う中を生き抜いた戦場記者だからこそ望んだ死のあり方だと思う。
二人は1960年11月と12月生まれの同い年生まれであった。
イングリットは、小説家というよりカウンセラーのようでしたね。
生きることを精一杯やって来たからこその安楽死であり、尊厳あるものと受け入れたいものだ。
こんな自前ホスピスを夢見るのもいいかも知れない。
そう言えば、
映画監督ジャンリュック・ゴダールさんがスイスで安楽死を選択したのを思い出す。
彼の友人がそうだったようだ。
(^_^)
ザ・ルーム・ネクスト・ドア
スペインの名匠ペドロ・アルモドバルによる初の長編英語劇で、2024年・第81回ベネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞したヒューマンドラマ。
ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアという当代きっての演技派の2人が共演し、病に侵され安楽死を望む女性と、彼女に寄り添う親友のかけがえのない数日間を描く。
重い病に侵されたマーサは、かつての親友イングリッドと再会し、会っていなかった時間を埋めるように、病室で語らう日々を過ごしていた。
治療を拒み、自らの意志で安楽死を望むマーサは、人の気配を感じながら最期を迎えたいと願い、“その日”が来る時にはイングリッドに隣の部屋にいてほしいと頼む。悩んだ末にマーサの最期に寄り添うことを決めたイングリッドは、マーサが借りた森の中の小さな家で暮らし始める。
マーサはイングリッドに「ドアを開けて寝るけれど、もしドアが閉まっていたら私はもうこの世にはいない」と告げ、マーサが最期を迎えるまでの短い数日間が始まる。
「フィクサー」でアカデミー助演女優賞を受賞し、アルモドバルの短編英語劇「ヒューマン・ボイス」にも主演したティルダ・スウィントンがマーサを演じ、
「アリスのままで」でアカデミー主演女優賞を受賞したジュリアン・ムーアが親友イングリッド役を務めた。
ザ・ルーム・ネクスト・ドア
La habitacion de al lado
2024/スペイン