「ヴィヴィッド・カラーにくるまれる」ザ・ルーム・ネクスト・ドア talismanさんの映画レビュー（感想・評価）
ヴィヴィッド・カラーにくるまれる
主人公の二人ともインテリで濃厚に生きている女性。一人は小説家のイングリッド（ジュリアン・ムーア）、一人は戦場ジャーナリストだったマーサ（ティルダ・スウィントン）。それぞれがどのような仕事をしているのかしてきたのか映る場面が始めに描かれていたのは二人の個性や性格を知るうえでよかった。マーサの仕事に関しては映画「シビル・ウォー」を見ていたことも参考になった。マーサは死と向かい合う中で抑えざるを得ない感情を解放し爆発させる必要と生の確認が男性を求めることにつながっていたように思った。その激しさと強さ、反動的に襲ってくる弱さをティルダは素晴らしく演じていた。アドレナリンが消え何にも興味がもてなくなること（読書ができなくなる、に共感した）、記憶が曖昧になり精神がぼやけることからは身体の痛みや苦しみと同じかそれ以上に解放されたいことだと思う。イングリッドを演じたムーアは、今まで見た中で一番いいと思った。知的で優しく寄り添って静かに耳を傾ける人。しばらく疎遠であってもイングリッドを選んだマーサの眼に間違いはなかった。
二人の会話、特にマーサの話は物語のようでずっと聞いていたかった。彼女の話に耳を傾けるイングリッドはなぜこんなに強く受け身でいられるんだろう。私はできるだろうかと自問した。
衣装も部屋も家具も食器も家もアルモドバルの世界。基調の赤と緑は他のクリアな色と喧嘩しない、女性の友情と連帯と信頼のしなやかな繋がりのように。スウィントンは何歳にでも誰にでもなれるのは知っていたが今回は息を呑んだ。最初から最後まで緩みなく作られた映画。素晴らしかった。
おまけ
マーサとイングリッドが時間差で結婚していた夫デイミアンからは笑いをもらった。気候変動に、世界の右傾化に心を痛め絶望している。半分はわかる。半分はもっと楽観的になった方がいいよと言いたくなる、でもとても頼りになる人。
こんばんは。本当に難しい問題ですよね。苦し紛れにレビュー上げましたがこの問題は考えれば考えるほど沼にはまりそうです。スイスで安楽死を受けた日本人女性のドキュメント番組を見たりしてとても憂鬱になりました。あれは映画化されるらしいですね。
人の死は他人事と書きましたが、ただその他人の死が自分自身に与える影響はけして小さいものではないですよね。これが肉親とか親しい友人ならなおさらで、確かそういう人の死を体験すると大きなストレスで寿命が縮まるそうですね。私も兄を亡くしてるのでtalismanさんの気持ちはわかります。
他人事と書いたのはとどのつまり自分の人生は自分で決めるしかないという意味で書きました。
シビル・ウォー、確かにそうですね。いつ死ぬか分からない状況だからこそマーサは人との繋がりを大切にしたんでしょうね。
イングリッドは本当に人として素晴らしいなと思います。ある時は素直に自分の気持ちを伝え、相手に寄り添う。なかなかできることじゃないです。
私も実はTake That 時代の曲は知らなくて、ソロになってから多少聴くようになりました。ヨーロッパではスターですが、北米でもそこまで人気ないのか、ツアーの予定がありません。まだ本人は生きてるし、本人？が演じてるからボラプのようなドラマはないですが、温かいエンディングはおすすめします！
Better man へのコメントありがとうございます。
あまり俗っぽいポップミュージックはお聴きにならないんでしたよね。
まぁ、いわゆるスター伝記映画なので、ボラプやロケットマンをイメージして頂けたら！
イングリッドのマーサを受け止める強さは、いつかマーサのことを読者に伝えたい、伝えなくては！という思いがあるからかもしれませんね。
サイン会の様子を見てると、私はとても素晴らしい読者に恵まれているんだ、感謝しなければ、という謙虚さと人間的な寛容度の高さを感じました。
その素晴らしい読者たちに私が伝えなくて誰が伝えるのだ！
