劇場公開日 2025年2月8日

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「映像は楽しめるが物語は取っ散らかった印象」ハイパーボリア人 ありのさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5映像は楽しめるが物語は取っ散らかった印象

2025年4月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

難しい

驚く

 目くるめく迷宮世界を、主人公アントーニアの目線で追体験していくシュールでファンタジックな怪作。

 物語はアントーニアが自分が主演した映画を再現するという体で始まるが、そこで描かれる劇中劇はかなり混沌としていて、どこからどこまでが現実で、どこからどこまでが幻想なのか判然としない作りになっている。ゆえに、観る人によってはサッパリわけが分からないという感想になろう。

 加えて、実在した人物の名前や独裁政権下のチリの社会状況も関係してくるので、そのあたりを知らないと楽しめないように思う。特に、後半に行くにつれて、このあたりは深くテーマに関わってくる。ある程度予備知識を持ったうえで鑑賞したほうがいいだろう。

 監督、脚本は前作「オオカミの家」で世界的に注目されたのクリストバル・レオンとホアキン・コシーニャ。
 チリの過去の悲劇を炙り出すというテーマは前作から受け継がれているが、作品スタイルはガラリと変化している。前作は全編ストップモーションアニメで表現されたダークな作品だったが、今回は実写映像を主としたユーモラスなスタイルになっている。尚、今回も前作同様、美術館でのインスタレーション作品として制作プロセスを展示しながら撮り上げた作品ということである。

 まず何と言っても様々な技法を駆使した映像表現に見応えを感じた。
 映画の原初を思わせるトリック撮影や、素朴な味わいがする影絵、手作り感溢れる美術や小道具等、全てにおいて”アナログ”を意識した作りが面白い。CG全盛の時代に敢えて逆行した作りは挑戦的と言うのを通り越して、もはやアヴァンギャルドですらある。
 思い出されるのが、ミシェル・ゴンドリー監督の「恋愛睡眠のすすめ」である。段ボールで作られた主人公の妄想の世界が大変ユニークだったが、それに通じるものを感じた。

 また、モノクロ時代のB級映画を思わせる後半部は特に面白く観れた。このパートだけ画質が粗くなり、ご丁寧にフィルムの傷まで付けるという凝りよう。明らかにチープなセットも完全に狙ってやっているのだろう。

 一方、物語はと言うと、先述したように虚実が混沌としてて、よほど注意しながら観て行かないと途中から置いてけぼりを食らいかねない。一応、アントーニアが行方不明になった映画を再現するという形で進行するのだが、これが中々一筋縄ではいかない。途中で本作の監督であるレオン&コシーニャが人形の姿で登場したり、時空を無視した非現実的な空間、果てはコンピューターゲームやオカルト、都市伝説めいたホラ話まで登場して、物語の方向性がまったく定まらない。
 キーパーソンであるメタルヘッドが時々人形の姿になったり、アントーニアが急に仮面を付けたりするが、これも理由があるのかもしれないが、自分には理解できなかった。

 確かに唯一無二のアーティスティックな映像は楽しめたが、物語としてみた場合、取っ散らかった印象は拭えない。

ありの
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