「かなりの知識を要求される点で、ある意味「問題作」か…」ハイパーボリア人 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
かなりの知識を要求される点で、ある意味「問題作」か…
今年65本目(合計1,607本目/今月(2025年2月度)28本目)。
「名前のノート」と一緒に放映される扱いですが、こちらにも若干触れていきます。
まず「名前のノート」は前提知識がないと、延々と人名が読み上げられる「だけ」の10分ほどの映画なのですが、読み上げられる名前に男性名に極端に偏りがあることがわかります(女性名はほぼ出ない)。このことから、何らかの戦争に巻き込まれたか…などの推理が働きますが、チリでは「ピノチェト軍事政権」の独裁政権があり、その独裁政権の中で行われた数々の事件の犠牲者を扱う趣旨の映画であることをまず見抜かないとこの10分ほどの短編映画は「???」になりますし、その後の本作もかなりの理解差が生じます。
そしてこちらの本編になりますが、「ピノチェト軍事政権」という語は出ないものの「1980年憲法」や「ナチスドイツがうんぬん」といった語から、(第二次世界大戦前~後のドイツ系移民による)チリにあったコロニアのいわゆる性虐待を扱った映画であることがわからないと(この点は前作の「オオカミの家」でも理解しるう内容だった)、突然1980年憲法がどうこうといったこと、ましてチリ映画(スペイン映画)なのにドイツ語や、はてはナチス(や、ヒトラー)が出てくる意味が分からず、そこが厳しいのかな…といったところです。
一方、「ハイパーポリア人」という言葉「それ自体」については何度か出てくるものの具体的に何を指しているか映画内では言及がありません。この点、この語そのものは、いわゆる「クトゥルフ神話」等にも登場はする語ではありますが、この映画の趣旨的にSFチックなこの小説から取ってきたとは思えず、仮にそこから引っ張ってきているとしても真の意味は別にあるはずですが(「クトゥルフ神話から取ってきた」というのは形式的な意味で正解にはなるが、本質的な正解にはならない)、この点はわからずじまいです(パンフには答えが載っているのかな?)。
総じて、チリの現代史(1980~)や、ドイツ系意味の話を理解できないと詰んでしまう(ただ、2024年だったか「お隣さんはヒトラー?」は、実は趣旨的に一部がかぶる)のがこの映画の特徴かなといったところです。
採点としては以下まで考慮しています。
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(減点0.8/見るにあたってかなりの知識が必要)
上記に書いてあること程度はある程度常識とする向きもありましょうが、日本ではアメリカ史、フランス史などは大手の書店では世界史の棚にあると思いますが、チリ史まで扱っている書店は少なく(大阪市でさえ見つからなかったので、東京でもない?)、大学でチリ史を専攻しました、レベルの方でないときついのかな、と思います。
一方それらがわからなくてもコメディ、恋愛ものとして楽しめるならそちらのベクトルで見ることもできますが、本映画はそのような「向き(ベクトル)」がなく、上記の最低限の知識がないと「放映フィルムがぶっ壊れてるのか」くらいにわかりづらいのが、ここが人を選ぶかな、といったところです。
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(減点なし/参考/「私は~かどうか知らない」を意味するスペイン語のモニター表示)
もっとものこのパソコン、1960~70年代の黎明期のパソコンを想定できる一方、いきなりキャラクタのアバターが出てきて指示を個々出す(今でいえば、teamsやスカイプといえばよいか)といった「時代が謎なパソコン」ですが、この「~かどうかを知らない」の部分が、 No se ... になっています。
本来、スペイン語では se となる部分は、eにアクセント記号がある se' (実際は、eの上に ' の強勢記号がつく)となるのが正しいのですが(動詞 saber の一人称単数の活用。再帰代名詞 se と区別するため、こうなる)、1960~70年代の初期のパソコンでは、おそらく英語基準で最低限の文字しか文字コードしか扱えなかったので、上記のような表記になっているのだろうと思います( se (再帰代名詞のそれ)か、se' (saberの活用形)かは、文脈でわかるため)。