国境ナイトクルージングのレビュー・感想・評価
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ああ、僕が笑わせて遣りたい
北朝鮮と国境を接する中国・延吉で出会った二人の男性・一人の女性の寄る辺ない日々を描いた物語です。3人それぞれが夢破れた過去・思うに任せぬ日常に苛立ったり立ち止まったりしています。
まず、この女優チョウ・ドンユイさんに目が吸い寄せられてしまいました。彼女は『少年の君』(2021)で初めて観て強く印象に残り、『ソウルメイト』(2021)、『ボーン・トゥ・フライ』(2024)と、スクリーンに登場するたびに「あっ」と声を発しそうになり視線がそちらに行きます。中国的なベッピンさん女優とは一味違う個性です。
だから、本作でも彼女がずっと不機嫌な顔をしていると、観ているこちらが「ああ、なんとか彼女を笑わせて遣りたい」と思ってしまう程でした(それは、僕だけかな?)。
物語は、多くを説明しないが故に却っていつまでも後味が口の中に残る様な印象でした。「説明しない事が魅力の映画」と「説明不足でイライラする映画」の違いは一体どこにあるのでしょう。僕には未だ分かりません。
3人それぞれの閉塞感から共感へ
チョウ・ドンユイ出演とあっては、観ないわけにはいかない本作。
チョウ・ドンユイは『少年の君』、『ソウルメイト 七月と安生』で私の推しになりました。
3人それぞれの閉塞感がしんどい。
・ハオフォン(リウ・ハオラン)は、母親からのプレッシャー、香港の金融関係の仕事も日々”追われている“。
結局逃れられないため、彼は死をも想像するわけです。高いところから飛び降りたいと。
・ナナ(チョウ・ドンユイ)は、かつてフィギュアスケートでの活躍を期待されるほどのギフトを持った人だったが
怪我で断念。それ以来自暴自棄に(見える)。
・シャオ(チュー・チューシャオ)は、両親が亡くなり叔母の食堂で働くも、弟ともども叔母からのプレッシャーがハンパない。
そんな3人が出会い、お互い共感し、国境をクルージングするわけですが、
その行動を通して、3人それぞれが前を向いて自分の人生を歩み出す。一歩を前に踏み出していく。
説明なし、起承転結ではない作品なので、いろいろな想像をしながら鑑賞するのがとても楽しかったですね。
余韻もたなびく良作です。
とにかくチョウ・ドンユイの演技が自然すぎて素晴らしいです。
バスガイドの役ですが、本当にいそうですもん。そのくらいリアルで自然。
特に涙を流すといった感情表現にはグッときますね。
ずっと演技を見続けていたい、そんな俳優さんですから、今後も追っていきたいと思います。
たくさんの人に観てもらいたいけれど、興行収入はとても厳しい気がしますね。
こういう映画にスポットがあたるその日を信じて、自分としては劇場で鑑賞することで応援していきます。
誰も寂しい
原題は「燃冬」であり「THE BREAKING ICE」
そこから「国境ナイトクルージング」とな🙄
冒頭、湖の氷を切り出して運搬して行く
光景からのタイトル「燃冬」かっこいい。
だけど、燃える冬感を読み取ることが出来ず
皆がみんな訳ありで、寂しくて寄り添いたくて
繋がりたい。
恋愛と言うよりは青春映画という感じ。
青春ロードムービーって事で良いんじゃないかな
キーワードは「氷」
どうしてこの邦題に?
誰が邦題を考え、ゴーサインを出したのかがとても気になる。中国でのタイトル「燃冬」、英語のタイトル「The Breaking Ice」なら納得の内容が、邦題でテーマが明らかに曖昧になり、ボケてしまった感じがもったいない。
確かに描かれている場所は、北朝鮮との国境付近の、中国の国内では辺境の地だし、登場人物たちも望むかどうかに関係なく、そこに流れついた訳だが、「国境」かどうかにそれほど重大な意味があるのだろうか。それに「中国に居ながらソウルみたい」と言われるらしい延吉市などの独特な街並みがロードムービーのように案内される展開もあるが、それも全然メインじゃないと思う。ましてや、長白山(北朝鮮や韓国からすると白頭山)への旅について、邦題によって、北朝鮮と中国の対比や対立を意識させてしまうのはミスリードもいいところ。
それぞれに行き詰まりを抱えている3人の若者たちが、数日間関わり合ったことを契機に、曲がりなりにも一歩を踏み出そうとするストーリーから考えると、素直に原題通り「燃冬ーThe Breaking Iceー」でよかったのに…というのが自分の意見。
映画については、まず、主演のチョウ・ドンユィ(「少年の君」「サンザシの木の下で」など)が、大人の女性になったなぁと感動。
内容面では、3人それぞれの行き詰まりのどれかにピッタリ共感できる経験は持ち合わせてないのだが、それでも、自分が二十代前半から半ば辺りに感じていた「思ってたのと違う」という、それまで描いていたイメージと現実のギャップに対する漠然とした不安やモヤモヤを思い出させられた(それも、嫌な感じではなく、どちらかというと甘酸っぱく)。
加えて、希死念慮は度々描かれるものの、こういう言い方は適切ではないかもしれないが、生死を安易にスパイスにしておらず、好感が持てる。
また、中国というのは、思いの外多民族国家なのだと気付かされると共に、驚くような発展をとげてきているのだなと思いしらされた。
ただ、今の中国の経済状況に疎い自分にとっては、劇中に何度か象徴的に登場する万引き常習犯の懸賞金の意味が今一つつかめず、ちょっと悔しい。
分かる方、またご教示ください。
大変、期待して見たが。
背景は国境の町、朝鮮族が主体の吉林省朝鮮族自治州、私の好きな「スプリング・フィーバー」にも出てきた。登場人物は3人、しかし、描き方は類型的。
ナナという若い女性は、オリンピックを目指して頑張っていたフィギア・スケート選手、けがで挫折し、この町延吉に逃げてきて、ツアーのガイドを務める。要領はよい、韓国の著名な選手がモデルか。シャオは、ナナの友達、彼女に好意を寄せているが、ある一定以上は深まらない。勉強がきらいで、叔母を頼って四川から移って、仕事を手伝っているようだが。3人目のハオフォンが、一番見えにくい。上海の金融マンとはいうが、結婚式に出席のため延吉に来たとは言え、だれの結婚式なのかもはっきりしない。
北京の冬のオリンピックの頃とすれば、名実ともにバブル経済の最中だろう。全体として経済が膨張しているので、個々の力は、それほど問題にならない。何とかなってきたのだろう。ただ、バブルが崩壊して、国全体がだめになってしまったどこかの国と比較すると、この映画には、二つ良いところがある。
一つは、目標があること、天地(白頭山)、(この映画の中では、アリランと天地が良かった)展開が散漫ではあるが、頂上に到達できなかったことそのものは、あまり問題にはならない。目標を持つことが大事。もう一つは、帰るところがあること、ナナとシャオは、結局、家族のところか。しかし、ハオフォンは、ここでも流されているだけ。
一番困るのは、この映画の目指しているところが、はっきりしないこと。もしかすると、この映画は、どこかの国の映画を目指しているのではなかろうか。
アニメとVFXしか見るべきものはなく、「あいまいで、流されるだけで、何も起こらず、不安だけが強い」この国の映画を。
あの香港映画や中国映画の持っていたエネルギーや輝きは、一体どこへ行ってしまったのだろう。
天池見たかったなぁ
ちょっぴりチープさを感じるVFX
「カンヌ出品作品」と「チョウ・ドンユイ出演」という2点で鑑賞を決めた本作。今回もそれ以上の情報を入れずにサービスデイのヒューマントラストシネマ有楽町へ。11時45分からの回は客入りも程々といった感じ。
「生き辛さ」や「ここではない感じ」を抱えながら日々を過ごす若者たち。ある日3人(男2人と女1人)が出会い、つるんで過ごす数日の話。どこか既視感を感じながら観ていた途中、「ああ、これ、あれだ」と三宅唱監督・脚本、佐藤泰志原作の映画『きみの鳥はうたえる』を思い出しました。勿論、ストーリーは全く異なりますし、「男2人女1人」構造の映画はおそらく星の数ほどあるでしょう。とは言え、若者特有の不安定さや、やや寂れた街の様子、そして、音楽の使い方と時折に光や色とりどりの照明で幻想的に見せる画で「若者×エモ味」な印象を前面に押し出す感じ等々、作品性としてはかなりの共通点があるように思えます。これは別段、私の思い過ごしか、偶然か、はたまたオマージュかを気にしているわけでなく、そしてまた比較をしているわけでもありません。むしろ、これらの感じをよく描けているだけに、(新作として)脚本はもう一歩「思い切り」が足りないように感じられるのがやや残念。私の好みとしてはもう少し、切迫感ややるせなさを感じる展開や演出、例えば韓国映画のような意地悪さが多少あってもよかったかな、と。ただそれだと、アンソニー・チェン監督(製作、脚本)作品ではないのかもしれませんね。思い起こせば『イロイロ ぬくもりの記憶』も常に現実的で、最後は優しい映画に仕上がっていたし、たぶん、この線こそがこの監督らしさなのでしょう。
と言うことで、点数は少し辛めにつけていますが全く嫌いではありません。チョウ・ドンユイも頑張ってたし。あと、ちょいちょい挟み込まれる「ちょっぴりチープさを感じるVFX」も、何ならこの作品にはよいバランスとなっている気がします。映画が終わり下りのエレベーター後方、初老のご夫婦の奥さまがしみじみ「(雪山のアレ)、凄かったね」と仰っているのが聞こえ、またほのぼのと。こういうのもいい映画体験の一つですね。(ただ、隣に走る上りエスカレーターには、これから観る方が乗っているのでご注意下さいまし。)
冬の出会い。
友人の結婚式で延吉を訪れたハオフォンと、延吉でハズガイドをするナナと、ナナに好意を寄せるナナの友人シャオの話。
翌朝のフライト時間まで暇つぶしで参加した観光ツアーで携帯紛失のハオフォン、そのお詫びと夜の延吉へと誘ったナナと、行った先の店で待ってるシャオ…、飲み過ぎ寝坊で予約のフライト時間に間に合いそうにハオフォンに数日遊んでけよとシャオが声を掛け数日共にする3人になるが…。
延吉残ってナナの住む団地を寝床に日中はシャオの車、バイクで出掛けて締めは飲み屋で帰宅と、その酔った流れで関係を持っちゃったハオフォンとナナだったけれど、距離が縮まってエレベーターの描写とか、天池へ向かうが悪天候で引き返した際の用達とか何か残念描写だったかな個人的に。
3人でバス、車、バイクを使ってロードムービー的な作品?何て勝手に思ってたけど全然違う世界観だった。
ナナとハオフォンの寝てる姿を見て帰ろうとしたシャオに抱きつく流れのナナの心情はどういう心情?その前夜のクラブで拒んでたのに…。それぞれに苦悩する部分も見えたけどハオフォンとナナの涙の意味はちょっと分かりにくかった。
中国の延吉、北朝鮮との国境近く。 偶然出会った男女3人が、数日間を...
中国の延吉、北朝鮮との国境近く。
偶然出会った男女3人が、数日間を共に過ごす様子。
冬で極寒の景色、あたりは雪や氷だらけ、建物の彩りとの対比が。
出身も生い立ちも異なる3人、出会う前はそれぞれ頑なさがあったもの
一緒に過ごし、打ち解けてゆくうち、心も解けてゆく様子。
映画の終盤にて、静かに落涙する演者たち。
何ゆえの涙か、映像内で説明は無いですが、
察すると想像が深く膨らみます。
表情の機微、素敵な物語でした。
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私的には、日本語タイトル "国境ナイトクルージング" は軽快すぎて、釈然としません。
彼ら3名の過ごし方は、国境だけでは無く、夜だけでも無いです。
むしろ、もとの中国語や英語でのタイトル "燃冬" "The Breaking Ice" のままのほうが、納得できます。
地理的だけでなく、心理描写も伴う、意味の深さが読み取れます。
フランス語題 "Un hiver à Yanji" でも、理解できます。
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(まったく余談ですが)
あとで延吉-上海のフライトを検索したら、
今年(2024)冬季スケジュールでは、直行便は日に2往復のようでした。
都度の繫閑や便数増減は、常時ある事。
遠くて便が少ないからこその、一期一会でしたね。
観客に委ねるストーリー
全部を見せてくれる映画ではありません。観客自身が映画を見て、それから感じたものをプラスして完成する映画だと思います。なので、物足りないと思う人もいるでしょうね。
週刊文春の評価が高かったのと、知り合いの中国人に延吉出身の朝鮮族(朝鮮半島がルーツの中国人)がいるため、興味があって見てみました。
冒頭の通り、映画だけでは十分ではない部分を、見た側が感じたもので補って、ようやく完成する映画だと思います。最近、映画やドラマに、伏線回収ということを求めることがありますが、この映画で気になるシーンが、その後、伏線回収されません。気になったシーンがどういうことなのかは、観客自身で考える必要があるでしょう。なので、見た人によって、違っていることもあるでしょうね。更にしばらく経って思い返して、また違うことに気づくかも知れません。
キーワードは「氷」。映画に出てくる彼らは、いろいろな事情で、延吉の冬の気候のように、心も体も硬く固まってしまって停止していたのが、3人が知り合い、反応し合うことで徐々に溶けていき、次に進むことができるということの比喩ではないかと。
延吉とその周辺の地域、その地域に住んでいる人(朝鮮族)、長白山(白頭山)について、少し知識があった方が、状況がすんなり理解できるでしょう。通常の字幕は中国語のセリフ、< >の中の字幕は朝鮮語のセリフという区別がありますね。披露宴で歌って踊る曲は、北朝鮮で有名な歌「お会いできてうれしいです」(パンガプスムニダ)です。基本北朝鮮と繋がりのある地域ですが、昨今の韓流ドラマやK-Popの影響で、韓国に親近感がある部分が描かれているのも興味深いです。
リアルな中国だなと思ったのは、手配書がいっぱい出回っているのに、誰も気にしていないところ。逆にリアルでないと思ったのは、地方都市の青年シャオが、小綺麗でオシャレなところ。
ちなみに、朝鮮族の知り合いの話だと、彼が子供の頃、まだ改革開放以前の延吉よりも、北朝鮮の方が物資が豊富で、北朝鮮側の親戚のところへ川を渡って、気軽に遊びに行っていたそう。
エモい映像と音楽が満載だけど意味不明のシーンが散見された中国映画。 本年度ベスト級。
本作の編集作業で大事なシーンを間違えてカットしちゃったんじゃね?
って思えた感じだった(笑)
北朝鮮の国境付近にある延吉である夢を諦め観光ガイドとして働くナナ。
ナナの男友達の進学を断念して飲食店で手伝いをしながら気ままに暮らすシャオ。
友達の結婚式の翌朝、朝一の飛行機に乗り遅れた上海に住む、心を壊したハオファン(自分的に成田凌さんに似てる笑)。
この3人の男女を中心に展開するストーリー。
観光中、ハオファンがスマホを無くした事に責任を感じたナナ。
ナナが友達のシャオとハオファンを食事に誘ったりバイクでドライブをする感じ。
中国ってバイクに3人乗っても良いのか!
延吉の町並みや自然がとても美しい。
氷で作られた迷路や本屋、スケートリンク等に加えクラブの店内もインスタ映えする感じ(笑)
美しい映像の裏で流れる音楽も幻想的で素晴らしかった!
バスルームのカーテン越しでナナとハオファンが抱き合うシーンも美しく印象に残る。
後半、雪山の「天地」って場所に向かうシーン。
そこに美しい風景があると期待するものの、雪が降ってきて引き返すシーンが残念。
それにしても、あんな軽装備で雪山に行くなんて信じられない(笑)
天地がどんな場所なのか調べたら、白頭山にあるカルデラ湖らしい。
でも「大きな転換点」を指す言葉だとも知る。
ナルホドな意味だった。
自分的には3人とも生きる事に希望を持てない感じがしていたのに3人で同じ時間を過ごす間に生きる希望を見出だせた感じを受けた。
ラストでナナがある箱を開けたシーンがその象徴と解釈。
本作の主役はハオファンではなくナナだったのかもしれません( ´∀`)
どこで生きるのか
遅まきながら、中国ドラマ「千古の愛、天上の詩」でチョウ・ドンユイを...
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