「DVDが出る可能性が薄いので、是非映画館で見て欲しい」花嫁はどこへ? Jaxさんの映画レビュー(感想・評価)
DVDが出る可能性が薄いので、是非映画館で見て欲しい
フェミニズムとシスターフッドに溢れるじんわり良き映画・・・で終わって良いはずがない。
2001年が舞台ということに目眩がする。
インドって妻が夫の名前を呼ぶのもNGなのか??ヴォルデモートでもあるまいに。
インド映画「TOILET」でもインドでスマホを持っている人より家に衛生的なトイレがある人の方が少ないという事実や、同じ2001年頃を舞台にした「パッドマン」でも、生理用品が手に入らないために修学や就労を制限され、生理中は外出さえままならず非衛生的なぼろ布を使ってる女性が多いことに目眩がしたが、結婚においてもその価値観はまだ21世紀と思えない有様のようだ。
もっとも、夫婦別姓がいまだに選択できず、未成年をレイプしようとした元ジャニーズの性犯罪者などが堂々と復帰し、首相の自伝本を書いたジャーナリストがレイプをしてなお捕まらず、ジェンダーギャップ指数146か国中118位(2024年現在)の日本が言える立場ではないが。
話すとプールがおそらくまだ10代の幼い花嫁であることがわかる。貴重品も夫に預けたあれっぽち。おそらく持参金も少ないのであろう。料理などの花嫁修業はしっかりさせられたようだが、夫の村の名前すらろくに把握していないとは。実家でもすべて夫に任せておけば良い、と言われて育ったのだろう。駅で迷って自我もなく寄る辺なくあたふたする様は花嫁と言うよりまだ子供だ。
まず、嫁ぎ先の村の名前くらいちゃんと覚えておけというのはマンジュおばさんの言うとおりである。
夫に言われてランニングを辞め何が好きかもわからなくなった・・・という話が最近Twitter(X)でバズっていたが、本編でもレストランとコラボメニューになっていたレンコンのサブジをジャヤに褒められて、「夫も息子も食べないので好きな料理を作らなくなった」という母親が「なら自分のために作ればいい」とジャヤに言われて「女の好みで料理を?」とありえないとばかりに姑と笑った後で「でももう自分の好みがわからない」とぼそりと呟く様がなんともつらい。女が料理を作るのは夫や息子など男の為で、自分の好みも反映させられないということ。
インドでなくても日本の既婚女性もよく言うことだ。夫が嫌いだから作れないとか子が食べないから作らないとか。幼い子供相手ならまだしも、アレルギーで食べられないとかじゃない限り(よほど栄養に偏りがあるのでない限り)日々の料理なんて作る人の好みで作ればいい。文句があるなら自分で作れ、である。
日本の女性は自立以前にまず自分の好みの料理を作るところから自我を取り戻さなくてはいけないのか。道は遠い。
マンジュおばさんの名台詞「女は育児も出産も農業もできる。それに気づいたら一人で生きていけるので、男は気づかせないままにしておきたい。(男が結婚できなくなるから)」と言う台詞が身に染みる。「結婚できない」ことが女にとってスティグマになる社会はクソ男に都合が良いからだ。
夫がジャヤを殴るのも止めないなんてひどい警官かと思ったら目の前でDVを目撃したという事実を作るためだったのか・・・DV夫と離れられるのは幸いだが前妻の死が自己なのか殺人による焼死なのか曖昧なままなのはいかがなものか。サティ(寡婦殉死)は法律で禁止されているものの、現在でもインド各地で行われているという。それどころか子供が産めないから殺されるなんて女性の地位は奴隷や産む機械以下である。
ジャヤは一度クソDV夫と法律婚をしているわけで、夫と正式に縁を切ることは出来るのだろうか。そのあたりも気になってしまう。
プールが初めて自分で仕事をして報酬を得るときの目の輝きがまぶしい。「結婚してもどんなささやかでもいいから仕事をしていきたい」と語る彼女の意思をどうか尊重できる夫ディーパクであって欲しい。
配給によれば、どうやら円盤が出る可能性が薄いらしいので、是非まだ上映しているうちに映画館で見て欲しいところ。