劇場公開日 2024年10月4日

「インドの社会問題を描きながらも、ユーモアと暖かみが際立つ一作」花嫁はどこへ? yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5インドの社会問題を描きながらも、ユーモアと暖かみが際立つ一作

2024年11月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

新婚後の帰省中に妻と間違えて別の女性を連れ帰ってしまう……というなかなか考えにくい状況から始まる本作。人前では顔を隠さなければならない、という決まりを皮肉るコメディーなのかと思ったら、起きてしまった状況に対処する人々の奮闘ぶり、そして主人公のプール(ニターンシー・ゴーエル)と入れ替わってしまったジャヤ(プラティバー・ランター)の謎めいた行動に目が離せないドラマでした。

本作は登場時に観客が抱くであろう個々のキャラクター像を良い意味で裏切り続ける点でも巧みで、素朴な男女、プールとディーパク(スパルシュ・シュリーワースタウ)を中心に描いているにもかかわらず、かなり「油断のならない」映画でした。

中でもマノハル警部補を演じたラビ・キシャンの小憎らしさが印象的でしたが、なんといっても注目に値するのはジャヤを演じたランターで、見方によってはジャヤはインドにおける女性の人権の不条理な側面を体現しているキャラクターであるにも関わらず、ある時には良からぬ企みを巡らしているようにも見え、ある時には深い知性と思いやりの感情を発露させるなど、多様な側面を見事に演じ切っています。

これだけの演技力なのに、映画初主演とは驚きました。ある意味ジャヤのつかみどころのなさが、本作の「謎」に強い説得力を与え、それが物語全体の駆動力となっているように感じました。

暖かくて笑えてハラハラするのに「油断ならない」映画とはどういうことなのか、未見の方にはぜひ直接体験していただきたいです!

yui