「心底、間に合ってよかった」花嫁はどこへ? TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
心底、間に合ってよかった
今週公開の作品がいずれも(個人的な印象として)微妙なラインナップ。それならと、見逃している作品から高い評判を聞くこちらの作品を、行きやすい劇場で都合のいい時間帯の条件にあった本日日曜の午前中、ヒューマントラストシネマ有楽町にて会員割引で鑑賞です。公開4週目ですがまぁまぁな客入りで、確かに評判の高さがうかがえます。
インド映画は久々な私。嫌いなわけではありませんが、無意識にどれを観るかの選考から外しがちなのは確かで、この作品についても今週、数週遅れで聴いたラジオのポッドキャストで町山さんが取り上げていたことで気づき、その数日後に今度は宇多丸さんが、ラジオのコーナーの課題作品候補の一つであった本作を「宇垣さんが良いと言っていた」と紹介しているのを聴いて、ようやく調べて今日の鑑賞に至りました。
で、観終わっての感想は「心底、間に合ってよかった」。終盤はもう泣くのを堪えるので必死なほど感情を揺さぶられました。実にシンプルな展開で大枠では「こうなるのだろう」と判るのですが、見せ方はしっかり不安さや怪しさを感じさせてくれるため全く飽きないどころか、その丁寧な描き方に感嘆します。
古くからの慣習や既成概念の内にある「差別的」で「時代遅れ」な考え方を、単に「悪」として扱いそれに反発するのではなく、どの立場にも納得の合理性で「この方が良いよね」とポジティブに浸透させていきます。その結果、始めは知らない者同士で訝しがって見ていても、いつしか笑い合い、更には打ち解け合えるる間柄となっていて、観ている側にもその幸福感が伝わってきます。勿論、その要因はジャシャ(プラティバー・ランター)とプール(ニターンシー・ゴーエル)という「とあるきっかけ」で入れ替わった二人の花嫁、いやさ「女性」たち。育ちも性格も異なる二人ですが、女性ならではの「高いコミュニケーション能力」で相手の信頼を得、居場所を得るばかりか、周りにどんどんといい影響を与えていきます。一方、どうしても「システム」の中で考え、生きてしまいがちな男性陣。女性の言い分など聞く機会すら作ろうとせず、時に無言のうちに存在すら否定することも。この点、程度の違いこそあれ決してインドと言う「お国柄」の話ではなく、我々も気を付けていかなければなりません。感動してるだけじゃいけませんな。
いやはや、本当に素敵な作品でした。間に合わなかった方は配信でも悪くはありません。でも、もし間に合うようなら是非劇場で。絶対観て損はありませんよ。