ボビーのレビュー・感想・評価
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ボビーのミッションとエミリオ・エステベスの言いたいことは同じ
まず脚本に唸った。 この脚本のアイデアはどう思い付いたんだ? アーカイブのボビーを使って1968年のボビー・ケネディが暗殺される時間の前をハリウッドの有名俳優をモザイクのように組み入れて描いた映画。この日にボビーが暗殺されなかったら、このような映画にはならなかったし、ボビーほど人種、貧富の差、老若を問わず人間一人一人に近づいていった公民権運動家はいなかった。だから、アンバサダーホテルいた一人ひとりのそれぞれの1日の行動や生き方を尊重し、大切にしてこの作品を作っている。これがきっとボビーのメッセージだと思うから。それに、こんな有名な俳優陣も誰一人主人公という形で浮き彫りになっていず、皆が特別にではなく平等に出演する扱いをされているように見える。ボビーのミッションをこの映画の脚本にとりいれたと思う。すごい手腕!!
しかし、ボビーの思想は女性の立場や地位は男と同じだと考えていなかったと思う。当時の女性は、クレジットカードも持てなかった格差社会だったからね。ヘアーサロンのミリアム(シャーロンストーン)は夫、ポール(ウィリアム・ホール・メイシー)の浮気に正面から向かい合える強さを見せるが、それとは逆で夫はボビーに投票しろとか条例はどれにハイというかイイエというかまで、妻が聞きもしないのに指図するなんて。リベラルだという夫だが、男の女に対する当時の意識の低さを示したと思う。これだけリベラルな男でも、妻の存在は自分のコントロールできるものだと思っていたんだね。映画の中で全てのキャストの役割が当時を反映していると思わせるのがとてもユニークで好き。ハリウッドの容姿・服装・態度などの、人の見かけ上のようすを気にする、サマンサ(ヘレン・ハント)。ドレスに合わせる黒い靴を忘れたからに始まって、自分はJFKの伴侶、ジャッキーに似ているか、それともボビーの伴侶、 エセルに似ているかと自分の夫に聞くシーンは自分に自信がなく人間の 虚飾に囚われた悲しい性をみた。その後の夫、ジャック(マーティン・シーン)の言葉に私も救われた。『サマンサはサマンサ、誰もあなたに変わるものはいない』。圧巻!
調べてみてないが、ボビーの思想に男女平等の使命がなかったのでは? カトリック教だから? それを、映画の中で時代背景を入れて、男と女が平等に扱われていないところをうまく捉えているのがエミリオ・エステベス監督。それに老いに対するネガティヴな思考も。さすが!
ロサンジェルスのアンバセダーホテルの一従業員や(ラテン系・黒人などのコック、著名人に挨拶をし、この歴史的なホテルを退職したドアーマンなど)、ボビーへの投票を市民に促す学生ボランティア、兵役を逃れようと偽装結婚するカップルなど激動社会に生きてる人々。それに当時のヘアースタイル、服、靴、音楽(ムーディーブルースのTuesday Afternoon など)、LSD 。それぞれが時代背景になり醍醐味のある映画にしている。
ホセ(フレディ・ロドリゲス)とエドワード(ローレンス・フィッシュバーン)の職場での会話はいいねえ。エドワードは白人の上司とどう付き合っていくかを知っているがミゲル(ジェイコブ・バルガス)は?ホセは父親と行くはずだったドジャースの入場券をエドワードにあげる。このホテルの台所での会話、黒人、ラテン系、白人の立ち位置がストレートに出ているが、現代は「政治的妥当性」(PC)お陰(せい)で本音で戦わない社会にかわっていっている。
ボビーのアーカイブが大好き。ボビーが小学生の前で話しているのを初めてみた。当時は公害、環境問題が将来の問題になるという難しいことを小学生の前で言ってるのかと不思議に思ったが、当時はもっと学習能力が高かったのかもしれない。この小学生は今考えても、光栄なことだなあ。
1968年、公民権運動が通っても、有色人種への差別、有色人種に対する参政権の登録の不公平さ、ベトコンの巻き返しによりベトナム戦争の泥沼化、ジョンソン大統領の次期大統領戦拒否、兄ジャックやキング牧師の死など。そして、ボビーに期待感が集まっているところだった。そして、民主党の予備選で、勝ち抜いていたボビーだった。カルフォルニアでは52対38でマッカーシーに勝っていて、(その前のオレゴンでは失った)祝勝会のスピーチの後、ホセ(フレディ・ロドリゲス)たちのいる台所にあいさつに立ち寄って握手をしている時に、銃で撃たれた。台所ではホセが首を押さえ、介抱する。次期大統領だとされていたロビーは1968年6月6日に他界。 傷ついた周りの人々は全員助かったと最後に書いてあった。
現在このホテルは取り壊され、ロバートケネディーコミュニティー・スクール(RFK Comminity School)になっている。セザールチャベスとボビーの壁画があるので見てみたい。
一つ疑問があった。『なぜ、チェコスロバキアからのジャーナリストレンカ(Svetlana Metkina)が、ボビーにインタビューしたいのか? なぜ、チェコスロバキアがここでと思ったが、あとで調べたから、解決した。当時、チェコスロバキは政府はセンサーシップを禁止して、プラハの春のフリーダムを強調していた。ソビエトの共産主義に怒りを表していた時期だったそうだ。だから、ジャーナリスムはもっとボビーに近づいているところをソビエトに見せたかったんだな?? この時期の共産党に対する脅威は大変なものだったからなあ。
あと、この映画の最後のボビーのスピーチを探してみてもう一度聞いて理解したい。
脚本も監督もエミリオ・エステベスだとわかったとき益々唸った。この脚本を図書館で何年もかけて調べて書いたと聞いた。彼の星の旅人たち(The Way)という映画もパブリック 図書館の奇跡(The Public)という映画も(私は両方コメントを書いた)私の心を虜にした。芸能一家で芸能界で特別待遇も多いだろうが、脚本は才能にアイデアである。この脚本のため、ロスの図書館に通いつめたと彼は言った。そしてそれがThe Public という図書館の脚本にも結びついたって。
1968年6月5日のアメリカ、ロスアンゼルス
あの事件が起きなければ、何のことはない普通の一日だったはず。
ある人は戦争を忌避する目的で結婚式を挙げ、ある人は急な仕事で大事な野球の試合に行けず、ある人は言動でマネージャーの仕事をクビになり、ある人は浮気がバレて…。
各人にとっては人生のうちで数度しかない日だったかもしれない日が、たまたま同じ場所に居合わせた人びとが突然天地がひっくり返るような事件を共有することになる。
68年はベトナム戦争が泥沼化し、若者は戦争と政府を批判。いったんは融和に向かうかにみえた人種間の分断は再び深まろうとしていた時期。
米国が第二次大戦後に訪れたもっとも大きな国家の危機を救える人物として期待されていた矢先の悲劇。
63年11月22日にJFKが暗殺され、65年2月21日にMalcolm X 、68年4月4日にMartin Luther King, Jrと立て続けに要人が暗殺され、国内の市民の分断が鮮明になった60年代のアメリカ。
約50年前にRFKが解決しようとしていたことが、今のアメリカにおいて全く解決できていないことにあらためて驚かされる。
よくある群像劇と思いきや、登場人物はケネディ弟の暗殺に居合わせた人...
よくある群像劇と思いきや、登場人物はケネディ弟の暗殺に居合わせた人たち。巻き込まれて被害者となった人もいる。
こういう形で暴力を描いた作品てないのかなーと思ってたらあったよ。しかもうまい。そしてキャスト豪華だな!ホプキンスがプロデューサーだから?
よくある群像劇と思いきや、登場人物はケネディ弟の暗殺に居合わせた人...
よくある群像劇と思いきや、登場人物はケネディ弟の暗殺に居合わせた人たち。巻き込まれて被害者となった人もいる。
こういう形で暴力を描いた作品てないのかなーと思ってたらあったよ。しかもうまい。そしてキャスト豪華だな!ホプキンスがプロデューサーだから?
リアルな人々を通じてアメリカの歴史、希望と現実を感じる
ただの歴史ものではなかったです。
その時、にむかう普通の人々の物語です。
背景として、ベトナム、ドラッグといった当時のアメリカ、そして、ボビーへの期待が描かれています。
そして、何かをなくしてしまった悩める国に、それを憂う人々に心をうたれました。
キャストすごいとか抜きに、いい映画だと思います。
この映画は、現在に対しての重大なメッセージ。
1968年6月5日。民主党の大統領候補ロバート・F・ケネディ(RFK)が、カリフォルニア州予備選挙の勝利直後に暗殺されたその日に、様々な理由から暗殺現場となったアンバサダー・ホテルに集っていた、様々な人々のその日を描いた映画です。RFK暗殺は実際の出来事ですが、この映画自体は完全なフィクションです。長期化するベトナム戦争で漂う厭戦ムード。若者に蔓延するマリワナやLSD。激化する公民権運動。そんな1960年代の時代背景が、上手に映されています。そう言う時代背景を知っていたほうが、この映画をより理解できます。
この映画は『ボビー』と言うタイトルですが、当のボビー(RFK)本人は、一応、背面からのショットやぼやけたシルエットで表現されていますが、当時のニュース映像以外は実際には出てきません。その意味では、この映画の主役は”アンバサダー・ホテルとそこに集う人達”なのかもしれません。ちなみに、RFK暗殺の現場となったアンバサダー・ホテルは、2005年に取り壊され、現在は存在しません。その取り壊しの最中に、一週間だけこの映画の撮影を許され、ロビーなどが資料映像として撮影されました。
豪華な俳優が多数出演していますが、様々な人々のごく普通のある一日を描いているので、特に特筆すべき演技と言うのは目に付きません。もっとも、そう言う、ごく普通の日常と言う演技が難しいのかもしれませんが。あ、でも、シャロン・ストーンが、ああいう格好をすると、ちょっと彼女とは気が付きませんでした。
何故今のこの時期にRFKなのかと考えてみましたが、物語終盤のRFKの演説のシーンでそれがわかったような気がします。RFKの演説の”ベトナム戦争”と言う言葉を、”イラクでの戦い”と置き換えると、まさに、今のことを言っているのではないでしょうか。終わりの見えないイラクでの戦いが、当時のベトナム戦争と重なっているのは間違いありません。その他も、広がる経済格差や環境問題、これらはまさに、当時と今に共通する課題です。多分それが、この映画に込められたメッセージだったのではないでしょうか。奇しくも、今年は来年の大統領選挙に向けての予備選挙の年。その意味では、絶好のタイミングでの公開でしょうね。
物語のほぼ最後に、RFK暗殺のシーンが出てくるわけですが、何故だか意味も無く泣けてきましたね。なんか、希望の光が打ち砕かれたような気がしてしまいました。映画を見た現代の日本人の私がそう思うのですから、実際に当時のアメリカ人が受けた衝撃と言うのは、如何程のものだったのでしょうか? 決して楽しい劇映画と言うわけではありません。しかし、温故知新。この映画を見ると、過去から学べることは沢山あるような気がします。
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