ロングレッグスのレビュー・感想・評価
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ハッタリ上等!ジャンルシフトもありがとう。そして後ろのおばちゃん、ありがとう!
毎年1、2本くらいホラーを映画館で観るようになっている。もちろんそれなりに選んでいくわけだが、大体いい気分で家路につくことになる。去年2024年でいうと、「オーメン ザ・ファースト」、「悪魔と夜ふかし」が大当たりで、ちょっとガッカリは「エクソシスト 信じる者」ぐらいで、これだって、お祭り気分で行ったようなもので、それなりに楽しませてくれた。
第一、凡百の、配信ホラーなんか観るくらいなら、どんな結果だろうが、自己責任で映画館で観るのは、大人として、映画ファンとして当たり前の心構え。そもそも思ったとの違ってたのは、自己責任以前に、それを楽しまないでどうするの、という話。そしてホラー映画とはまさしく、映画館で観てなんぼ、のジャンルとも思っている。おおよそはレイトショーで、何を考えているか良くわからないような客層(もちろん、オレが筆頭)を背後に、最高のシチュエーション。
で、この10年にいちばん怖い映画、っていうじゃない。いいじゃない、ハッタリ上等!ホラー映画なんて、そもそもハッタリを楽しむもの、だまされに行くようなもんだしね。
あしながおじさん
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児童小説、というくくりらしいのだが、ちゃんと読んでないまま、オレはおっさんになってしまったわけだが、今あらすじを読むと、相当気持ち悪い話だな、と思ってはいたが、まあ、本作、そのまんまだった。
ロングレッグス
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オープニングから、まあ、よくある手法だが、荒いフィルム風の画角に、巧みに写さない、あいつの顔。白い家とホラーでおなじみ、赤と黒のタイトルバック。
劇中ポスターが貼ってあったが、白と黒と赤で構成されたT-REXの「The Slider」のジャケットこそ、本作を象徴している。あいつの白塗りの、不細工を人形技師らしく、自身でいじくって失敗したかのようで、どこか中性的な顔。ジャケットの顔がボケているのも、序盤ニコラスの顔を写さないところとつながってそうだ。
ニコラスは、自身の母親の精神疾患時の姿を参考にしたというが、中性的な部分まで演技に取り込んだとすると、相当ヤバい役者魂。そしてニコラス自身、本作の最も恐ろしいテーマを自身で体現しているということになる。
映像はとても凝っており、どこかで見たことのあるは、ここでは誉め言葉。だってどこから、ってキューブリックやフィンチャーを想起させるのであれば、十分でしょ!
問題の、皆さんのお怒りの、「羊たちの沈黙」、「セブン」設定、雰囲気からの、シフトチェンジは、オレには特に違和感はなかった。最初の半エスパーな設定は、ちょっと説明が足らないのだけれども、「繋がっていた」からであり、「半」なのは、「記憶」がないためと思われる。ここがちょっと弱くって、暗号解読のエピソードがグダグダになって、皆さんがブーブーいうのもわからなくはない。まあ、正直暗号文字や逆三角形は雰囲気だけだよね。
作中の母親が、恐ろしい局面にあって、やむを得ずエライことをしでかすことになるが、無償の愛ゆえ。そしていつしか「憑りつかれてしまった」その母親を殺す主人公。ニコラスに至っては、シリアルキラーの演技の参考に母親の一番「つらい」姿を採用する。
作中も、そしてニコラスも「母親を自身で葬る」、「ホラー映画という、低俗なものに母親を捧げる」という、悪魔にしてみれば、イェッスな狂っている映画なのだ。
そういう意味では、いささか本作はキレイに仕立てられ過ぎているかもしれない。「うますぎて怖くない」というのが、正しい感想か。
終盤の、母親がちょこんとソファーに座っている姿が、「エクソシスト3」の看護師ばばあを想起させて、わくわくしたのだが、ちょっとラストが弱くって、「イット・フォローズ」で「伝染する」(でキャスティングされたとしか思えない)マイカ・モンローが、「伝染」したのか、してないのか。がポイントになるのに、「続編ちらつかせ」に見えてしまっているため、気持ちよく帰ってもらうホラーの持ち味(後味とかいう意味ではない)を損ねている。
追記
映画館でホラーを観る楽しみの大きな一つにジャンプスケアがある。ジャンプスケアで驚かす、怖がらせるホラーを否定する気には到底なれない。だって映画館でしか楽しめないし、なんなら、オレを含め、誰かがビクっとしたら、楽しいよ。
今回のも、ショットガンを持つ母親が忍び寄るところで、客席の後ろのおばちゃんが「後ろ!」ってマジで声を上げていた。うれしいねえ!ありがとう、おばちゃん!
何かが噛み合わない不安が恐怖へと変わる映画
まず率直な感想が「そっちだったのか」
これは私があらすじを見た段階で勝手にシリアルキラー物のホラー映画だと思い込んだ為に起きた衝撃。
本当に勝手にドラマの「クリミナルマインド」の様なFBI捜査官のプロファイリングが絡むストーリーなのだと思い込んでいた為に序盤から「もしかして何か違う…?」と言う疑問が頭の片隅にこびり付いていた。
ではこの映画は期待外れだったのかと言われればそれは違う。
導入部分から不安を掻き立てるカメラワークや、居心地の悪さを感じさせる音響。
サブリミナルのように挟み込まれる映像も不穏な空気を作り出していく。
「何かが噛み合わない不安」
捜査は進んでいるのに、容疑者は拘束したのに何かがおかしい。何も掴めていない気がする。
ロングレッグスが取り調べの最中に自殺してから、物語は坂道を転がるように加速していく。
主人公リーの母親であるルースが「ここには誰もこない、親戚も悪い狼も」と口にしていたが、そこから察するにこの親子は何かしらの訳があって二人で暮らしているのだろう。
ホラー映画においては「親子愛」と言った物が軸として存在している事が多い。
そしてそれは母親から子供へ対しての愛情が多く見られる。
彼女達は愛する子供の為に自ら犠牲になり、身を傷付け、そして悪魔に魂を売る事すら躊躇わない。
「あなたを生かす為なら何でもやる、何度でもやる」と言うルース。血塗れの彼女はまるでマリア像のような美しさと神々しさすらあった。
悪魔は歓迎されないところには決して出向かないと言うキリスト教の言い伝えがあるが、その歓迎の証として人形を受け入れる事なのだろう。
個人的にはいきなりあんな人形をもらったら泣く気がするが、ルースを招き入れ箱を受け取った時点で悪魔に魅入られているのだろうか。
本作で印象に残ったセリフの一つに「生きる事を許されたから大人になれた」と言う物がある。
私達も皆それぞれ、誰かに生きる事を許されているのかも知れない。
誰かを犠牲にしながら。
余談だが「ロングレッグス」と言うのは犯人の殺害方法から取ったニックネームに違いない!と思っていた。
足の関節を外して伸ばした状態で見付かった…的な。
タイトルなし(ネタバレ)
二十年以上続く一家皆殺し事件を追うことになった、FBIの新人女性捜査官リー・ハーカー(マイカ・モンロー)。
彼女は妙に勘が冴え、他の事件では犯人の居場所を特定した。
が、その事件では、それが裏目に出て、相棒を犯人に殺されてしまう。
今回追う未解決事件は、一家の誰かが家族を皆殺しにしているのは明かなのだが、現場に「ロングレッグス」の名の下に暗号が常に残されていることから、連続事件に位置付けられているのだった・・・
といった物語。
全編不穏な雰囲気漂う描写は悪くないが、怖いかと問われると「むむむ」という感じ。
スタンダード画面とシネスコ画面を切り替えて、時制的に混乱もなく論理的に進むが、主人公の過去の因縁や最終的にそっちの方向へ行っちゃうのね、という欧米の宗教的怖さは、やはりいまひとつピンとこない。
黒沢清『CURE』やアガサ・クリスティ『カーテン』のようなタイプに犯人は設定されているが、最後の黒幕はやはり・・・
タイトルロールの「ロングレッグス」は、いわゆる使徒的な存在。
さらに「愛」を利用されて、邪悪なことに手を染める・・・というこのあたりの設定、かなり興味深い
が、「階下の男(ザ・マン・ダウンステア)」がやはりピンと来ない。
人形に仕込まれた丸い珠、意味はわかるが、仕組みがわからん・・・といったあたりも、「ホラーにもロジカルな謎解きが必要」な『リング』以降のホラーに慣れた目には腑に落ちない(つまり、日本の観客には受けが悪い)と思われます。
ロングレッグスを演じるニコラス・ケイジ、出番は少ないながらも怪演。
そこまでは
期待してたのとは、ちょっと違って悪魔ものでした。
羊たちの沈黙のような緊張感と、不気味な怖さが前半はあって、後半犯人がわかってからが長すぎた感じ。説明がつかないところに怖さがあると思うので、そこが残念
なぜ、こんなに上映館が多いの?って思ってしまう作品
ニコラス・ケイジが出ているのと、あらすじを見て少し期待して見に行く事に。
冒頭から観客をびっくりさせるようなカメラアングルと音楽。
白い顔の変質者。
最初はニコラス・ケイジと気づかず。。
というか最後まで確信は持てなかったけど、それらしい人が出てこなかった。
ストーリーを期待していたんだけど、この時嫌な予感がした。
この予感は当たってしまう。。
オカルト要素が強くて、謎が謎のまま終わってしまう。
ラストで、主人公?の女性と犯人の繋がりは分かるのだけど、結局、犯人は謎の存在のまま。
事件が起きる共通点が描写されるが、理由は分からないまま。
ニコラス・ケイジ演じるロングレッグスの存在感のみで成り立たせた映画です。
もしかして、ロングレッグスってアメリカではみんな知ってる恐怖のキャラクターなのかな?
日本でいう、口裂け女とか貞子とかみたいな。
Tレックスのゲット・イット・オンがエンディングで流れて歌詞が字幕で出ていたんだけど、結構下品なのね。
でも、映画の雰囲気とマッチしてた。
この内容で、なぜ大手のイオンシネマで公開しているんだろうという疑問を強く感じた。
(movixでもやってた。。)
情報量が多すぎだよぉ、、、
冒頭のくだりから、女性捜査官のワケありそうな演技、特殊能力?それから連続殺人と謎の暗号メッセージ。シリアルキラーかと思ったら、なに?マインドコントロール?悪魔?心霊?呪い?そして、
ニコラスケイジのキレッキレな演技
もう、どこに集中したらよいのかっていうね。始まりは結構おもろい!四角い画面も中々だしね。最初と最後の曲も急にロックな感じでいいアンバランスさだね。
いわゆる「悪趣味系」ってやつなのかな?「マーダーライドショー」みたいな?もしかしたら少し影響あるかも。後半母親が顔真っ赤にするシーンなんかは、「キャリー」思い出したけどね。
ただ、展開読めちゃうとこもあってさ。最初の相棒とか上司の家庭とか。わかるよねぇ。
逆に動機とか真犯人?とか?なんで14日にこだわるの?とか事件に関するところはわからないことばかり。まあ、ここら辺のバランスは、まさに、
ザ・B級
って感じだね。今回のニコラス刑事は、「ドリームシナリオ」より好きだなあ。ああいうぶっ飛んだ役をやり切ってくれるのがニコラスさんだよね。
パンフ、買いました。結構伝説になるような気がしたんで。でも★5はつけない。つけてもいいんだけどね。B級に満点は逆に失礼!というスタンスなんです。
2025年劇場鑑賞14作品目
『この10年で いちばん怖い映画』に惹かれて観ました
えっ!ジョーカー?
白塗り男を見て、そう思いました。いきなり、ビックリさせられて期待したのですが、サタンがどうとか言われても、サタンが身近な存在ではないので怖くありません。あとで、白塗り男がニコラス・ケイジと知りビックリ。監督がアンソニー・パーキンスの息子と知り更にビックリです。そんな、ビックリ映画でした。
あなたにも潜んでいる?
文化や宗教観などムズカシイことは無しにして。
大事にしているものを守る為にあなたは悪にでもなれる?誰にでもある悪魔を極端に連続殺人鬼とリンクさせてややこしく観せている感じかな?
主人公の感覚が伝わりにくいのが難点かな。
でもキチンとドキドキするしなかなかの見応えある作品でした。
サタンの啓示。
超能力刑事、掲示されたメッセージを元にサクッとケイジに辿り着く。
真実を知ったが最後、上司のひとり娘の慶事は世界一凄惨な親離れで幕を閉じる…
「何故そうなったのか」という疑問は、基本スピリチュアルで説明していく方向性なもんで、割とトントン拍子に話は進むしオチも単純明快だ。
テーマはシンプルに信仰、洗脳、支配といったところであろう。
誇大広告に釣られ劇場に足を運んだ私もまた、何者かに導かれ、手の平の上で転がされているのだ。
選んでいるようで、選ばされている。
怖いツボがハズレてる
ホラーとミステリー・サスペンスを観るぞ!と意気込んで行ったのだが、何だか怖いツボがハズレてる感じで空振りして帰った気分。
伏線が張られてたけど、回収されたのは母親が電話に出るまで時間がかかった理由くらい。ロングレッグスの犯罪に手を下してるのがその母親で、最後は管理職捜査官の家庭が犠牲になるオチ。
最初の先輩捜査官がなぜ撃たれたのか、なぜ農家の倉庫の2階に人形を置いたのか、自宅にロングレッグスが来たことをなぜ報告しないのか、そして銀色の玉の正体は?これらが繋がらないので、“こわーぃ”とはならないんだ。
音が一番怖い
怖い音で雰囲気を作り、ジャンプスケアたっぷりのホラー寄りのスリルだった。直接的にグロい場面があまりなかったのは幸いだった。
普段あまりこういうスピリチュアル系の話は観ないので、結末を正直どう解釈すればいいのかよく分からなかった。また、「ロングレッグ」という名前の由来、娘が母親に電話をかけるたびに「あなたのただ一人の娘だよ」と返答する理由、ロングレッグの手紙にどんな意味があるのか、冒頭でリーとFBIの2人が車の中で会話するシーンの意図など、さまざまな謎が残ったまま終わった。お娘たちの誕生日にこだわる理由もよく分からない。おそらく考察が必要な作品なのだろうが、そこまで考察したいほど面白い話でもない気がする。
個人的には、ロングレッグがずっとリーの実家の地下に住んでいたという事実が、一番衝撃的だった。それは良い伏線が張られていたと思う。
そしてニコラス・ケイジ!ごめん、化粧と演技がよすぎて、全然ニコラス・ケイジだと認識できなかった!
いいんだけどやっぱダメ
『ヘレデタリー』もそうだったけど、
恐怖の根底がアチラの宗教観で
「ぜんぶ悪魔のせいだったのです!」と言われると
「はあそうですか」で終わってしまう。
もうこれは作品の良し悪しではなく仕方ないのだけど。
頭のおかしい、話の通じない人間相手に怖がりたいのだなあと。
ニコケイの怪演はよかったし、
タイトルロールまでの雰囲気や勢いなど最高だったけど。
向こうの人がアジア的な怨霊怨念相手でも
同じように感じるのかなあ。
誕生日まで開けるな
こないだ鑑賞してきました🎬
FBI捜査官リー・ハーカーが、いわく付きの複数の未解決事件を追うストーリー。
リーを演じるのはマイカ・モンロー🙂
この人は凄い美人さんなのですが、今作では第六感が異様に働くという能力もち。
そのせいか他人との交流を避ける一面も🤔
事件の核心に迫る終盤では、信じがたい事実に直面します。
能力もちの女性を繊細に演じたモンロー女史、今回も光ってました😀
事件の首謀者とも言えるロングレッグスにはニコラス・ケイジ🙂
わりと早い段階で素顔が微妙に映りますが、私はそんなに驚かなかったかな。
スクリーン越しだからか😅
マイカ・モンローは取調室でロングレッグスに扮した彼を見た時、心臓が高鳴るくらいでは済まない衝撃を受けたそうです。
正直、劇中で語られるほどのインパクトは感じませんでしたが、ヌメッとした喋り方は気味悪さ全開でしたね。
ロングレッグスがどうやって他人を操ったかの種明かしは、個人的には不完全燃焼な印象。
時折リーの脳裏によぎる映像も、すべては明かされず。
面白くない訳では無いんですが、悩めるマイカ・モンローとサイコケイジを観るための1本でしたね🎬
日本では賛否両論の問題作。その理由は…?
【イントロダクション】
1990年代を舞台に、オレゴン州で起きた複数の殺人事件に関わる犯人を女性FBI捜査官が追う。事件を追うFBI捜査官リー・ハーカーをマイカ・モンローが、事件の犯人“ロングレッグス”をニコラス・ケイジが演じる。監督・脚本はオズ・パーキンス(オズグッド・パーキンス)。
アメリカでは《過去10年全米最高興収ホラー映画》と評され、《(独立系作品として)過去10年全米最高興収ホラー映画》としてスマッシュヒットを記録。
【ストーリー】
1974年、とある白い家に住む幼い少女は、庭に停車された謎の車を確認しに外に出る。ポラロイドカメラを持った少女の前に、白塗り化粧をした不気味な男が現れる。
時は経ち、1990年代(恐らく1994年)。FBI捜査官リー・ハーカーは、とある凶悪犯の確保に乗り出す。リーは持ち前の霊感によって、事前に知らされていた情報とは異なる場所に潜伏していた犯人の居場所を突き止め確保する。
リーのスピリチュアルな能力に疑問を抱きつつ、上司であるカーターは、彼女をオレゴン州で起きた未解決連続殺人事件“ロングレッグス”の捜査官に任命する。
事件に共通するのは、父親が家族を惨殺した後に自殺を図ること。現場には謎の記号を用いた文章が残され、最後に必ず“LONGLEGS(ロングレッグス)”と記されていることだった。
捜査を進める中で、リーは惨殺された家族には、必ず14日が誕生日の9歳の娘が居たことを突き止める。
やがて、一連の事件の裏に隠された犯人の狙いに辿り着いた時、リーの過去に纏わる衝撃の真実が明かされる。
【賛否両論の問題作⁉︎】
オズ・パーキンス監督の、過去の名作群や巨匠に対する敬意と愛情が感じられる点には好感が持てる。また、ジャンルミックス具合の上手さも相まって、かなり楽しめた。賛否で言うならば、明確に“賛”側である。
しかし、日本ではXをはじめ、ここFilmarksでも賛否両論の様子な本作。何故、本作が賛否両論になるのか?理由は、大きく分けて2つあると思う。
1つ目の理由は、“本作にどのような要素を求めるか?”だ。
私は、事前にXで試写会組の反応を目にしていたのだが、概ね一致していたのは、{本作は「ホラー」というより「サスペンス」。また、「オカルト」の要素も含んでいる為、純粋な「サスペンス」を期待しても肩透かしを食らう}というものだった。なので、私は事前に本作がどちらかと言えば「サスペンス」調の作品である点や、「オカルト」の要素も含む作品である点を留意して鑑賞に臨んだ。
実際に鑑賞してみると、なるほど、確かに本作は様々な要素を兼ね備えた作品であり、観る人によってジャンル定義が異なるだろうなと言える。
私としては、本作を強いてジャンル分けするならば、「ホラー・サスペンス」と定義したい。
というのも、本作を過去の名作タイトルを挙げ連ねて表現するならば、『セブン』(1995)と『羊たちの沈黙』(1990)に、『シャイニング』(1980)と『ヘレディタリー/継承』(2018)を足した印象だからだ。そこに、キューブリックの『時計じかけのオレンジ』(1971)を彷彿とさせる赤い画面や、彼が好んだ左右対称の画面構成(厳密に言えば、本作は人物を画面中央に配置して捉える事による、左右対称“風”の絵作り)によって構成されている。
早い話、複数のジャンルに跨った作品であるのだ。
本作に「ホラー」を求めた人は、恐らく本国での評判にある《この10年でいちばん怖い映画》という部分から、ホラー映画としての期待を膨らませた人だろう。また、独立系作品として《過去10年全米最高興収ホラー映画》という謳い文句が、本作のジャンルをホラーとして大雑把に定義してしまった弊害もあると思う。
なので、そうした要素を期待して鑑賞すると、意外にもホラー的側面は弱く(ジャンプスケアはあり)、サスペンスと定義したくなるのだと思う。
2つ目の理由は、“霊感や悪魔崇拝という「オカルト」要素が、一連の殺人事件と密接に関わっているという種明かしを受け入れられるかどうか?”だ。
私自身は、本作を「ホラー・サスペンス」と定義したが、その「サスペンス」の部分に「オカルト」の要素が密接に関わってくるという点を、どの程度まで許容出来るかで、本作の受け止め方が変わってくるように思う。
本作の犯人“ロングレッグス”ことダル・コブルは、悪魔崇拝者の人形技師という設定。「階下の男」ことサタンを盲信するあまり、人形に自らの一部を宿した“黒魔術”を用い、悪魔憑きの人形を作成する。それを共犯者であるルスがシスターのフリをしてターゲットの自宅へ届け、人形に宿った悪魔が家の主人を操って凶行に走らせるというものだった。
殺人事件の動機やトリックに、論理的・現実的な仕掛けではない超常的な力が関与しているという点が、観る人によっては納得がいかず、拒否反応を示させるのだと思う。
また、真相が“悪魔崇拝”という日本人に馴染みの薄いものなのも、作品との距離感を生む要因だろう。日本では無宗教が大多数を占める為、神や悪魔という存在に対して関心が薄い(神頼みは頻繁にするが)し、悪魔崇拝なんてしようものなら“中二病”と嘲笑われるくらいだ。だから、それに対して恐怖感を抱くというのは難しい。
しかし、何故本作が本国アメリカで「ホラー映画」として評価されたのかは、納得する部分がある。それは、先に挙げた『ヘレディタリー』に対する評価にも関係している。『ヘレディタリー』もまた、悪魔崇拝を取り扱った作品であり、それに対する評価は《直近50年のホラー映画の中の最高傑作》《21世紀最高のホラー映画》という大絶賛ぶりだった。近年は若者を中心に信仰心が薄れているそうだが、それでもキリスト教が人々に深く根付いているアメリカにおいては、悪魔崇拝やそれに関連した殺人事件は、リアルな恐怖に他ならないのだろう。
そういった意味では、本作は間違いなく「ホラー」なのだ。
【感想】
演じたニコラス・ケイジ自身が、「このような役を演じる事は2度とないだろう」と語るほど、ロングレッグスのキャラクターは強烈。
長い白髪に白化粧という不気味な風貌、悪魔崇拝者の人形技師で、精巧な人形に悪魔を取り憑かせるという設定は非常に魅力的だった。「クー、クー」や「ようやく会えたね。天使ちゃん」という台詞含めて、ニコラス・ケイジ史上最も“気持ち悪い(キモキモ気持ち悪い!)”キャラクターだった。あんな邪悪な「ハッピーバースデー トゥー ユー」があるだろうか?
とはいえ、演技自体は割とニコラス・ケイジまんまだし、どう見ても演じるのを楽しんでいたように見える(製作も務めている)ので、これからもこういったピーキーな役は積極的にやっていただきたい。
余談だが、そのビジュアルが何処となく『ルパンVS複製人間』(1978)のマモーを彷彿としたのは私だけだろうか?(笑)
リー役のマイカ・モンローは、私としてはNetflixの『TAU/タウ』(2018)で主演を務めていた点から、スリラーやサスペンス系作品と親和性の高い女優なのかと思った。
本作ではポニーテールに白のブラウス姿が印象的で、自身を取り巻く事件に翻弄されつつ真相に迫っていく姿が美しいと同時にキュートだった。ホラーにおける“最悪の事態に巻き込まれる美女”を体現しておりグッド。
また、彼女はロングレッグスとの取り調べ室のシーンで、ニコラス・ケイジのメイク姿を知らされていなかったそうで、あのシーンにおける彼女の怯えっぷりはガチなのだそう。
リーの霊感の方について、どう説明を付けるべきか。長らく自身を模した人形に悪魔が宿っていたのならば、それにより悪魔と霊的なパスが繋がって、透視や超直感を獲得もしくは目覚めたと捉える事が出来そうではあるが。
暗号解読のシーンは、自身の超直感による解読なのは分かるが、どういうロジックで組まれた暗号なのか程度は、我々観客にも示してほしかった。
クライマックスで事件を終わらせる為に母親を射殺するというのは、悪魔からしてみれば最大の堕落行為に他ならないのだろう。だとすると、本作のラストはバッドエンドとも言える。
ルスが人形を破壊したにも拘らず、ルビーを連れて逃げる際に悪魔の囁き声が聞こえた点を考えると、彼女はまだ悪魔の掌の上なのかもしれない。
ロングレッグスの共犯者として描かれたルスについては、子供を守りたいが故に悪魔に魂を売るという背景には納得が行くし、犯行を重ねる中で次第に箍が外れ、返り血を浴びて狂気に飲まれていく姿も良かった。父親不在のシングルマザーがシスターに扮して犯行に加担するという点は、父の影が全くないという点で処女懐妊を成した(一説には、翻訳の際の誤訳だとも言われている)という聖母マリアが悪魔の手によって堕落させられたかのようにも見える。しかし、そう見せる意味でも、またラストで母を射殺する悲痛さを出す意味でも、ルスとリーの親子関係にはもっとドラマ性が必要であったはずだ。
本作を語る上で外せないのが、画面構成の素晴らしさだ。
スタンリー・キューブリックを彷彿とさせるオープニングの赤い画面や左右対称風のショットは勿論、基本的に全編薄暗い画面、リーの一人暮らしの自宅でのオレンジ掛かった色調やオープニングでのサブリミナル演出まで、とにかく画作りに対する拘りが随所に感じられる。また、正方形の画面で描かれる過去回想もオシャレ。
リーが事件を捜査するため赤いカーペットの上で資料を広げる姿、ロングレッグスとの対面で怯える姿。ルスが幼いリーを模した人形をショットガンで破壊した際に人形の頭部から立ち込める黒いもや。グラフィックデザイナーの大島依提亜氏によるオルタナティヴ・ポスターのデザインにも採用されている血塗れのマリア像かのようなルスの姿。作中のあらゆるショットもバチバチにキマっている。
wikiによると、本作の製作費は約1,000万ドルと低予算らしいが、こうした画面構成や印象的なショットを用いるといった演出面の創意工夫は、安っぽさを一切感じさせない重厚感と不気味な威圧感があり見事。
全編に漂う不穏な空気と、それを盛り上げる音楽も高評価。「雰囲気だけ」と言ってしまえばそれまでなのだが、その雰囲気が個人的に抜群に好みだった。
事件の真相に関しては、事前にオカルトの要素があると知っていたので、特別拒否感を抱く事は無かった。また、私自身が悪魔崇拝はともかくオカルトという分野に興味関心が深い(あまり信じてはいない)事も、本作を好意的に受け止められた要因だろう。人形を用いるという不気味さは非常に好みだし、読んで字の如く「人の形をしているもの」には色々な“念”が宿ると言うので、それが悪魔であっても「まぁ、宿るかもね」と不思議と納得は行った。また、“追ってきた犯人が、実は実家の地下室でずっと共同生活を送っていた”という種明かしは実に恐ろしい。ただ、それ自体を割と軽く処理されてしまったのは残念だった。あの空間だけでも、リーの霊感を通して色々な過去が見えそうなものだろうに。
エンディングでT.Rexの『Bang A Gong(Get It On)』に乗せて、真っ赤な文字のスタッフロールが上から下へと流れて行く演出も粋。ラストのロングレッグスの「サタン万歳」という台詞を思うと、「全員地獄に堕としてやる」という邪悪さが感じられる。まさか、T.Rexのこの曲にこんな邪悪さを感じる日が来るとは。
【総評】
過去の名作の要素や巨匠の手法を貪欲に取り入れつつ、何処か懐かしさも感じさせる。不足している部分はありつつも、1級のサスペンスに仕上がっていた。キャスト陣の熱演や演出の工夫にも拍手を送りたい。
9月に公開が決定した、同監督によるスティーヴン・キング原作の『ザ・モンキー』を心待ちにしたい。
余談だが、本作の趣向を凝らした捜査資料風パンフレット(1,300円)が売り切れにより手に入らなかったのが残念でならない…。
あしながおじさん
FBI捜査官のリー・ハーカーは半透視能力を持つ。彼女は連続殺人事件を担当することになった。その事件には共通点があり、それは父が家族全員を殺害した後、自死するというものだった。どの現場にも外部からの痕跡はなく、ロングレッグスと書かれた人物からの手紙が残されているだけだった。
ストーリーは終始薄暗い雰囲気で進み、「不気味」という言葉がぴったりの作品である。常に正体不明のロングレッグスから付きまとわれている感じがする。
登場人物は少なく、時系列が行き来したり、視点が変化したりすることがないため、内容を把握しやすい。
ロングレッグスというタイトルに惹かれて鑑賞する方が多いと思うが、このタイトルについての説明は全く存在しない。
暗号の解読や事件の共通点を探っていくところから、最後にはすべてを瓦解する種明かしを期待してしまうが、それは存在しない。謎解きのためのいくつかのパーツのみが与えられて、それを各自で組み立てて納得するしかない。これが本作の不気味さを助長しているのかもしれないが、評価が低くなってしまう要因にもなっている。
作中の雰囲気や設定が秀でていただけに、まとめきれなかった点が残念である。
この10年で。。。
一番宣伝上手な映画の一つだったw
まず「羊たちの沈黙」や「セブン」的なものを期待して観に行ってはいけない。
サイコサスペンスではない。
敢えて言うなら「ホラー」のジャンルなのだろう。
暗号解読一つとっても十分な説明描写があったとは言えず、
黙示録だのなんだのとそれらしいことを述べているが、
ロングレッグスがなぜこんな暗号を残したのか、
主人公がなぜあの暗号を解読できたのかなどは実は謎のままだ。
「だって解読出来ちゃったんだもん」的な「ノリ」が近い。
捜査手法もFBIという設定なのにまったくもって科学的でもなんでもなく、
終いには主人公を守っていたはずの母ちゃんが本当の敵という
シンジ君の最後の敵はゲンドウみたいな怒涛の展開にもかかわらず、
そこに至るキーである謎の銀魂の説明はほとんどないという。。。
もしかしてデイヴィッド・リンチ的な理不尽な夢の世界の出来事を描こうと
したのかも。。。と思いながら途中で思考を切り替えて観るようにしたのですが、
そうだとしても悉く中途半端でサイコサスペンスでもホラーもリンチ的悪夢でもない
「なんじゃこりゃぁ!」的ちゃぶ台返しを楽しむ映画というのが結論でした(笑)
逆に酷すぎてカルト的人気が後年出るのかもしれないけど。
キリスト教的背景のある外国人にとっては怖い映画なのかなぁ。。。。
この10年という範囲でも「ミッドサマー」とかの方がよほど不快で
怖い映画だったように思ったのですが。
そんなに怖くない
ここ10年で一番の怖さなどと宣伝されており、どれほど怖いかと気構えしていくと、そんなに怖くない。ホラーを期待していたらミステリー&サスペンス色が強い。家族全員死ぬ謎の連続殺人事件に共通点があり、娘の誕生日など、どうしたことかと調べると主人公の女刑事にも関りがある。とても狭い世界のできごとだ。
ニコラス・ケイジが恐ろしい殺人鬼なのに、店番してる女の子に「キモおじさんがまたきたよ」と言われているのがリアルで面白い。確かになんであんな白塗りなのだ。
犯人は暗号の手紙を残す。主人公はそれを解読する。犯人も解読してもらえてさぞ嬉しいだろう。誰も解読できなかったら寂しくてどうしようもない。意味不明で終わりだ。
どっしりとした淡々とした演出で、コンディションが悪いと眠くなりそうだ。
ヤバい映画
これは観なくていいです(胸糞悪くなります)
何が言いたいのかさっぱり解りません…。。
終始謎です…それがずっと続きます
サブリミナル効果を使ったり、急に効果音やBGMをデカい音で刺激したり、、、(ジャンプスケア)
終始不穏な空気を演出して、サスペンスぽくしていますが、中身がありません。。
最初は"羊たちの沈黙"や"セブン"の様なスリラーを目指したのでしょうが全く御門違いです‼︎
だってあれだけ娘を守る為と言っておきながら最後は襲って来ました…なんなの⁇
但しひとつだけ…最初から最後まであれがニコラスケイジだとは分かりません(全くの別人です‼︎)、只々異常な映画です
『ケイジ、お前はいったいどこへ行く⁇』
【追記】
そうか⁉︎サスペンスとして観たからいけなかったのか‼︎この映画はホラーとして観れば未だ許せたのか⁈いや許せ無い‼︎ 悪魔崇拝やら怨念・怨霊で片付けるな‼︎‼︎
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