「【”神様から贈られた守護天使。”今作は序盤は物凄く立腹するも、多聞が弱き人の傍に現れ助ける姿に、徐々に涙腺が緩み、最後は落涙する物語である。震災を風化させない良き作品だと思います。】」少年と犬 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”神様から贈られた守護天使。”今作は序盤は物凄く立腹するも、多聞が弱き人の傍に現れ助ける姿に、徐々に涙腺が緩み、最後は落涙する物語である。震災を風化させない良き作品だと思います。】
■東日本大震災から数カ月後の宮城県仙台市から物語は始まる。震災により職を失った青年・和正(高橋文哉)は、同じく震災で飼い主を亡くした一頭の犬・多聞(たもん)と出逢う。
和正とその母と姉に瞬く間に懐き、一家にとって無くてはならない存在となる多聞はなぜか常にある方角を気にしていた。
そんな中、震災で一時的に避難している人の家の貴重なモノを盗む仕事のドライバーになった和正は、事件に巻き込まれる。その混乱の最中に多聞は姿を消す。
時は流れ、多聞は愚かしき恋人ハルヤ(柳俊太郎)の借金を返すためにデリヘル嬢になり、彼の裏切りを知り殺して山中に埋めた罪を隠し続ける女性・美羽(西野七瀬)と滋賀県にいた。
多聞(彼女はレオと呼んでいる)と過ごすことで徐々に平和な日常を取り戻していく美羽の前に、離れ離れになってしまった多聞を追いかけてきた和正が現れる。
和正と美羽は、徐々に心を通わせる。そして、美羽は罪を償うために警察に行き、和正は多聞とともに“少年”を探す旅に出ようとするが、居眠りのダンプに撥ねられる。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・冒頭の、震災で一時的に避難している人の家の貴重なモノを盗む連中の姿を見て、怒りが沸騰する。当時、本当に多数いたのである。私は、仙台の大学で法律を学んでいたので、”即、極刑にしろ!”と思ったモノである。
そして、毎年、この時期は憂鬱になるのだが、例年の様に福島の立ち入り禁止区域に行って来た。何も変わっていなかった・・。
■今作が響くのは、愚かしくも弱き人間の所に、多門が必ず現れるという設定である。馳星周の原作を全て映像化すると、トンデモナイ尺になるが、名匠瀬々敬久監督は良く纏めたと思う。
多門が関わる人を、和正、美羽、光とその両親、老いた癌に罹った男(柄本明)に絞ったのが、良かったと思う。
・冒頭のシーンで、海外の略奪者が多聞の事を”guardian angel"というシーンがあるが、正にこの映画の多聞は”guardian angel=守護天使"である。
愚かしくも弱き人が居れば、そこに駆け付け見守るからである。象徴的なのは美羽がハルヤを滋賀の山中に埋めるシーンに多聞が現れるシーンであろう。
・そして、トラックに跳ねられた和正も又、美羽との約束を守り、幽霊となって多聞と共に震災で黒い絵と口が利けなくなった光と両親(斎藤工&宮内ひとみ(桜庭ななみ):ご結婚されたのですね、おめでとうございます。)が、熊本に引っ越したトコロに駆け付ける様を追うのである。
ー この光の様な子も、余りのショックにより、本当に、結構いたのである。ー
■多聞が、光の家に付き、彼が表情を取り戻し”ママ”と言うシーンは、沁みたなあ。けれども、そこに再び熊本大震災が襲うのである。倒壊した家。その中で多聞は、身を呈して光を救ったのである。
けれども、多聞は大怪我をして、亡くなってしまう。残酷すぎるよ。
だが、多聞は生きて居る時に、和正、美羽、光とその両親、老いた癌に罹った男と、多くの人に希望を与えて来たのである。正に”守護天使”である。
<今作は序盤は物凄く立腹するも、徐々に涙腺が緩み、最後は落涙する物語である。震災を風化させない良き作品だと思います。
あとさあ、政府は防災庁を、早急に立ち上げて防災だけではなくって、能登半島を始めとした被災地の支援にもっと力を入れて欲しいよな。福島だって、立ち入り区域禁止地域は殆ど変わってなかったよ!あれからもう、14年も経つんだよ!終わってないんだからね、被災地復旧は!全くもう!>
