「正しい子育て正しい愛情」野生の島のロズ かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
正しい子育て正しい愛情
吹替版を観ましたが、ロズの声が綾瀬はるかなので、どうも「ぎぼむす」で脳内変換されてしまい。
亜希子さん、自身の感情を出すのが苦手で、忠実に「仕事」をする優秀なロボットみたいだが、血の繋がらない我が子に「正しい」愛を注ぎ続けて母性と愛情を獲得したように、ロズも心配性で親バカな母親になった。
「正しい」というのは、親の仕事というのは本来、子供が厳しい世の中で生存していけるように生き抜く術を教え込むことで、それが親の愛といわれるものでは。
人間の親は、食わせて世話を焼くことは重視するが、「生き抜くすべを教える」はおろそかにしがちなよう。学歴つけるのも生き抜く術のひとつかもだが、良い学校に入ったところでそれだけが目的だと人生生き抜けません。少なくとも私の周囲では、母親が子供にべったりの過保護、または甘やかし放題が結構いる。特に男の子を持つ母親。そして、そういう家庭って、母のワンオペ育児で、父の影が薄いことが多いです。
そういうのは、本当に我が子のことを思っているのではなく、自分を満足させるための育児になっちゃってるからなんだろうと思っています。子供への愛ではなく、自己愛でしょう。
ロボットは目的を設定してそこに邁進するので邪念が入らなず、むしろ正しいことができる。但し、相手はイキモノなので、過程は試行錯誤、その場その場の臨機応変の対応のみ。それが上手く行ったら成功体験、でも、いつもそうとは限らない。学習を繰り返すうちに、不思議な「感情」=母性や愛情、が育つのではないでしょうか。
(同様に、女性も生まれながらに母性を持っているわけではないのです。)
息子を社会デビューさせるのは必要と思いながらもつい、心配で手出し口出ししてしまう母と、いわゆる反抗期の息子、キラリが反抗期をちゃんと迎えたのは、ロズは良い子育てをしてきた証拠では。さらに成長した息子は、母の愛を理解して戻って来ましたよね。
また、野生の厳しさがそのまま、さらっと描かれており、弱肉強食、食物連鎖は当然で、ピンクシッポ母が話をしている間に7人いた子供が6人になっていたり、体が小さいキラリは本来生き延びられないはず、と平然と周囲に言われ続けて、渡りに耐えられなければ命を落とすだけという現実が迫っていたり。寒さから逃れるためにひとつ屋根の下にイキモノを集めたら、狩るものと狩られるものが同居することになり死に物狂いの騒動になった、まで描いて、話し合いで一時休戦にする、というのはギリギリ許せる作り事だったよう。
前半は子育て話だが、それでは終わらず、後半はヒト(文明?)との戦いパートになる。
人類の文明批判をしているように見えるが、さほど強くない。そして野生との安易な対立構造にしていない。島にやってきた宇宙船の目的はロズの回収で、侵略のためでも殲滅のためでもなく、回収できればそれで去る、両者はお互い接点は最小限、干渉せず共存しているよう。
ヒトが築いた文明も基本的に野生と同様に「自然の成り行き」と受け入れて、そこそこ共存しているのが新しいと思う。
伏線が撒かれていてきれいに回収されるのが気持ちが良い。
ユニバーサル傘下になっていたのか、なドリームワークスは、相変わらず黒めの笑いがふんだんで楽しい。
CGの立体感を持った「絵」のアニメーションが新鮮、もふもふ感がある‼️で、背景が綺麗。
動物たちの動きがそれぞれそれらしく誇張されて可愛いくて面白かった。
ラスト、ロズは素知らぬ顔で回路の奥底に隠してあるものを大事に持っており、そのために「汚染」が紛れても知らん顔できるロボットらしからぬものになっていて、キラリと再会を喜びあうのにうるっときました。
でも、2001年のHALみたいなことも過去にはあったよね、とちょっと恐ろしかったり。
ところで洋画アニメの字幕版って見られますか?少なくとも埼玉ではほぼ見られず、わざわざ新宿まで出掛けてました。
綾瀬はるかさんなら結構落ち着いた声で聴きやすかったと思います。