「文句なしの傑作」野生の島のロズ sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
文句なしの傑作
休日の月曜日なので、ちびっ子を交えた家族連れでほぼ満席だったが、子どもから大人まで、どの世代にもちゃんと刺さる作品だと思う。
親子の愛情や友情などのテーマを、こういう設定で、こうやって描くのかと驚かされるが、メッセージは真っ直ぐに心に届く。吹き替えを担当した、役者たちの声の演技の素晴らしさも、それを支えている。
自分がいいなと思ったのは、死や弱肉強食の世界を曖昧にせず、かつ、過剰にも表現しないところ。
特に、ピンクシッポの母が子どもの人数を言い換えたセリフと、その後の子どものセリフからもそんな部分がうかがえてハッとした。
そして、今、このタイミングにおいては、チャッカリの演説シーンは、「本当にそうだよ」と思う人も多いのではないだろうか。
アニメーションの圧倒的な美しさ。動物たちの毛並みの質感の違いまでもが伝わってきて、劇場で観ることができて本当によかったと思った。
<ここからはちょっと考えたことの備忘録>
細かくは描かれていないが、渡りのシーンをみると、環境問題が深刻な結果をもたらした後の地球という設定なのかなと思う。だとすれば、ユニバーサル・ダイナミクスという会社って単なる鋭利企業なのかとか、国家間の関係は世界的にどうなっているのかとか、汚染ってどういうことなんだろうとか、作品の背景設定について、色々と想像が膨らんだ。
他に危害を加えないようにプログラミングされているロズに対して、攻撃的なプログラムが組み込まれているロボットの存在とか、ロズの経験と記憶をどのようなことに活かそうとしているのかとかも。
あと、餌として認識されている生物と、あの映画の中で、共に生きる仲間の動物として認識されている生物の境界線はどこなのかも中々難しいけれど、そうしたことはあくまでも、ヤボな私の個人的な問いで、私自身が答えを出すべきこと。
この映画の出来の素晴らしさは揺るがない。