「「ノアの箱船」という命題」野生の島のロズ 猿田猿太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
「ノアの箱船」という命題
印象として、様々な命題に答えを出そうとする、そんな映画だったと思う。愛とは何か、親の務めを果たすには、どうして眠れない子供は愛のあるお伽話を求めるのか。このお伽話のくだりがとても面白かった。もちろん、この映画の語りは一つの答えでしか無いのかもしれないけれど。そんな幾多の問題をロボットというゼロ視点から見つめる、そういう映画であったと思います。
特に寒波が島を襲うエピソード。あれのテーマはやはり「ノアの箱舟」なんでしょうか。正直、聖書の「ノアの箱舟」の話はフィクションでしかないと思うので、あれは「教え」ではなく「命題」なんじゃないかと思います。つまり、「お互い争い合う仲間同士、災難をどう乗り越えるのか」。映画の寒波同様、聖書で語られる神の粛正の大洪水にノアが箱舟を作って動物達を集めたけれど、この映画と同様に大混乱が起こったとも想像出来る。じゃあ、どうするのか。互いに争い合わず、一時休戦するしかない、というのが、この映画で出された答えではないかな、と。あるいは、今も地球上で相争い合う我々に突きつけられた命題とも云えるのかも。
ともあれ、そんな堅苦しい話は抜きに、CGアニメ映画として非常に愉快で面白かったです。ロボットの挙動に日本のディズニーCGアニメ「Fireball」を彷彿とさせるけど、同じスタッフが加わったりしたのかな。発想を裏切る体幹の挙動は、2足歩行の効率化を極めた結果なんだろうか。手首が離れて動き回るのは「アダムス・ファミリー」の発想だけど、気味悪さはなく、可愛らしくも面白い。動きも良いけど、チャッカリの演技もずる賢くも面白く、そして友情に熱い。
ロボットの成長ぶりも面白い。途中、同じく遭難したロボットの残骸との比較で成長ぶりが図られるのは良いシーンでした。でも、終盤で登場したメンテナンスのロボット?って、なんであんなにイヤらしく機械学習されてるんだろうw
挿入歌が好きです。「空にキスできるかもしれない」という一句にシビれた。無数の雁と一緒に両腕を広げて羽ばたいて見せるロボットの姿にジンときた。短めの上映時間の中、胸に来るシーンが無数にある。子供向けアニメに見せて充実した内容だったと私は想います。