「効率性と人間性は両立しうるという楽天的な思想が見て取れる。オレはちょっと嫌だね。」野生の島のロズ あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
効率性と人間性は両立しうるという楽天的な思想が見て取れる。オレはちょっと嫌だね。
imaxの字幕版で観た。字幕版はそれしかなかったから。この作品はキャスティングに凝っていてルピタ・ニョンゴ、ペドロ・パスカル、ビル・ナイら芸達者が揃って出演している。ビッグネームというだけではなくキャラクターに合っているかどうか綿密に計算しているのだろうからまずはそのまま観るという選択肢かなと思うのです。綾瀬はるかありきというのはどうもね。でも選択できるほど字幕版の上映はないというのが実状ですが。
私としては回収船のロボット(火星人みたいな奴です)の声を演じたステファニー・スーが良かったですね。あの気持ち悪さは彼女でなけれは出せないかも。吹替版は誰が演じてるのかな?
だけど字幕が致命的に駄目でした。まず、恐ろしいことに役名を、例えば雁の雛(Bright bill)やキツネ(Fink)を吹替版の呼称に合わせている。これは今までも例がなかったわけではないが、わざわざ字幕版を観ている観客の感覚をまるで無視していないですか?それ以外も、前半は、ロズ自身がまだロボット的なしゃべり方をして周りもそれにつられたりするという設定もあって、字幕が意味不明な箇所が多い。耳から入ってくる英語とのニュアンスとも異なることもあって大混乱です。後半部分はややまともにはなりますが。
じゃあ、例えば字幕が修正されたらこの映画を勧めますかといえば私は不支持せざるを得ない。
ドリームワークス社が制作主体となっているこの作品ですが、お金を十分すぎるほどかけ、技術の粋を集め、徹底した分業化のもと作成されています。日本のアニメの現場の過酷さに比べると、いわば勝ち組のクリエーターたちによって作られているのです。(エンドクレジットを観ているとstrategy部門まである。特許を扱っているのか、それとも作品の差別化を推進するのか?)
いわば、彼らは能率、効率の申し子です。作品の中のロボットはテクノロジーの集約であって彼らの写し身であるといえます。
一方、彼らが描く「野生の島」の動物たちは、動物の姿を借りてはいるものの、人間性の象徴なのだと思います。そこでは多様性が認められ弱肉強食を超えて連帯が図られる。
ロボットの世界と「野生の島」は一度は対立するが、最終的にはロズの力によって共存する方向に向かうことが示唆される。
つまり、効率性と人間性は両立しうるというのがこの映画の基本思想であるわけで、恐らくこの映画のクリエーターをはじめとしてアメリカのITやAIの業界のエリートたちは同じ立場であろうと思います。
私はそれはあまりにも楽天的で、かつ世界認識として想像力を極めて欠いていると思います。だからこの映画はとてもありきたりの展開、全く想定内の内容にしかなり得ていない。
共感とコメントありがとうございます。
同じように感じるかたがいて良かったです。
〉効率性と人間性は両立する、
なんか強者の勝ち組の思想的に思えます。
その考え方は、わたしには、人間もAI同様に
買い替え出来る存在的に思えて・・・
結局のところ、無難に心地良く終えたようでしたね。