「どうせロボットと動物たちのほのぼの交流映画でしょwと侮っといたかつての自分に熊の一撃を食らわせたくなる一作」野生の島のロズ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
どうせロボットと動物たちのほのぼの交流映画でしょwと侮っといたかつての自分に熊の一撃を食らわせたくなる一作
もうきれいな3DCGの映像では満足を得られなくなったような観客でも、本作の筆致、そして動物の動きはかなり印象に残るのでは。緻密な描きこみかと思ったら細部は水彩画的であるなど、いくつかの画調を併置しつつ、それでいて全体として統一感のある映像を実現しているなど、単なる美しさにとどまらない精緻な映像を体感できることがまず至福です!
しかし本作を忘れがたいものにしている要因は、映像よりもむしろ物語にあり、疑似家族的に結びついたロズとキラリの行く末を感情を高ぶらせずに見通すことは(特に子育て中の親世代の方にとって)、かなり困難でしょう。
本作では動物たちを決して「善なる存在」として十把一絡げにはしておらず、むしろ捕食/被捕食関係、過酷な自然環境といった、「死に取り囲まれた生」を生きている存在として描いており、それがロズとキラリの関係の切実さを一層際立てています(そして作劇上のタイムトライアル的要素ともなっている)。
とはいっても、疑似家族的な物語としては、おおむね定番の要素を踏まえたもので、その意味で古典的な展開であるとも言えます。
しかし一つのエピソードから別のエピソードへの移行が非常にリズミカルで、かつ必ずちょっと意表を突くような仕掛けを施しているため、退屈さを感じるような瞬間がほとんどありません。全編にわたって、本作の編集がかなり練りこまれていると感じました。
本作単体でも忘れがたい印象を残すことは間違いありませんが、この時期であれば、『ロボット・ドリームズ』とロボット描写の違いを比較してみるのも面白いかも。