劇場公開日 2024年10月18日

「やっぱ悪いのは日本人」破墓 パミョ 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5やっぱ悪いのは日本人

2025年1月3日
PCから投稿

サバハ(2019)を見たとき「雰囲気がレベち」というタイトルでレビューした。レビューは『巧いなあと思います。冒頭からリアリティの佇まいが違います。』と書き出していた。

おなじ監督がつくった本作も始めからそれを感じた。上質な恐怖映画の雰囲気づくりと役者の作り込み。風水師役のイミンシク、シャーマン役のキムゴウンとその助手役のイドヒョン、葬儀屋役のユヘジン。みんなその道のプロパーにしか見えなかった。

しかし韓国映画には日本をディスる描写がつきもの。それが本作にもあった。

主人公らは日本の陰陽師が墓に封印した怨霊によって窮地に立たされる。
韓国映画では善良な韓国民に災いをもたらす悪い人は日本人と相場が決まっている。その設定は忌々しいが映画のクオリティは常に日本より高い。この現象に対する日本人の態度はそれぞれ。じぶんはポリティカルではないから韓国は嫌いだが韓国映画は好きという感じ。日本男児にあるまじきことだが女優も日本より韓国のほうがいいと思ったりする。ちょっと前まで韓国は整形大国と言われていたがいまの日本の芸能界を見ると整形の比率が逆転している。先般、40歳以上のおっさんがパーカー着るのはヘンだとのたまって炎商した女がいたがインフルエンサー界隈の女はほぼ全員あれと同じ整形顔をしている気がするんだが。Kpopがニュース記事にあがると、なんで韓国アイドルを紅白に出すんだ(怒)というヤフコメが殺到するが、個人的にはそれもどっちでもいい。日本人として保守的スタンスをもっているが、芸能などに関しては自由な態度をとる。

韓国ではドラマ・映画もKpopもプロパガンダ・外交のひとつである。高品質が反日描写をスポイルするから、韓ドラやKpopに夢中な若者は韓国が日本を罵倒しても彼らに敵愾心をもたない。それを戦略というのだが、ただし日本のホラー巨匠とされている中田秀夫だの清水崇だのの○○つまんない映画と、これを比べるのは酷な話である。プロパガンダだろうが何だろうが庶民は韓国コンテンツのほうがずっとおもしれえと思いながらネトフリ見てますよ──という話にすぎない。

ミンシク演じる風水師は、墓所に明堂を斡旋して遺族から金をもらう。明堂とは埋葬に適した立地のこと。ご先祖をいい場所に葬ると家が繁栄する。儒教の韓国ではそういう吉凶をすごく気にする。だが狭い韓国、いままで何百何千万と埋葬してきたんだから明堂なんてそうそう残ってはいない。ときには適当なところを紹介しながら葬儀屋役のユヘジンと組んでそれなりにやってきた。そんな時、シャーマンの友人が持ってきた儲け話。4人は破墓の禁忌にはまっていく・・・。

小泉八雲の耳なし芳一みたいだなと思ったところもあったが、将軍の霊は関ヶ原でやられたと言ったりもする。雰囲気をもっていて、役者もそろっているがストーリーは粗雑でごたまぜ感があった。言えるのは何が何でも悪いのは日本人だというところ。わら。

キムゴウンがカッコよかった。据わった目と、むいた卵みたいな肌質感。祈祷での狂乱ぶり。堂々たる演技力だった。
またユヘジンが上手。葬儀屋だが聖書を引用してアーメンと結ぶキリスト教徒でもあった。おっさん臭さを醸しながら、ふとしたとき笑いをとったりもする。
韓ドラ・映画でおそらくもっとも頻出のおばさん俳優キムソニョンも相変わらずうまかった。

すこし長い気もしたが、しっかり魅せた。ハッピーエンドも好ましく感じた。映画は大成功し、韓国内で2024年の最高収入をあげた。世界的にもヒットし、ベトナムおよびインドネシアで最も興行収入をあげた韓国映画になったそうだ。日本人が悪になっているので日本ではそれほどではなかった。たとえば映画コムは(見た時点では)3.1で、抑えた点になっていた。
Imdb6.9、RottenTomatoes95%と87%。

コメントする
津次郎