劇場公開日 2024年10月4日

「近未来でも変わらないもの」HAPPYEND kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5近未来でも変わらないもの

2024年12月23日
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鑑賞方法:映画館

近未来の高校を舞台にした青春物語ということだが、結構近めの近未来だった。市民への管理が強まり、外国人への排他意識が強まる社会。でも、学校には日本人じゃないクラスメイトがたくさんいる。そんな未来を示唆する状況が現実にあるから絵空事とは思えない。
本作はこうした近未来を描くことで現代社会へ警鐘を鳴らすというわけではない。管理が進む社会での若者たちの姿を描くことを目的としている印象だ。社会のルールかちょっとはみ出しても自分たちが面白いと思える行動をとる。少しふざけた気持ちでとった行動が大人にどんな迷惑をかけようが関係ない。そんな若者たちの行動が世の中に溢れているのは昔から変わらない。いつの時代も若者は大人に嫌な顔されるものだよな、なんてことを考えながら観ていた。でも近未来だからいろんな技術がちょっと進化していて、そんな新しいツールでイタズラも様変わりしているのは楽しかった。
少年少女たちは大人に変わっていく過程で今までの関係のままではいられなくなる。その描き方も近未来であろうが大きな変わりはない。将来を見すえて進路を決める中、同じ学年でも変わる者・変わらない者が出てくる。そんな揺れ動く友人関係が青春だよな。その描写は近未来が舞台であることをすっかり忘れてしまった。
決してわかりやすい展開ではないし、大きく心を揺さぶられるような結末でもない。でも個人的にはそれなりに印象に残る映画となった。本作を観て、全くタイプが異なるが「時計じかけのオレンジ」を連想してしまう。共通点は、管理社会になった未来で若者たちが躍動する映画というくらいか。でもあの映画も間違いなく青春映画だった。若者たちの悪ふざけと大人たちのしかめっ面。どんな時代でも変わらないものが描かれている。今や顔をしかめる側にいるが、彼らが仕掛けた大がかりなイタズラにちょっと笑ってしまった。
いや、でも監督は現代社会に警鐘を鳴らすつもりだったとしたらと想像すると恐ろしい。とんだ的外れなレビューを書いているのかもしれない。だとしたら本当に申し訳ない。

kenshuchu