HAPPYENDのレビュー・感想・評価
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もう既に始まっている。
うーん。なんか敢えて小難しく遠回りしてみましたみたいなストーリーで、正直何の話かよく分からなかった。日本人なら誰しもが大地震に対する恐怖心をどこかに持っていて、その不安をまさに揺さぶりながら、若者達の行く末を描いたんだろうけど、やっぱピンとこなかった。
政府の暴走、監視社会、クラスメイトの半数が日本の国籍ではないという、ちょっと未来の設定らしくて監督はきっと日本人のアイデンティティの話がしたかったんだろうけど、ここまで極端でないにしろこれってもはや現代の話よね。なんか言いたいことは分かるねんけど、なんだかなーって感じでした。
そして最大のモヤモヤは、そう、車どうやったんですか?!ってとこ。高校生数人であんなことできるん?せめてそこの答えは欲しかったわ、ってことで今からホームルーム!
近未来でも変わらないもの
近未来の高校を舞台にした青春物語ということだが、結構近めの近未来だった。市民への管理が強まり、外国人への排他意識が強まる社会。でも、学校には日本人じゃないクラスメイトがたくさんいる。そんな未来を示唆する状況が現実にあるから絵空事とは思えない。
本作はこうした近未来を描くことで現代社会へ警鐘を鳴らすというわけではない。管理が進む社会での若者たちの姿を描くことを目的としている印象だ。社会のルールかちょっとはみ出しても自分たちが面白いと思える行動をとる。少しふざけた気持ちでとった行動が大人にどんな迷惑をかけようが関係ない。そんな若者たちの行動が世の中に溢れているのは昔から変わらない。いつの時代も若者は大人に嫌な顔されるものだよな、なんてことを考えながら観ていた。でも近未来だからいろんな技術がちょっと進化していて、そんな新しいツールでイタズラも様変わりしているのは楽しかった。
少年少女たちは大人に変わっていく過程で今までの関係のままではいられなくなる。その描き方も近未来であろうが大きな変わりはない。将来を見すえて進路を決める中、同じ学年でも変わる者・変わらない者が出てくる。そんな揺れ動く友人関係が青春だよな。その描写は近未来が舞台であることをすっかり忘れてしまった。
決してわかりやすい展開ではないし、大きく心を揺さぶられるような結末でもない。でも個人的にはそれなりに印象に残る映画となった。本作を観て、全くタイプが異なるが「時計じかけのオレンジ」を連想してしまう。共通点は、管理社会になった未来で若者たちが躍動する映画というくらいか。でもあの映画も間違いなく青春映画だった。若者たちの悪ふざけと大人たちのしかめっ面。どんな時代でも変わらないものが描かれている。今や顔をしかめる側にいるが、彼らが仕掛けた大がかりなイタズラにちょっと笑ってしまった。
いや、でも監督は現代社会に警鐘を鳴らすつもりだったとしたらと想像すると恐ろしい。とんだ的外れなレビューを書いているのかもしれない。だとしたら本当に申し訳ない。
踏み込まない!
普遍的な友情ドラマ
一応、近未来という設定であるが、基本的には現在とさほど変わらない世界観である。劇中にはAIによる監視システムや移民排斥、反政府デモ、経済格差、巨大地震への不安といった社会問題が出てくる。しかし、これらは現代でも語れる問題であり、正直、近未来にしたした理由がよく分からなかった。
物語はユウタとコウの友情を軸にしながら、彼等と同じ音楽クラブに所属する3人の同級生が織りなす群像劇となっている。
ユウタとコウは幼なじみで大好きな音楽を通じて固い友情で結ばれている。ところが、二人の出自はまったく異なり、コウは在日韓国人の苦学生。ユウタは母子家庭のようだが割と裕福な家庭である。幼い頃は無邪気に遊んでいるだけで楽しかったのだろうが、大人になると物の考え方が変わり、かつてのようにはいかなくなってしまう。本作はそんな二人の友情の崩壊と修復のドラマとなっている。
彼等以外の3人の高校生も夫々に個性的に造形されていて面白く観れた。お調子者のアタちゃん、中国人とのハーフと思われるミン、黒人のトム。彼等もまた出自は異なるが、気が合う仲間同士。時に衝突したり、繋がり合ったりしながら夫々のアイデンティティを模索していく。
特に印象に残ったのは、コウとトムがキッチンで会話するシーンだった。コウの告白を影から聞いていたユウタの心中を察すると実に切なくさせる。
また、ユウタとコウの別れを描くラストの歩道橋のシーンも良い。ストップモーションの演出に二人の胸中が色々と想像させられ深い余韻に浸ることが出来た。
他の3人もドラマ的には上手く着地させており、シリアスな展開がありながらも、最後は爽やかに締めくくられていて良かったと思う。
一方、大人たちの描き方については紋切り的でもう少し深みが欲しい所である。頭の固い校長や子供たちをデモに勧誘する活動家、放任的な母親等、余りにも形骸的である。また、デモにのめり込むクラスメイト、フミもアジテーションの強いキャラで魅力に欠ける。
尚、度々鳴り響く地震アラートがドラマ上まったく意味がなく、個人的には鑑賞のノイズでしかなかった。中盤でそれを使ったユウタの悪戯が出てくるが、ここもご都合主義に感じられてしまったが残念である。
キャストでは、メイン5人の少年少女のナチュラルな演技が瑞々しくて良かった。聞けば、アタちゃんを除く4人はオーディションで選ばれた新人ということだ。特に、ユウタとコウを演じた俳優たちには光るものが感じられ、今後の活躍が期待される。
校長役の佐野史郎、ユウタの母親役の渡辺真起子といったベテラン陣の配役も良い。物語をきっちりと締めている。尚、佐野史郎繋がりで、”子供”対”大人”という構図から「ぼくらの七日間戦争」を連想させられたりもした。
学生映画みたい。
大学で映画の勉強されたようですが、イマイチその魅力が理解出来ません。エドワード・ヤンを彷彿とさせる、なんて修辞を目にしたが、ウソだろとしか思わなかった。画もありきたり、テンポとカッティングは凡庸としか思わなかった。何より、脚本が酷い。ありがちな陳腐なストーリーで、左派に影響受けたであろう表層的な体制批判が可愛らしい。近未来の寓話として扱うにしても、保護者たちが中途半端。あんな学校運営に文句つけないはずはないのに、いい加減。保護者など絡ませずに学園だけにすればまだしも。「台風クラブ」が懐かしい。外国人問題も在日韓国人・朝鮮人と黒人に特化していて中途半端で恨みがましい。「パッチギ!」はそれでもカタルシスがあった。若松孝二監督のような爽快感がない。映画監督続けるより、活動家の方が向いているのでは。「狙われた学園」を大学の映画サークルが撮ったような感じだ。
10年後観たら、きっと良くある青春ストーリーになると思う。、
最後に卒業式
生きづらさと迸る若さと
主人公のユウタとコウ、
若さゆえに生きづらい世の中でうまく適合できなかったり
自身の出自から不条理な扱いを受けたりと
実にもどかしい心持ちをうまく表現していると思います。
劇中の悪巧みだったりや、友達との時間の過ごし方も
若さがあっていいなあと。
劇伴も効果的というか、
監督が坂本龍一さんの息子さんということもあるかも
ですが、それっぽさを感じたりもしました。
主人公がテクノDJを志している設定も私としては
刺さりましたし、面白かったです。
ラスト近くの楽器店の店長さん(?)のプレイとか、
すごくよかったですね。
空中に文字が表示されるディスプレイが近未来感を
醸し出していたり、世界観も現実離れしすぎておらず、
リアルで親近感が持てました。
何か結論がある話ではないけれど、
この世代でしか味わえない生きづらい感じを
体感でき、ちょっと自分も若返った錯覚に陥りました(笑)
求め過ぎ?
似非金字塔
秋映画はいつにも増して若手監督のオリジナル作品が出ており嬉しい限りです。
ただ今作含め予告から醸し出される負のオーラがどうにも引っかかってあらすじだけならまだしも、いざ予告を見るとなんかきな臭いなーと思いながらの鑑賞でしたが悪い方にその予想が当たってしまいました。
少し先の未来の日本でのお話で日本人以外にも多国籍の生徒が在籍している学校がメインになるのですが、近未来のはずなのになぜか描かれるキャラクター描写なんかは平成中期くらいに逆行しているのがどうしても気になりました。
そんな先の未来でも大して変わってないんだろうなーというのはあるんですが、特に何も進歩していないようで2024年のifですよーと言われても全然納得できる世界観だったのでそこも引っかかってしまいました。
ユウタとコウの距離が離れていくと書いてあるので序盤から中盤にかけてガッツリ仲が悪くなっていくもんだと思ったら途中途中ブチギレて突き放して、かと思いきやまたつるんでの繰り返しだったのは友情ってこんな感じなのかなってなりました。
自分はくっ付いて離れての友人関係は全く無かったのでそこへの共感はできませんでしたが、世の中にはこういう友情もあるのかなという物珍しさの体験にはなりました。
悪ガキたちが善悪の区別もつかないままの反抗を若気の至りで済ませていいものかと何度も何度も思ってしまいました。
最初のクラブへの侵入だってダメだっつってんのに入ろうとするし、なんなら違法に潜入するし、タバコも酒もダメだって言われてるのにルールに対しての反抗だなんだといってはやりまくるし、学校の教室で学校の機材が危ないかもしれないから撤収したのに、それを盗られた盗られたーとのたうち回っているのはみっともなかったですし、それを地震のアラートを使って職員を惑わせて部屋の鍵を奪って機材を回収していく流れはもうほんとク○ガキでしばき回したかったです。
監視システムでよろしくない行動をした生徒はペナルティポイントが加算されていくものが導入された事に対して苛立ちを覚えるのはまぁ分かるんですが、そもそもの原因が校長の愛車を縦向きにした事がきっかけなのに、事が大きくなっても名乗り出ず、ただただ文句をツラツラ垂れているだけというのが本当に見てて気色悪かったです。
あたろう君も格好が注意されたらその場しのぎでも良いから直せば良いのに延々と中の指を立てて挑発するばっかでぶん殴りたくなりました。
野球部の子がタバコを注意して拾っただけでペナルティを課されているのをユウタとコウが笑ってるのは本当に腹が立って、不愉快さのあまりに劇場を出ようかなとも思ってしまったくらいです。
よくよく考えたら自分が高校に通っていた時もスマホを使ったら没収ってのは当然でしたし、授業中にスマホをいじる理由が無いのにいじったから没収された事に対して疑問をぶつけまくってた同級生を見ていたのであれのグレードアップ版が今作の監視システムなんだろうなーと思いました。
校長室に立てこもっての講義も本当にただ立てこもっただけで誰にも得はないですし、寿司をテイクアウトして食べさせようとしてくれた校長(ちょっと強引だったけど)の厚意をガン無視してゴミ箱に寿司を捨てたところも非常に不愉快でした。
実際の寿司を捨てたわけではないにしろ、やはり食事を粗末に扱う作品は本当に大嫌いなので再び劇場を飛び出したくなりました。
あと完全フルフェイスのやつが持ってきたキンパはあんなに美味しそうに食べるのかよ、それワンチャン薬とか盛られてるとか考えないのかよという疑問も生まれてしまいました。
フミがやたらめったら反抗的なのは誰かしらの影響を受けていたり、日本国籍ではない生徒が差別されている事に対しての怒りも込みで行動しているんだろうなとは思うんですが、なんか自分に酔ってるんじゃと勘繰ってしまうくらいよく見る先導者みたいだったのも強烈な違和感を感じさせるところでした。
卒業式パートもなーんか曖昧でトムは何故か卒業式前に引っ越すし(もしかしたら卒業式後の映像だったかもしれないけれど)、あたろう君が服に校長の車が立っているものを刺繍して出席しているから全く反省してないなとなりましたし、その後なんか爽やかに出会いと別れをやってるけど、それまでの行動を青春として流すにはあまりにも身勝手すぎて感動のかの字も無いまま終わっていったので呆けてしまいました。
役者陣は皆々様若手の方々で主演2人は今作がスクリーンデビュー作という事ですが素晴らしい演技をされていてどのシーンも見入ってしまいました。
だからこそよりそのキャラクターに怒りも憐れみも感じてしまったんだなと思いました。
学生を卒業してから時間の経った大人から見ると今の学生ってこう思われてるのかな…と少し悲しくなりますし、「ナミビアの砂漠」と同じく若手監督ってこの世に不満を多く抱えながら生きて、そればかり映画に投影しているのかと心配にもなってしまいます。
こういう作品が評価されるのも理解できますし、こういう警鐘があっても良いと思うんですがどうにも多すぎてこの世代の自分はゲンナリしてしまいます。
そもそも車を縦向きに立てたのってどうやってやったんですか?
鑑賞日 10/28
鑑賞時間 18:40〜20:40
座席 C-12
君はDJ行松を見たか
鮮烈な映像、ずっこける脚本
舌を巻く見事なショットがこれでもかと出てくる作品で、映像作家としてのこの監督の才能は明らかですね。オープニングすぐの、駆ける高校生たちと併走する夜の電車、空っぽのガレージで大きく揺れる照明と壁に映る少年たちの影、などなど…。音楽も編集も秀逸です。
しかし脚本がずっこける。物語上の大きな難点は三つ。
1)フィクションが現実の力に追いついていない。大震災・監視社会・外国人差別は現代日本が抱えている差し迫った課題で、それを都合よく近未来SFに改変した物語を、なんでいま見せられているのか。
2)日本社会と高校生活のリンクの希薄さ。いやリンクさせてるぞと思っているかもしれないが、民主主義をおびやかす現代日本の危機…と始まった映画が、途中から「高校で校長と対決する意識高い生徒たち」の話になって収束してしまう。緊急事態法制どこ行った?
3)登場人物の掘り下げの浅さ。とくに主役の男性2人。別に政治なんか興味ないよという男子と、在日コリアンという出自を背負って政治に注力してゆく男子の、ふたりの友情がこの映画のひとつの軸になっています。ちょこちょこ2人の背景は語られはするけども、結局2人がどんな葛藤をもっているかは、ほわわんとかるーくしか描かれないのです。
このあたりを真剣に突き詰めて考えていないから、友情も政治も、ふわっと曖昧に仄めかされるだけで、リアルな痛みを伴わない。だからだんだん文科省推薦の道徳映画めいてくるんですよね。
申し訳ないけど、これは政治・社会についての監督の考えが浅いからとしか言いようがない。なんかいろいろ社会問題が言及されても、そのどれもが深まっていかない。世の中で「政治」「社会」と名指しされているものを名指しされているとおりの形で取り込むのみで、自分の身体を賭けて対決して自分自身の洞察に到達するという経験を経ていない。要するに薄っぺらい。
そんなわけで、映像のみごとさと浅い話の取り合わせが不思議な作品で、思いきり好意的にいえば「今後の大きな可能性を感じさせる」ってことですね。
この世で一番えらいのは電子計算機〜
坂本龍一の息子さんが監督と言うこともあり、期待させられましたが。映...
坂本龍一の息子さんが監督と言うこともあり、期待させられましたが。映像は昔の映画のようで鮮明でなく、音響も迫力はなく、登場人物の背景描写が少ないのでドラマの盛り上がりに欠けるし、主人公たちの主張も切迫感はなく、近未来と言うには街の映像はブレードランナーのパクリを思わせるし、感情移入できず。でも何故か Filmarks での評価は高く、自分は60代だが、若い人達の感受性とはギャップがあるのかと意外です。最近の映画で感銘を受けたのは「ぼくが生きてる、ふたつの世界 」です。一方、「PERFECT DAYS」もすごく評価が高いが、現実にあるかなと冷静に見てしまった。
いちばん偉いのは電子計算機
自分が苦手そうな雰囲気が予告やポスターから醸し出されていたから、多分好きになれないだろうな〜ハマれないだろうな〜と思いながら鑑賞したら、驚くほど高品質で作り込まれており、大好きと言える作品だった。
ストーリーやメッセージそのものは「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」とどこか似たものを感じるけど、あの作品よりも現実的で近い将来起きる、いやむしろ今すぐにでも起きてもおかしくない日本社会を描いており、そのリアルさがまるで監視カメラ越しの映像かのようで、どことない緊張感と物語の説得力があった。
かなり静かで間の多い作りにもかかわらず、神妙な音楽や独特なカメラワークがこの映画だけの世界を造り上げ、ストーリーは現実主義なのにどこか遠くの国の様子を見ているような、そんな気分に襲われた。空音央監督作の故・坂本龍一のドキュメンタリー映画に携わったスタッフが再集結しており、おかげで日本が舞台なのに日本映画には思えない不思議な映像体験を味わうことが出来る。編集、撮影、プロデュース、音楽など、数多くの外国人スタッフが在籍していることもこの体験の一因だろう。
今にも終末を迎えそうな世界。秩序はとっくに崩壊しており、社会性も失っている中で、主人公たちは今だけの青春を謳歌する。明るく、楽しく、一生モノの大切な時間になるはずなのに。乱れた世の中のせいか、彼らが学校内馬鹿やってる姿は何故か悲しく、虚しい。今の日本もそう遠くない未来でこんな現実が待っているかもしれない。そんなことを考えると、途端に登場人物に感情移入してしまい、希望の光の見えない世界で必死にもがくのは、校内で馬鹿やること以上に馬鹿なんじゃないかとも思えてきた。この瞬間は今だけなんだから。青春映画にありがちなそのメッセージは、この映画では途方もなく苦しく、説得力で満ちていた。
さほど起伏がある物語展開では無いため、飽きることは無いものの見応えに欠けるのは事実。今の日本に対して真っ向からぶつかり、様々な事柄を皮肉る超社会派ドラマであるため、青春映画という括りでありながらも若干説教臭く、堅苦しい印象が残る。
キャラクターのクセと人間味で何とかエンタメ作品になっているけど、もう少しポップにしてくれないと過激な啓発本のように捉えられちゃうかなと思った。左翼と左翼・右翼のどちらでもない人のぶつかり合い、って感じでかなり思想が強い作りになっているし笑 それでも、青春映画でこれをやって見せるのは挑戦的で面白いし、全体的に見ればかなり好きだった。
ミニシアター映画にも関わらず、ベネチア映画祭に出品された作品というのもあってか、日本の大作映画と比較しても頭ひとつ抜けて完成度が高く、映像による感動がすごい。社会派ドラマでありながらも、重点は青春であり、友達の間にある複雑な思いや立場の違いなんかが鮮明に描かれていて、経験したことがないのにとても共感出来た。いい意味で邦画ぽくない。
最近このテイスト流行ってるけど、今の日本に向ける不信感もあって個人的には大好物なので、今後も意欲的に作って欲しい。空監督の次回作にも大いに期待。感覚に訴えかけてくるこの楽しさ、たまらん。
<映画「HAPPEYEND」> 上映中 監督:空 音央(そらねお)...
<映画「HAPPEYEND」> 上映中
監督:空 音央(そらねお) 初の長編映画
どこから話そうか。思うところがいっぱいの、そして忘れかけていたあの思いと、口の中に広がる苦い苦い悔しさが甦る、そんな映画でした。
まず、テクニカルな面から言えば、映像の切り取り方、映し方はもう、どこを取っても素晴らしい。そして、長編は初めてというのに、映画の全てに独特の空気感、世界観で統一されていて、近未来だとわざわざ言われなくても、奇妙な違和感が「絵」だけで感じる事が出来る。どういうテクニックなのだろう?
ストーリーは、学校や社会といった体制と、それに反発し自由を求める人とのせめぎ合い、、、とは思わなかった。 極めて純粋に、これまで取り上げられて来なかった、高校生として極めて普通の、しかし一色ではない多様な価値観のぶつかり合い。そして、少しも説教臭くない。押し付けがましくもない。素晴らしい脚本と構成でした。
映画としての完成度の高さ、役者、演技、脚本、演出、構成、カメラワーク、どこを取ってもここまで極めて高いところでバランスされた映画は、数少ない。しかし、完成度の高い映画は、例えば山田洋次の様に、どこかで見たような小さくまとめられた映画になりがちだか、これは違う。 とはいえ、激しい暴力やぶつかり合いのある映画では無く、権力側の象徴であるはずの佐野史郎の校長ですら、普通に良い人の範疇に入るほど、いい人しか出てこない。。。 そう、だからこそ、それぞれの人の、それぞれ違う価値観や大切なもの、守るべきモノの違い、考え方や感じ方の違いが浮き彫りになってくるのだと思う。
映画の中ではないが、どこかの誰かが、「友達と仲間は違う」と言っていた。友達は利害も目的も持たない、だからこそいい。しかし、共通の目的を持っていないので、協力しあえない。仲間は目的の下に集まるからこそ、共通の価値観を分かち合える。しかし、赦し合う事が難しい。 この映画では、そういう「ただの友達」から「目的を持った仲間」が必要になる場面があり、ただ友達として馴れ合っている事に疑問も出てくる。。。 だけれども、やっぱり「利害のない友達」のいい面も、よく描かれているなと思う。
この映画のコウは、まさに高校時代の私に似ている。何か社会のおかしさに気づき、抗い始めたまさにそんな時代が高校時代だった。私はその昔、関西空港の反対運動を有志で取材して、文化祭で発表した。聞きつけた新聞社が3社取材に来て、先生方は学校や我々有志が反対運動を支持しているとかそういう事ではなく、純粋に公平な立場で、問題点を考察しているだけだと、説明に追われていた。
ユウタとコウは、幼い頃からの友達。供に音楽の世界にのめり込んでいる。
しかし高校生になり視野が広がると、世界を変えたい、そのためにデモにも参加しているコウ。 一方、ユウタは音楽など楽しい事さえしていれば十分だと言う。 私には、どちらも正しい感じ方だし、どちらもそれなりに意味ある価値観だと思える。
そうしてコウは次第にユウタと距離を置くようになるのだが、最後の最後、結局学校の校則(セキュリティシステム)を変えたのは、ユウタであり、コウは結局何も変えられず、何もできないまま社会システムの中に組み込まれていく。。。
最後のこの部分、私の中でも何か経験があるような、そんな気分になった。 あの時の有志は今どうしているのだろう? 高校卒業以来40年以上、やっぱりシステムの中で生きて来て、バブル崩壊後の長すぎる30年は、我々にも責任があるはずだ。 それでも自分なりに、自分でできる範囲で、あまりにも微力で少しだが、社会をよくする方向へ向けられたのではないかとも思っている。そんな事を想起させられる映画でした。
今年一番を付けてもいい、素晴らしい映画でした。
何より、完成度がとても高い。
もうあと少ししか公開期間がありませんが、機会があれば是非見て欲しい映画です。
自由を受け入れるか
少し未来の日本の高校。生徒たちがつるむ様子。 校内での悪戯が度を越...
お前がいう大事なことってなに?
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