「なんとも言えない残念感…」天文館探偵物語 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
なんとも言えない残念感…
■ 作品情報
南九州最大の繁華街である鹿児島・天文館を舞台に、街の存続をかけた人情と陰謀が交錯する物語。監督・脚本は諸江亮。主要キャストは、寺西拓人、大原優乃、肥後遼太郎、室龍太、高田翔、原嘉孝、新名真郎、西田聖志郎、西岡德馬など。鹿児島県を舞台にオールロケを敢行。
■ ストーリー
昼はバーテンダーとして働き、夜は密かに探偵として街の人々の困りごとを解決している宇佐美蓮と、相棒である山下健斗。二人は、夫から逃げてきてスリ事件を起こしたシングルマザーの橋口凪を助ける。これをきっかけに、天文館エリアの再開発を巡る陰謀と、それに伴う街の存続危機問題に巻き込まれていく。街の人々の暮らしと未来を守るため、蓮たちはこの問題に立ち向かう。
■ 感想
「天文館探偵物語」という魅力的なタイトルに惹かれ、ミステリー作品を期待して鑑賞しました。天文館を舞台に探偵が殺人事件を解決していくのだろうと想像していたのですが、予想とは全く異なり、鹿児島に実在する繁華街「天文館」の再開発を巡る人情物語でした。地方再生と絡めて温かい人間ドラマを描くという方向性自体は、決して悪くないと思います。これを機に天文館が広く知られ、訪れる人が増えるのであれば、それはすばらしいことです。
しかし!残念ながら映画からは天文館の魅力がミリ単位でしか伝わってきません。人情を前面に出しているはずなのに、描かれるのは無料の託児所を利用しながら水商売で働く女性のみ。しかも、その日常や商店街の活気は描かれず、名物なども紹介されず、実際に天文館へ足を運んでみたいという気持ちにはなれません。そのため、再開発を阻止しようと奮闘する主人公にも共感しづらいと感じます。
物語の根幹となる再開発についても、なぜ推進するのか、なぜ反対するのかという理由が不明瞭で、「再開発=悪」という短絡的な構図に終始していたのは非常に残念です。推進派の大臣があまりにも簡単に意見を翻す展開に至っては、まるで茶番のようで拍子抜けします。ひょっとしてこの裏には何か大きな悪巧みが隠されているのかと期待したのですが、そのまま何も起こらず終幕を迎え、何のひねりも深みもないラストに思わず力が抜けてしまいます。
劇場には女性を中心に多くのお客さんが入っており、どうやら主演の方目当てのようですが、自分は全く知らない方です。そういうフラットな視点で本作を鑑賞すると、かなり物足りない作品という印象しか残りません。もう少しだけでも捻りのあるストーリー展開があればと強く感じます。言いたくないですが、これでは出演者の方々にも、そして舞台となった天文館にも失礼ではないかと感じる作品で、非常に残念です。
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