劇場公開日 2024年8月30日

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「じわじわと恐怖が込み上げ侵食していく」ACIDE アシッド 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0じわじわと恐怖が込み上げ侵食していく

2024年8月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

フランスでこのような異常気象パニック&スリラー映画が製作されるとは驚きだ(同様のものをハリウッドで製作したら全く別物が生まれたはず)。つまるところ、本作は空から降り注ぐ強酸性雨があらゆるものを溶かしゆく様子を最初は静かに、やがて鬼気迫るタッチで描きつつ、さらには家庭内の人間模様にも焦点を当てる。そもそも物語の始まりにも、父親(彼はこの物語の主人公ともいえる)の性格を如実に炙り出す導入部が設けられており、こういった前提から語り口を徐々に広げていく手法もまたフランス映画らしところ。描かれているのは理想でも道徳的規範でもなく、あくまで個人としての人間なのだ。絶望状況を前に彼はどこへ向かうのか。その行動と心理が気象状況と並んで、いやそれ以上に、不穏な空気を作品に注ぎ込んでやまない。観賞後は小雨に触れることすら怖くなる。そしていざという時、自分がどんな人間性を発露させるのかについても考えさせられる。

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牛津厚信