ぼくとパパ、約束の週末のレビュー・感想・評価
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(オンライン試写会は全てネタバレ扱い)もう少し福祉の方向にベクトルがあっても良かったかも。
今年396本目(合計1,487本目/今月(2024年11月度)2本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。
※ オンライン試写会にご招待いただいたfilmarksさま、ありがとうございました。
自閉症の(この点後述)主人公が、お気に入りのサッカークラブを見つけるために父親といろいろなサッカーの試合を訪れて成長していく物語です。
この点、ドイツといえばサッカーリーグは有名だし、いわゆる(日本基準でいう)三障害の中でも最も取り上げられる機会が多いであろう身体障害以外の障害(知的・精神)を扱ったことそれ自体は理解はできるし好意的なほうです(ただ、この映画は当然、ドイツでは先行して上映されていますが、在ドイツの日本人の方のブログ等を拝見すると、サッカーリーグの描写が古い(日本でいうJ4相当のリーグが(同)J3扱いされていたり、古いデータを参照している?)模様です(確かにおかしい点があることを確認)。ただ、この映画をガチのサッカー映画と見るのは無理があるので、その辺はまぁ良いのでは…)。
映画の述べたいところも理解できるし、あたかもドイツの国内巡り(すべての試合をみたいといっているので)ができること(コロナ事情がどうであれ、海外に行くのはまだリスクがありますね)、程度の差があっても三障害の中で身体障害「以外」を扱った映画ということにおいては極めて良かったなというところです。また、ドイツ映画といえばナチスドイツがあげられますが、「あのマークはナチスの印に似ているから(その施設があるクラブの試合は)見たくない」というようなセリフも登場します(本映画は大きな筋において実話です)。この点まで含めてがそうかは不明ですが、こうしたナチスドイツを扱う映画ではない映画において、ナチスドイツの扱いにつき理解があるなと思ったところです。
ただ、この映画は上記のように在ドイツの日本人の方からは批判的にみられているようです。それは結局日本でもオンライン試写会で見た私もそう思ったところになりますが、「どのような障害を想定しているのかがわかりにくい」という点に多々つきます。
この点みていきます。
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(減点0.2/映画内で述べる「自閉症」がどの程度の像を想定するか理解が難しい)
一般に自閉症といった場合、必ずしも知的障がいがあることを意味しません。一方で実際にかなりの知的障がいが認められるケースから、健常者とほぼ変わらないというレベルまでいろいろいます。そもそも自閉症という症状は知的障がいと言い換え可能な語ではありません。一方でその症状はかなり異なります。
そのため、一次的には(あるいは、一般にわかるようにするという意味での、必ずしも厳密性を求めない文脈では)「自閉スペクトラム症」という語が用いられています。映画内では「自閉症で、…(途中略)…アスペルガー症候群だ」という字幕が登場して???になりますが、現在、2023~2024年時点では、「アスペルガー症候群」も「一般的な会話が満足にできる程度の知能がある類型」というように位置づけられています(これらのことは、実は公式サイトにかなり詳しく書かれています)。
※ この映画は、表面的にはサッカーを扱っていても、実質的に知的障がい(自閉症)を扱っている事情があるので、子ども家庭庁ほかの推薦番組扱いです。
実はこのような事情から、字幕よりも公式サイトのページを「ちゃんと」読まないと、これらいくつか出る語がどのような疾患(状態)なのかというのを理解することが難しく、かつ、映画内では「少し前の学説にそった解釈」になっているため(この点、公式サイトではきちんと解説されている)、観る方はかなり苦労するのではないのかな…といったところです。
ただ、いずれにしても、特に三障害の中で、当事者(子ども)の遊びというと、主に身体障がい児のそれがメインに論じられることが多いところ、この映画は別の角度からあまり陽のあたらない部分を描いている点については、(公式サイトと同時に読まないと、字幕のみでは不正確な理解になるところがあっても)それはそれで理解しうるし、そのような映画は当然あってしかるべきなので(かつ、その子のサッカーの趣味に事実上内容を限定したため、この手の映画でありがちな「親なき後の面倒論」といった話に飛ばないのも良いところ)、この点については「サッカー映画+問題提起型の映画」という観点ではおすすめ以上です(ドイツのサッカーリーグ事情について若干ヘンテコな部分があるようですが、よほど好きな方でないとわからないのでは)。
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