「World」ぼくとパパ、約束の週末 ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
World
自閉症を持っている息子ジェイソンと父親ミルコが推しのサッカーチームを見つけるために各地を奔走するという触れ込みに惹かれての鑑賞。
中々にズッシリとくる作品でした。
自分が小学校や中学校の時までは自閉症を持っている友人と一緒に生活していましたが、高校生になってからはパッタリ触れることも出会う事も無くなったなと思っていたことを思い出しましたし、自閉症を持つ本人の気苦労、周りから理解されない苦しみと理解ができない周り、さらには親目線で映される自閉症の息子というのも本当に興味深くて、かつリアルだからこそ観ている途中の体は重かったです。
自分も接客がメインの仕事をやっているので自閉症らしき方と接客する事もありますし、その行動が理解できないという事も全然あるので、これを仕事として長くて5分ほどの触れ合うだけの自分と年中接する親となるとその苦労は計り知れないものがあるなと思いました。
ジェイソンの行動はやはり自分勝手かつ相手のことを考えていないようにしか見えず、自分のルーティンが崩されると激昂するし、同級生だろうと先生だろうと知らない人だろうとエゲツないくらい暴言を吐きまくるので初見の人からすると「なんやこのクソガキは」と見えるのは致し方ないですし、慣れた同級生からしたらからかいがいのある遊び道具に思われてしまいますし、先生からすると扱いにくくてしょうがない存在だと思うのでこの時点で誰も悪意がないのに雰囲気がよろしくないというのもリアルだなと思いました。
ふとしたきっかけでサッカーチーム探しに動き出したジェイソンとミルコですが、旅の始まりから大波乱起きまくりで本当に大変そうでした。
解決の糸口が全く見つからないジェイソンの行動に加えて、ジェイソンの症状を知らない他人から心無い言葉もあって挟まれたミルコの表情は辛そうでした。
いざサッカースタジアムに着いてからも大変そうで家族以外から触れられるのが苦手なジェイソンがサポーターが熱狂的な現場に行ったらそりゃ触れられまくり、歓声も大きいからびくりまくりでそれを守るミルコは試合を楽しめたもんじゃないですし、ジェイソンは細かい事が気になるのも拍車をかけて危険の連続ですがジェイソンはなんかスッキリしてるので気苦労の連発だと思います。
少しずつミルコが奥さんの苦労が分かってきてからは真摯にジェイソンと向き合って、2人だけの旅を楽しんでいる姿は親子の絆が感じられて素敵でした。
ミルコがジェイソンにぶっちゃけて怒ってしまうところも分かるけど、分かるけど言っちゃダメだよーとなったのと同時に、ミルコ自身のミスがあるとはいえジェイソンが意固地になってるからそりゃ頭に来るものもあるよ…とどちらかというとミルコ側に感情移入してしまいました。
終盤の展開も予想外の連発でミルコももう吹っ切れてジェイソンと共に駆け回っている姿は清々しかったですし、ただでは終わらないジェイソンもジェイソンで一貫してるわと感心してしまいました。
にしてもジェイソンの条件に見合うサッカーチームってこの世のどこかにいるんだろうか…。
レビューを書いてる途中で思い出したのですが、自分も昔は掃除機の音が極度に苦手で、とにかく嫌がっていたそうで母親が自閉症なんじゃ?と思っていた時期があったそうです。
徐々に慣れてきて掃除機にも反応しなくなったみたいなんですが、そういう兆候があるとやっぱり苦労したみたいでどうやって育てていこうと悩んだみたいです。
今では真っ暗な映画館で爆音上映を楽しむ子供に育ったので安心してくださいな。
今もまだ続いている推しサッカーチーム探し、どこかで運命のチームに出会えるといいなと願うことしかできませんが、父親とそうやって旅ができるっていうのも少し羨ましいところがあります。
この旅が成長にガンガン繋がっていってくれればなと遠い日本から願っています。
鑑賞日 11/28
鑑賞時間 18:05〜20:05
座席 D-7