「B級映画愛を描くB級映画」MaXXXine マキシーン kozukaさんの映画レビュー(感想・評価)
B級映画愛を描くB級映画
1作目の「X エックス」、2作目のXに登場した老人殺人鬼パールの前日譚を描いた「Pearlパール」そして今作「MaXXXineマキシーン」はXでただ一人生き残ったポルノ女優マキシーンの後日譚を描いたタイ・ウェスト監督の3部作完結作だ。
パール、マキシーンに共通するのはスター願望。今作でマキシーン(ミア・ゴス)はその願望を叶えるべく、ロサンゼルスに居を構えハリウッドに挑戦する。
前2作とも主演のミア・ゴスが制御不能の大暴れでそれが作品の魅力だったのだが、今作でのミア・ゴスはなんだか不完全燃焼なのだ。そして、今作は前2作が田舎の閉鎖空間が舞台の典型的ホラー映画だったのに対し、ホラーではなくサスペンススリラーなのだ。
完結作であるのにそうした設定のずれがなんとなく今一つの理由なのかもしれない。
1985年のハリウッド、ポルノ映画で人気を得たマキシーンは新作ホラー映画のオーディションに参加する。オーディションには受かるが、周りの女優や友人が次々に殺害される。ロサンゼルスでは連続殺人鬼ナイト・ストーカーの事件が連日報道されていた。一方マキシーンは私立探偵のジョン・ラバット(ケヴィン・ベーコン)と雇い主の革手袋の男に過去の犯罪(Xエックスでのパール殺し)の事で追われる。マキシーンは無事映画出演を果たせるのか・・。
マキシーンが大暴れできない理由に彼女の夢である映画出演が目の前にあり無茶ができないことが挙げられる。また、舞台をLA、ハリウッドにしたことで現実的になり、過去2作のように隔離された想像の舞台が作れなくなっている。
一方で80年代のギラギラしたレトロなLAの世界観とその時代のポップミュージックやフィルムルックなざらついた映像はB級映画愛に溢れていて見事。舞台になるハリウッドのオープンセットにはヒッチコック監督の「サイコ」へのオマージュも仕込まれている。
ホラー映画を撮影する映画というメタ構造でもわかるようにこの映画はタイ・ウエスト監督のB級映画讃歌の側面が強く出ているのだ。3部作のメッセージ性のまとめに入ったため、なりふり構わない切れたミア・ゴスの大活躍に期待したファンには期待外れだったのだと思う。
