劇場公開日 2025年6月6日

「ホラーではなく、サスペンスとして描かれるシリーズ完結編」MaXXXine マキシーン 緋里阿 純さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ホラーではなく、サスペンスとして描かれるシリーズ完結編

2025年6月7日
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鑑賞方法:映画館

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【イントロダクション】
A24製作、ミア・ゴス主演、タイ・ウェスト監督・脚本による、『X(エックス)』(2022)、『Pearl/パール』(2023)に続く3部作の完結編(ミア・ゴスは『Pearl』にて脚本にも参加)。1985年のハリウッドを舞台に、女優志望のマキシーンが巷を騒がす連続殺人事件に巻き込まれていく姿を描く。

【ストーリー】
テキサスでの事件(『X(エックス)』)から6年後の1985年、ハリウッド。女優志望のマキシーン(ミア・ゴス)は、ポルノ女優として一定の成功を収めていたが、更なる飛躍を求めてホラー映画『ピューリタンⅡ』のオーディションを受ける。職人肌の映画監督エリザベス(エリザベス・デビッキ)に見出され、マキシーンは見事合格する。そんな中、巷では“ナイトストーカー”と呼ばれる連続殺人犯が犯行を重ねており、連日ニュースを騒がせていた。

マキシーンは、ポルノ女優やストリップショーの同僚から度々ヒルズで開かれるパーティーに誘われていたが、彼女は仕事を優先して全て断っていた。

ある日、マキシーンはビデオ店を営むレオン(モーゼス・サムニー)と共に、合格した『ピューリタンⅡ』の前作を鑑賞している最中に眠ってしまっていた。玄関からノック音がして身を覚ますと、封筒に入れられた1本のビデオテープが入っていた。再生すると、そこには6年前の惨劇の際、友人達と共に製作していたポルノ映画が収められていた。混乱するマキシーンは、レオンにビデオの出所を調べるように依頼する。その頃、同僚の女性達が体に悪魔崇拝の焼印を押された遺体となって発見されていた。

マキシーンは、謎の人物に雇われた私立探偵のジョン・ラバット(ケヴィン・ベーコン)と接触し、彼から「雇い主に会わないと、君の過去の殺人が明るみに出る」と告げられる。ロサンゼルス市警のウィリアムズ(ミシェル・モナハン)とトーレス(ボビー・カナヴェイル)は、事件についてマキシーンを追うが、彼女は何も答えない。

窮地を脱する為、マキシーンはエージェントのテディ・ナイト(ジャンカルロ・エスポジート)に過去を打ち明け、協力を仰ぐ。マキシーンはラバットの忠告を無視して、テディに促されたように自宅で台本読みをする。一方、レオンは閉店後の店内で黒い革手袋と黒の革コートを纏った謎の人物に殺害されてしまう。

【感想】
私は、公開当時『X(エックス)』の面白さを大変気に入り、『Pearl/パール』(2023)の世間的高評価には今一つ乗れず、良くも悪くも、完結編となる本作でシリーズ全体の評価が決まると思い、期待半分、不安半分で本作の公開を待ち続けていた。本作の本国公開は去年の7月であるのに、日本公開が約1年も遅れてしまったのは残念である。

前2作がスプラッターホラーであったのに対して、本作はサスペンス・スリラーといった作風。80年代ハリウッド作品らしい脚本の整合性の緩さのあるストーリー展開、VHS全盛期を切り取った舞台チョイスは好ましい。エンドクレジット後の「巻き戻して返却ください」というレンタルビデオ店製品を再現した演出も粋である。

とはいえ、流石に前2作程のインパクトには程遠く、真犯人も容易に推理出来る点からも、評価が分かれる点は頷ける。

では、本作で主演のミア・ゴスやタイ・ウェスト監督が表現したかった事はなんだったのであろうか。それは恐らく、ラストで大成功したマキシーンがインタビューで語ったように、「(大切なのは)諦めないこと。大変だけど」という事ではないだろうか。何故なら、ミア・ゴスもタイ・ウェストも、本シリーズによって成功を収めたからだ。彼らが本シリーズにおいて成功を収めたからこそ、ラストのこのメッセージには説得力を感じた。

『TENET テネット』(2020)でも印象的な演技を披露し、抜群の存在感を放っていたエリザベス・デビッキが、本作でも職人肌で気難しい監督を演じていたのが印象的だった。191cmという長身のスタイルの良さ、長い足が強調されるパンツ姿と、やはり画面に映ると画力が素晴らしい。

【総評】
前2作とはジャンルを変え、また懐かしの80年代ハリウッド作品を再現したかのようなストーリー展開は、明確に賛否が分かれるであろうが個人的にはアリ。結果的に、3作品中真ん中に位置する作品となった。
完結編として、一応はハッピーエンドといえる結末を迎えた事も、後味として良い。

先日、Xにて本作の日本版ポスターを担当した大島依堤亜さんによるファンメイドのVHSパッケージを目にしたが、本作との親和性を考慮すると、円盤化される際には是非限定版としてVHS型のパッケージ、もしくはVHS版の付録付きで発売されてほしいものだ。

緋里阿 純