「歌もダンスもまあGoodなミュージカルだが、権力者やその追随者をさりげなく糾弾もしており、感心もさせられた。」ウィキッド ふたりの魔女 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
歌もダンスもまあGoodなミュージカルだが、権力者やその追随者をさりげなく糾弾もしており、感心もさせられた。
ジョン・M・チュウ 監督による2024年製作(161分/G)アメリカ映画。原題または英題:Wicked、配給:東宝東和、劇場公開日:2025年3月7日。
最初日本語版で見て冴えないなあとガッカリとさせられたが、英語版で見て印象がガラリと変わった。エルファバ役シンシア・エリボの歌声が素晴らしくて圧倒的で、それだけで感動もの。それがあることで、ブロードウェイ風のダンス等も映える。やはりミュージカル映画で、主演者の歌唱力はとても重要とあらためて感じた。
グレゴリー・マグワイアによる原作『ウィキッド』(1995)は未読であるが、ストーリーも悪い魔女とされるエルファバを主人公に据え、欺瞞に満ちた権力者、表面的にしかものを見ない社会や大衆に対しての皮肉に満ちた、実に面白い物語と感じた。
出しの映像、とても明るく楽しい感じだが、悪い魔女が死んだと狂喜乱舞する民衆の姿が印象的で、映画制作者たちの大衆の盲目性や残酷性に対する冷たい眼差し、というか怒りの様なものを感じた。
主人公が親友と思うグリンダ(アリアナ・グランテ)の描き方もなかなかで、皮肉に満ちていた。あまり批判的に見えないように修飾されているが、美しく化粧をし仕草まで計算してクラスメートの人気取りに邁進し、権力者にしっかりと媚び体制の手先となる彼女。さらに、民衆の前に立ち、魔女狩り物語を正当化してしまう存在。なんだか、今まで現実社会で一杯見てきたような上昇志向の強いキャラクター像で、米国ミュージカル映画でそれを見せられたことに新鮮な驚きを感じた。
この世界の王であるオズの魔法使い(ジェフ・ゴールドブラム)の描かれ方も辛辣。恐ろし形相の巨大カラクリ人形で威厳を保ってるが、能力は全く無く(魔法使いでありながら実は魔法を全く使えない)、共通の敵を作ることで権力の維持を図っている。トランプ大統領等、政治権力者への痛烈な皮肉と感じた。
監督ジョン・M・チュウ、製作マーク・プラット デビッド・ストーン、製作総指揮スティーブン・シュワルツ デビッド・ニックセイ ジャレッド・ルボフ ウィニー・ホルツマン デイナ・フォックス、原作グレゴリー・マグワイア、原作ミュージカル(作詞・作曲)スティーブン・シュワルツ、原作ミュージカル(脚本)ウィニー・ホルツマン、脚本ウィニー・ホルツマン、 デイナ・フォックス、撮影アリス・ブルックス、美術ネイサン・クロウリー、衣装
ポール・タズウェル、編集マイロン・カースタイン、音楽ジョン・パウエル、 スティーブン・シュワルツ、音楽監修マギー・ロッドフォード、振付クリストファー・スコット、視覚効果監修パブロ・ヘルマン。
キャスティング
バーナード・テルシー 、ティファニー・リトル・キャンフィールド、エルファバシンシア・エリボ、グリンダアリアナ・グランデ、フィエロジョナサン・ベイリー、ボックイーサン・スレイター、ファニーボーウェン・ヤン、ネッサローズマリッサ・ボーディ、ディラモンド教授(声)ピーター・ディンクレイジ、マダム・モリブルミシェル・ヨー、オズの魔法使いジェフ・ゴールドブラム、スロップ総督アンディ・ナイマン、スロップ夫人コートニー・メイ=ブリッグス、シェンシェンブロンウィン・ジェームズ、アヴァリックアーロン・テオ
シズ大学理事長ショーン・プレンダーガスト、ミス・コドルキアラ・セトル、シャロン・D・クラーク、ジェナ・ボイド、コリン・マイケル・カーマイケル。
