「観客「を」選ぶ作品」逃走 スー(ジェーンじゃない方)さんの映画レビュー(感想・評価)
観客「を」選ぶ作品
少し前に『桐島です』を興味深く鑑賞したが、本作は同じテーマを扱いながらも切り口が異なり、最初はやや戸惑った。
特にモノローグや空想の会話が多く、さすが癖の強い足立正生監督という印象。桐島が本当にどう考えていたのかはさておき、監督自身の思いを桐島のセリフに託して語らせているように思えた。
そのあたりをどう受け止めるか――つまり監督の妄想にどこまで付き合えるかが、本作の好みの分かれ目だろう。
私自身は、のめり込むほどではなかったが、全体としては十分に面白く感じられた。
ただ、ラストで本名を告白したり、警察に毒づく場面には思わず胸が熱くなった。
それにしても、山下洋輔・坂田明・大友良英による音楽は掛け値なしに素晴らしい。フリージャズに馴染みのない人にはどう響くのかとも思うが、私には心地よく響いた。
作品全体が観る者を挑発し、試しているかのようで、賛否を呼ぶに違いない。(と思ったら、評価の振り幅が物凄いですね。)
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