「どこで間違ったのか、どうすればよかったのか」逃走 La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
どこで間違ったのか、どうすればよかったのか
1974年の三菱重工本社ビル爆破をはじめとする連続企業爆破事件の犯行グループである東アジア反日武装戦線のメンバーとして指名手配を受けながら50年年近く逃走を続け、昨年病院で亡くなる直前に本名を名乗り出た桐島聡氏を巡る物語です。彼は逃走中何を考え、そして最後になぜ実名を名乗り出たのでしょうか。本人が既に亡くなっている以上、多くの事は想像するしかないので、結局はあの時代の「闘争」とその後の「逃走」に制作者が何を仮託するのかが問われる事になります。
本作は、それを映画化するには最も相応しいと思える、85歳現役の足立正生さんの監督です。20年以上を日本赤軍としてパレスチナの地に身を置いていた監督は彼の生涯をどう見るのでしょう。作品は桐島氏の50年を、贖罪の思いを抱きつつ闘い続けた年月として見つめ、最後に名乗り出たのは昔の仲間や世界へのメッセージと捉えている様に映りました。しかし、氏が抱いたであろう迷いや悩みも重層的に描き、その解釈を批判的に観る事も可能な扉も多く設けられています。僕は、スクリーンの前で感じ入ったり、疑問を抱いたり。でも、本作に最も相応しい監督が迅速に制作し世に問うて下さった事にまずは感謝です。
そして、この日は監督舞台挨拶がありました。誰にも止められない足立監督のお話はやっぱり面白いし、その言葉を手掛かりにもう一度作品を考え直したいと思えましたた。「理念は正しかったが行動は間違っていたという考えは誤り。誤った行動は理念の誤りの中から生じる」の言葉は非常に含蓄があり、帰り道に反芻する事になりました。
7月には、やはり桐島氏をテーマにした高橋番明監督の『桐島です』が公開予定です。こちらも必ず観ます。